素晴らしい作品だった。
まず、死刑囚たちの『お迎え』の描写から始まるが、その死刑囚の心情の描写はかなり真に迫っていた。
またその死刑の描写も迫力があり、この二つのシーンを読んだとき、気分が悪くなったほどだ。
刑法と刑務所、前科者の現実などよく調べられているなと思わせる描写が多い。
応報刑論と教育刑論の二つを背景にした展開も興味深かった。
人物の心情描写が甘いという評価もあるが、僕は前科者などの現実の描写などから十分に読者が想像できる範囲だと思った。
社会派ミステリとして高い完成度を誇り、デビュー作だとはとても思えない。
「火車」を書いた宮部みゆきが絶賛するのもわかる。
死刑制度という日本人が忌避してきた問題点を知ることは大切な事だし、この本はその問題点を十分に提起しているものだと思う。
|