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 ◇「青の炎」 貴志祐介 (角川文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。

 女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との3人暮らし。

 その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。

 母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。

 曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振舞い、母の身体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれない事を知った秀一は決意する。

 自らの手で曾根を葬り去る事を……。

 完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。

 その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた名作。

+-+- 感想 -+-+

 少年の孤独な心理と、その年代特有の微妙な心理が交錯する。

 それがまず胸を打つ。

 また、犯罪に向かう心理、犯罪を終えた心理。

 それを貴志祐介はとても絶妙に描いたと思う。

 特に犯罪を犯す意味というものを考えさせてくれた。

 

 現実をとことん描いているように思える。

 もちろん、犯罪部分では現実的じゃないところもあるが、それは仕方の無いところだろう。

 そのリアリティさがあったからこそ、櫛森少年の姿が胸を打つ。

 

 またこの作品は青春小説の一面も強く有している。

 それが犯罪というエッセンスと混ざり合って、名作になっているように思える。

 青春時代の純粋な心と殺人という犯罪で最も凶悪なもの。

 その相反する要素をこの本は見事に昇華させ、僕を感動させてくれた事に感謝したい。

 

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