シドニー!の前半部分。
あらすじには書いていないけれど、有森裕子のマラソンの記述には鳥肌が立った。
作者自身も走っているからだろう。
各ランナーの緊迫した情景が脳裏にくっきりと蘇るほど、その描写はヴィヴィッドだった。
前半という事もあるだろう。
この「コアラ純情篇」では、オーストラリアの空気をとてもよく描いていると感じられた。
特にコアラとブッシュ・ファイア辺りの記述はそのオーストラリアが持つ本質的な大らかさのようなものがひしひしと感じられ、日本人の僕としては呆れるような、感心するような気持ちにさせられた。
また、開会式の描写では決してテレビではわからないところを村上春樹らしいクールさで、描いているのも面白かった。
確かに、世の中の大半の開会式とか始業式なんてものはつまらないものだ。
村上春樹堂と同じようにその軽快で鋭い文体は時にははっとさせられ、時には深く考えさせられ、また時には笑わせてくれるとても楽しいものだった。
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