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 ◇「不安な童話」 恩田陸 (新潮文庫)

+-+- あらすじ -+-+

 私は知っている、このハサミで刺し殺されるのだ――。

 強烈なデジャ・ヴに襲われ、女流画家・高槻倫子の遺作展で意識を失った古橋万由子。彼女はその息子から「25年前に殺された母の生まれ変わり」と告げられる。

 時に、溢れるように広がる他人の記憶。

 そして発見される倫子の遺書、そこに隠されたメッセージとは……。

 犯人は誰なのか、その謎が明らかになる時、禁断の事実が浮かび上がる。

+-+- 感想 -+-+

 タイトルを見る限り、ホラーかな?と思わなくもないけど、ホラー色のあるミステリーと言った方がいいかもしれない。タイトルの通り、『不安感』が小説全体に漂っている。それが受け付けられない人はこの作品はちょっと…と思ってしまうかもしれない。

 

 ただ、一人称の語り手で、読み易さは抜群だと思う。すいすいとページがめくれるし、謎が謎を呼び、まったく先を気取らせないストーリーテリングは絶妙だ。

 

 謎の絵画。

 万由子が持つ力。

 繰り返されるデジャ・ヴ。

 

 ファンタジーの要素もあり、絵画ミステリの要素もあり、ストーリー全体は不安感をかもし出す展開でホラーの要素も十分ある。

 なかなか欲張りな作品。

 

 最後にはアッと驚く人まで登場し、エピローグも驚かされた。

 下手な本格ミステリよりミステリとして完成度の高い作品だと思う。

 最後になって、伏線の張り方の巧妙さに感心した良作だった。

 

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