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 ◇「たそがれ清兵衛」 藤沢周平 (新潮文庫)

+-+- あらすじ -+-+

 下城の太鼓が鳴ると、いそいそと家路を急ぐ、人呼んで「たそがれ清兵衛」。

 領内を二分する抗争をよそに、病弱な妻とひっそり暮らしてはきたものの、お家の一大事とあっては、秘めた剣が黙っちゃいない。

 表題作のほか、「ごますり甚内」「ど忘れ万六」「だんまり弥助」「日和見与次郎」等、その風体性格ゆえに、ふだんは侮られがちな侍たちの意外な活躍を描く、痛快で情味あふれる異色連作、全八篇。

+-+- 感想 -+-+

 映画で話題になった原作である。

 とりあえず、あまりにもまわりが絶賛するので読んでみようと思ったのだ。

 

 「竹光始末」もそうだったけれど、とても読みやすい。

 時代小説は意外と登場人物の会話や時代を反映する道具などの登場から現代の小説より読みにくいものになりがちだけど、藤沢周平の小説はそういうデメリットを感じさせない軽快さがあるように思える。

 

 さて、肝心の表題作「たそがれ清兵衛」だけれど、やはり非常に人情味あふれる、しかも世の中のサラリーマンに共感を与えるような作品になっていると思う。

 この作品の良さはたぶん「サラリーマン」になってみないとわからないかもしれない。

 そう思える。なぜなら、この作品だけじゃなく、他の作品も同じ事が言えるのだけど、様々な事情を抱える男たちが社会で生きていく悲哀や苦難などを描いているからだ。

 そして、それがとても人情味あふれているのだから、人気が出るのもわかる。

 

 武家社会というカテゴリで生きる悲哀、そして江戸時代という空気を藤沢周平はうまく切り取っているよなぁと本を閉じた時、しみじみと思った。

 是非、世の「お父さん」に読んでほしい一冊である。

 

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