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 ◇「GO」 金城一紀 (講談社文庫)

+-+- あらすじ -+-+

 僕は何者?

 日本で生まれ、日本で育ったけれど、僕は<在日>と呼ばれる。

 元ボクサーのオヤジに鍛えられ、これまで喧嘩二十三戦無敗。

 ある日、僕は恋に落ちた。

 彼女はムチャクチャ可愛らしい<日本人>だった――。

 軽快なテンポと爽やかな筆致で差別や国境を一蹴する、感動の青春恋愛小説。

 直木賞受賞作。

+-+- 感想 -+-+

 ちょっと斜に構えた主人公は今時らしいと思う。

 様々な理念とか思想とか、民族とか国とかそういうものに囚われない新しい時代を感じさせる作品だった。

 しかし、今の世の中はまだ旧体制とした意識と社会システムになっている。

 それとの葛藤をうまく描いていると思う。

 僕はその旧体制に括られる社会システムの全てが悪いとは言えない。

 いまだ必要なものも存在する。日本人として内省を促されるところと、僕が実際、経験した事で、ちょっと違うよというところが存在して、その部分はある意味僕としては混乱してしまった部分もある。

 

 ただし、これを一つのテーマとして捕らえてはいるけど、これがメインではなく、あくまで「青春」と「恋愛」がメインの作品なので、それを取り違うと非常に辛いかもしれない。

 対立軸としての旧体制と登場人物たちの意識が存在し、そしてそれをたたき台として、恋愛や青春を彼らは紡いでいるのだ。

 村山由佳のような軽快で恋愛のエッセンスを散りばめた小説ではないけれど、民族のアイデンティティを絡めたシリアスだけどちょっと哀しくちょっと辛いでも、明日はきっと晴れだよねというような恋愛小説だった。

 

 <在日>に対しては<日本人>も<韓国・朝鮮人>も冷たい。彼らの母国はいったいどこなんだ?そんな叫びも垣間見えながら、それをしている意識はもう旧いんだよと作者がいい、年代の近い僕も同じ気分だった。

 僕たち日本人も今、同じ立場にいるんじゃないか?と思ったからだ。

 

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