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 ◇「スカイ・クロラ」 森博嗣 (中公文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 僕は戦闘機のパイロット。

 飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。

 二人の人間の命を消したのと同じ指でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。

 戦争を仕事にしなければ生きられない子どもたちの寓話。

 著者、渾身の新境地!

+-+- 感想 -+-+

 森博嗣の本はそれほど読まない。

 なんとなく犀川・萌絵シリーズで苦手になってしまったのだ。

 だが、この本は表紙と帯に惚れて、買ってしまった。

 『僕はまだ子供で、ときどき、右手が人を殺す。その代わり、誰かの右手が、僕を殺してくれるだろう。』

 帯にこんな事を書かれると、僕はその危うさに惹かれ、本を買ってしまうのだ。

 

 そう、これはミステリではない。

 森博嗣が書きたいものを書いたようなそんなサービス精神に溢れていない作品だ。

 だけど、僕は初めてこの人の作品がいいと思った。

 

 身体の芯が痺れるような感覚。

 主人公の透き通ったような精神と、どこまで暗い時代。

 なんとなく、僕たちの時代に似ているような気もする。

 

 空を翔る爽快感とそのあまりに無力な現実に対する虚脱感。

 この二つが見事に一冊の本になった傑作だと思う。

 

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