+ 村上春樹 +


〜村上春樹の小説に関する考察及び概論〜

 

<プロフィール>

 1949年京都府生まれ。
 作家。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。

 在学中にジャズ喫茶を開店。

 79年、『風の歌を聞け』が群像新人文学賞を受賞。

 81年に作家を専業とすることを決め、2作目となる『1973年のピンボール』を発表した。

 82年には、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞受賞)を刊行し、前二作と合わせて"三部作"と呼ばれ、ファンから多大な支持を得ている。

 新鋭の作家として注目を浴び、87年に出版された『ノルウェイの森』では行き場のない恋愛を描き、純文学では異例の200万部を超える大ベストセラーとなった。"ノルウェイの森"現象を巻き起こす。人間の不完全さと喪失を丁寧に描く文体は、男女を問わず多くの読者から人気を得ている。

 その後も、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞受賞)、『ダンス・ダンス・ダンス』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞受賞)などの大作を発表し、現在もっとも人気のある作家として有名であるが、著作には小説のみならず、翻訳、エッセイなども精力的にこなしている。

 主な作品は、『羊をめぐる冒険』、『ダンス・ダンス・ダンス』、『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』、『スプートニクの恋人』、『アンダーグラウンド』、『シドニー』など。他著書、翻訳多数。

 

<村上春樹の魅力>

 彼の作品の魅力は、現代社会と自分の関わり合いをテーマにしていることだろう。主人公は現代社会に潜む闇の中で不思議な体験をする。それはあるときは辛い事だけど、それに悩みながらもなんとか前へ進んでいく。何をすればいいのか、どうすればいいのか。結論なんて全然出せない。それはヒーローとしては格好悪いし、男らしくもない。どちらかと言えば、女々しい。でも、それがリアリティなのだろうし、共感を覚える要素になっていると思う。何の主張も持たないというわけじゃない。ただ何が自分にとって正しいことなのかわからないだけなのだ。

 どのように自分をこの社会とつながりを持たせようとするのか、常に村上春樹の描く主人公の「僕」はその事に悩みながら、物語を織り成していくのである。

 

<テーマの変遷>

 村上春樹の小説は変遷していっている。そう表現できる。デビュー作「風の歌を聴け」では死とセックスに関して書かないというテーゼを打ち出していたが、「ノルウェイの森」では逆に死とセックスに関して「ウンザリするほど書きまくった」そうである。しかしテーマは一貫していている。

 「デタッチメント。」

 つまりかかわりあいを持たない事という事だ。

 しかしとあるノンフィクションを契機に村上春樹の小説のテーマが変化をしている。わかりやすく言うと、「デタッチメント」から「コミットメント」へ。「かかわりあいを持たない事」から「かかわりあいを持つ事」へ。

 そのノンフィクションは「アンダーグラウンド」という地下鉄サリン事件の被害者達にインタビューしたのを村上春樹がまとめたものである。ノンフィクションと言う形態をとっているが、これもまた村上春樹の本の一つであろう。そう実感できる内容だ。

 その後に書かれた「ねじまき鳥のクロニクル」はその影響が色濃く反映されている。「コミットメント」というテーマで書かれた初の長編小説であり、村上春樹自身が手探りの中で書いたような印象を受けた。三部構成であり、三部目に関しては読者の間では賛否両論だった。しかし二部で終らせるにはあまりにも「コミットメント」をテーマにするには登場人物達のコミットへの意識が低いと感じた。これでは今までの村上春樹の小説と変わらない。僕の意見としては三部目こそがコミットメントへの鍵になると思う。そうして村上春樹の小説は変遷していっている。次のステージに上がる為に、村上春樹はコミットメントに関してどんな答えを出すのだろう。

 

 

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