彼の短編はとてもしっとりとしている。
とてもわかりにくい感想になっているけど、そうとしか僕の表現力ではできない。
文体がそうなのか、それとも作品全体がそうなのか、登場人物がそうなのか、それは僕にも判別は出来ない。
ただ、しっとりとしているのだ。
雨に濡れて立ちすくんでいるような、そんな寂しさ、哀しさ、温かさが渾然と彼の作品には流れているように思えてならない。
表題作の「Calling
you」も「傷」「華歌」もみんなそんなイメージが浮かんだ。
今回の作品はどれもが甲乙をつけがたい。
どれも切ないし、温かい。
個人的には「傷―KIZ/KIDS―」がすごく心に残った。
少年の無垢さと現実の辛さ、それがヒシヒシと心に迫ってきた。
「華歌」もすごく淡々としていながらも、それが逆に心に残った作品だった。
苦悩する三人の目の前に現れた花。
花はしゃべらなかったが、それでも三人に夢や希望を与えた。
そして、明かされる真実にやはり僕はうちのめされながらも、勇気をもらったのである。
彼の作品はすごくしっとりとしている。
ちょっと傷ついた時に読みたいなと思った。
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