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 ◇「偉大なるデスリフ」 C・D・B・ブライアン (新潮文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 その頃、僕たちはまさしくフィッツジェラルドが創造した“神話”「グレート・ギャッツビー」の世界を実現していた。豪華な邸宅、絢爛たるパーティ、美しき女性達との恋、そして涙…。

 主人公デスリフとモールトンの周りでは夢儚い。やがて圧倒的な幻滅が訪れる。

 

 “今”を生きる世代から栄光と輝きの二十年代に贈るオマージュを、魅力的な文体で翻訳したお洒落で哀しい恋愛小説。

+-+- 感想 -+-+

 優雅な生活。

 

 今の日本と比較しても、そこにはまだ何かしらの社会的な余裕が存在したし、現実がどれだけ馬鹿げていたものでも、馬鹿げていたなりに、そこにはフィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」が作り出した幻想という名の哲学が存在した。例え、それが致命的にどこかで間違っていたとしても、人々は共通の幻想を抱いていたし、そこには何かしらの夢が存在した。いや、夢を見たいと思って、夢を見ようとしていただけなのかもしれないけれど。

 

 そんな圧倒的な幻想が蔓延した現実で、二人の主人公たちは幻想と現実の狭間で強く揺さぶられつづける。一人称による彼らのナレーションは時には悲嘆にくれ、時には狂騒に溶け込み、それでも常に感じつづけた違和感が彼らを徐々に幻滅へと誘い込む。

 

 村上春樹ファンなら是非読んで欲しい一冊だし、スコット・フィッツジェラルドのファンにも読んで欲しい一冊。20年代の輝かしいアメリカの裏側を描いた作品と言える。

 

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