非常にハートフルながら、切ない物語だと思った。
不器用で、諦観を持った二人。
すごく寂しい二人。
ある意味、すごく似ている。
乙一はとてもこういうキャラクターを描くのがうまいと思う。
それは今の僕たち現代の若者の姿にかなり重なる。
もちろん、みんながみんなそう言った人ではないけれど、関係が薄くなっている現代ではそういう大きな傾向があるのは確かだ。
だから、彼の作品は支持されるのかもしれない。
現代を描いているからだ。
物語はその二人が静かに生活していく様を描き、その中での心の交流、もしくはお互いの緊張を上手く描いていた。
確かに盲目の状態で、何も知らない誰かがいるのは怖い。
それがヒシヒシと感じられたが、それから徐々に二人の距離が縮まる様も同じように読みながら、自分の肌で感じられた。
そしてその人間模様が形を成す頃に、この小説はミステリに姿を変える。
その変貌ぶりも見事だし、二人の形を作り上げるのも見事だった。
彼のハートフルな作品は切ないけれど、温かい。
読み終わった直後に暖かな気持ちと、何かしら救われるような気持ちになった。
そういう意味ではある種の純文学的要素もこの小説にはあるのかもしれない。
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