<未来予報>を読んで、僕はとても切なくなって、その結末にどうしようもない悲しさを覚えたけれど、ただそれだけじゃなくて、登場人物たちから多くのものを学ばせてもらったように思える。この登場人物たちのように強く生きてみたいな。そう思うのだ。<しあわせは子猫のカタチ>でもそうだったけれど、こういう切なさ系の短編を、乙一という作家はとてもうまく書く。
また何となくそのユーモラスな作風で僕が気に入ったのは『手を握る泥棒の物語』だ。ちょっと間抜な泥棒がひょんな事から泥棒に入った相手の手を握ってしまい、身動きの出来ない状態になる。その時の相手との会話が面白く、その上、最後のオチの部分も良かった。
他の二編は暗いでも、どちらもなぜか温かさを感じる作品だった。
どれもが温かいと思えるのはたぶん乙一という作家の特徴だろうと思う。
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