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 ◇「きみにしか聞こえない」 乙一 (角川スニーカー文庫)

+-+- あらすじ -+-+

 私にはケイタイがない。友達が、いないから。

 でも、本当は憧れてる。いつも友達と繋がっている、幸福なクラスメイトたちに。

 「私はひとりぼっちなんだ」と確信する冬の日、とりとめもなく空想をめぐらせていた、その時。美しい音が私の心に流れ出した。それは世界のどこかで、私と同じ寂しさを抱える少年からのSOSだった……。(「Calling you」)

 誰にもある一瞬の切実な想いを鮮やかに切り取る“切なさの達人”乙一。

 表題作の他短編二編。

+-+- 感想 -+-+

 彼の短編はとてもしっとりとしている。

 とてもわかりにくい感想になっているけど、そうとしか僕の表現力ではできない。

 文体がそうなのか、それとも作品全体がそうなのか、登場人物がそうなのか、それは僕にも判別は出来ない。

 ただ、しっとりとしているのだ。

 雨に濡れて立ちすくんでいるような、そんな寂しさ、哀しさ、温かさが渾然と彼の作品には流れているように思えてならない。

 表題作の「Calling you」も「傷」「華歌」もみんなそんなイメージが浮かんだ。

 

 今回の作品はどれもが甲乙をつけがたい。

 どれも切ないし、温かい。

 個人的には「傷―KIZ/KIDS―」がすごく心に残った。

 少年の無垢さと現実の辛さ、それがヒシヒシと心に迫ってきた。

 

 「華歌」もすごく淡々としていながらも、それが逆に心に残った作品だった。

 苦悩する三人の目の前に現れた花。

 花はしゃべらなかったが、それでも三人に夢や希望を与えた。

 そして、明かされる真実にやはり僕はうちのめされながらも、勇気をもらったのである。

 

 彼の作品はすごくしっとりとしている。

 ちょっと傷ついた時に読みたいなと思った。

 

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