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お客様の気持ちを第一に考え困難を克服した実例の一つです

昭和20年代に作られた手ぬぐい。
あるお店の方から「先代の作った思い出の一枚」として復刻を相談していただきました。
復刻するには原図が必要なのですがそれも無くなっていました。
それどころか現品の絵も一部が色あせてしまい、
完全に消えてしまっている部分もあります!
そこにはいったいどんな絵が描かれていたのでしょうか!?
果たして平成の世に蘇らせることができるのでしょうか!
ここでは色あせてしまった手ぬぐいが復刻するまでを
随時レポートしていきます。

【色落ちしてしまった手ぬぐい】

全体的に縦横に線が描かれており、その格子模様の中に桜の花が赤く染められている

 ある日、持ち込まれた1枚の手ぬぐい。一見、普通の手ぬぐいに見えるのですが、実は昭和初期に作られたもので長年の使用により、多くの部分から模様が抜けてしまっています。格子模様の中に桜の花が赤く染められているのはおわかり頂けると思いますが、その隣にも“なにか”が描かれていた形跡があります。また、ほぼ中央にぽっかりと抜けてしまった複雑な形の部分は完全に色が飛んでしまって現状では判断できない状態です。
 昔の染料は現代のものと比較すると当然のように脱色が激しく、特に水道水の消毒が完璧となってからはそこに含まれるカルキによって更に色抜けが進んでしまったのです。
 果たしてここから『完全復刻』する事ができるのでしょうか!?
かなりの広範囲で描かれていた絵が消えてしまっています
※問題の箇所。広範囲で色が完全に抜けてしまっている。

【一筋の光】

この格子模様の中に薄いシミのようになって残っていた手掛かり

 よ〜〜く、目を凝らして観察していると持ち主の方でさえ気づかなかったほどうっすらと「井形」の模様が浮かび上がっている箇所を見つけました。「これ!」見つけた瞬間、実際に発した声。写真ではわからないほど、ほんの数カ所だけに、本当にうっすらと...!

【さて、困ったぞ】

 前回、うっすらと模様が残っている部分はあったものの、貴重な品をお預かりしているため、色落ちした部分を浮かび上がらせたりする薬品は使えません。
 その後、透写板などで観察してもまったくわからず。万事休す!でも諦めません。現物からの再生が無理であるのなら「現物を見つければいい」。発想の転換です。
 果たしてこれ以上の保管状況の物がどこかで生き残っているのか!?昭和20年代の手ぬぐいは蘇るのか!?

【ますます困ったぞ】

 さてさて、どうしたものか...この手ぬぐいを作った頃のお得意様なら、もしかしたらまだ持っていらっしゃるかも知れない...そんな淡い期待ははかなくも消えてしまいそうです。昔の顧客台帳を拝見させていただいても、いかんせん大昔のモノ。既に転居なさっていたり、あるはずの建物が無くなっていたり、団地になっていたり、町名そのものが変わっていたり...やっぱり探偵にはなれそうもありません。

【なんでもやってみるモンです】

ダメ元でコピーを数枚とってみました。

 日に透かしてやっと見えるかどうかと言った模様を遂にとらえました!写真のように数段階に濃さを変えてコピーを取ってみたらなんと!しっかりと写ったではありませんか!【一筋の光】のところで紹介した写真ではわからないくらいの薄さだったのですが、今回はこんなにはっきりと!下の写真がこの内の一枚を拡大したものなのですが、完全に抜け落ちてしまって再生不可能だと言われた部分もなんとか認識できる程度にコピーが撮れたのです!(やはりjpgだとはっきりしませんが)今まで模様だとばかり思っていたこの部分、どうやら文字が書かれているようです。更に目を凝らして見ると『呉福く』と書かれているのがわかります。これで復刻できる!早速、依頼主の方へ連絡すると喜んで飛んでいらっしゃいました。私も我が事のように嬉しく思います。さあ、一番の難問はクリアしました。あとは製作に移るのみです。
 ...まてよ、現在は呉服屋さんではなくなっているぞ!?
ある段階の濃さからコピーにはっきりと写し出された井形模様
※まさか、こんなにはっきり写ってくれるとは思いもよりませんでした。
よそで「無理だ」と言われたはずなのに、なんでもやってみるものです。

【ここまで再現できました!】

 前回までは、なんとか描かれていた内容がわかる程度にこぎつけました。ここからが本当の勝負となります。ぼんやりと、なんとなくしかわからないだけでは、とても手ぬぐいの復刻などできません。元々の形をくっきりと浮かび上がらせてから、今後の展開を依頼主様と打ち合わせなくてはなりません。
 いや、正直なことを申しますと、ここまで解ればあとは適当に現在の店の名前を入れればOKと、お茶を濁す業者がほとんどですし、その方が手間も掛からず楽チンなのです。ですが、これは乗りかかった船です。きっと依頼主様も「復刻」と言うからには昔のデザインが知りたいに違いありません
トレースを重ねてくっきりと再現できた「呉福く」の文字。時代を感じさせる書体ですね。  丁寧に何度もトレースを重ね、ここまではっきりと再現いたしました。依頼主様も子供の頃に見た手ぬぐいの記憶が蘇ったようでとても感激して下さいました。こんなこともあるから、この仕事は辞められません。
ご依頼主様は現在は布団屋さんを営んでおりますので、それに合わせて文字も「お蒲団」と差し替えることになりました。  再現できたものを元に打ち合わせを重ね、現在のご商売である「お蒲団」と差し替えることとなりました。
 右の画像は制作途中のものですので、実際には線のずれなどを修正して下絵の完成となります。

【復活!】

ご依頼主様も復活した手ぬぐいに喜んで下さいました
 “あの”なにも残っていない状態から、完璧と言っても良いほど甦った思い出の手ぬぐいです。

余所では「無理だ」と断られたそうですが、遂にジャストムが「無理」を克服しました!
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