初めて加納朋子の作品を読んだ。
ミステリっぽい始まり方で、たぶん、分野的にもミステリに属するのだろうけど、僕はこの小説をミステリなんだなと強く感じる事はなかった。
それよりも、人の心の温かさや弱さ、そして強さなどに出合える本だと思った。
登場人物たちの関わり方を見ると、誰もがその人個人の痛みや傷を持っているわけだし、それに苦しい思いを抱くことになるのだろうけど、この傷や痛みは他人の痛みを和らげるためにあり、その他人の痛みや傷は自分を和らげるために存在するのかもしれないと思えてくる。
若年層の犯罪が凶悪化している今、大人たちは若者の心を見失っているような気がする。そして若者の心を見失うことと同時に、大人は自分自身の心も見失ってしまったのではないだろうか。
青春という微妙な年頃に、様々な事で揺れ動き、不安定だからこそ、若者たちは誰よりも必死で考え、何かを表現しようと、何かを得ようと、もがき生きるから、輝く。
それが若者たちが輝いて見える理由なのかもしれない。
心を道標を見失いそうになったときや、哀しみに打ち沈んでいるときに、この本を読むと勇気が湧いて、きっと微笑めるだろう。
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