この本を読んでいて、僕は自分が少年の時に、心の中にしっかり守っていた夏休みを思い出していた。
甘酸っぱく、何もかもが輝いていた夏。
様々な社会の事象は単純で、そして自分の行動が思いかけない結果を引き起こす。すべては魅惑的で、そして驚きの連続だった。なにもかも、面白く感じられた感性があった。
けど、本の中の夏は常に「死」の雰囲気がまとわりついていた。読んでいて、僕は心の中で、懐かしいと同時に、哀しい気持ちになった。
彼らのような純真な子供心を自分が失っている事に気づいたからだ。
そしてその彼らの夏が終ってしまう雰囲気を物語りは行間に詰めていた。
終るのを僕は読んでいて、怖れていた。そしていつのまにかに僕は彼らの夏を追体験していた。素敵な夏を僕はこの本を読んで、経験させてもらった。
静かな感動をさせてくれる本である。
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