一冊の本が紡ぐ長編小説だったのか。
本を閉じた時、僕は素直に感心した。
本を巡るミステリとして読者すらその物語の中に引っ張り込む力がこの物語にはあった。つまり、僕はこれも貸すなら一人だけにしかも一晩!?などと心の中で突っ込んでみたりもしてみたわけだ。
その緻密な構成にまずは舌を巻いた。
そして僕たちを引き込む物語の魅力。
特に第四部が今までの物語と絶妙に絡まり、しかもサンドイッチ方式で語られる二つの物語には息をつかせないものがあったと思う。
第四部の「回転木馬」というタイトルも絶妙だった。
読み進めていく内に、『なるほどつまりはこれも回転木馬だったんだな』と納得できちゃうのである。
各ストーリーも良かった。
特に一部の軽快なストーリーと逆に三部のある種の重さを伴ったストーリーが心に残った。その正反対とも思えるストーリーを四部で上手く紡ぎ上げている。
恩田陸の作品の代表作になるのは間違いないだろう。
読者と作者。
その関係が見事に消失した瞬間、この本の本当の価値が示される時なのだと思う。
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