★運営委員会まとめ 新劇女優の草分けである松井須磨子と、将来を嘱望され た学者・ 島村抱月という伝説的人物の物語とあって、期 待の高い例会であった。 早稲田の教壇を去り、妻子もすてて、運命的な出会いを した須磨子への愛と、演劇への志に生きた抱月。そんな思 いや苦悩をコミカルな演技で、少年のような純粋さ、誠実 さを観せてくれた山本圭さん。わがままで強情な須磨子を 演じながらも、人間臭く可愛らしさが醸し出された三田和 代さん。そして、二瓶鮫一さんの棟梁と語りなど、アンサ ンブルのある舞台でした。 この世には、まったくの脇役という人間は存在しない。 すべての人が主人公で、すべての人が脇役であるという言 葉を思い出させます。 |
しかし、今回の例会は感想文が少なく、「醒めた目での 観劇」や、「主人公の周辺を欲深く説明して、結局回り舞 台をぐるくる廻る訳のわからない・・・」などのように必 ずしも満足された方ばかりではないようでした。 芸術性と大衆性の二元の道に立ち向かった抱月の生きざ まは、そのまま今日の演劇状況にあてはまるテ−マです。 明治から大正という時代に、須磨子だけでなく演劇にも恋 をした抱月を、やさしい視線で包んだ斎藤憐さんの思いが もう少し伝わってくればと、残念が残りました。 とはいえ、劇中劇も楽しめましたし、「カチュ−シャの 唄」などの挿入歌も効果的に使われていて、なつかしく感 じられた方もおられたことでしょう。 |
感想文 ◎「抱月のはつ恋」を描くとすれば、あくまで彼の心情を 追って、物語を展開させるべきである。そうすれば須磨子 の自殺も場が与えられるし、現代にも通じる普遍性や共感 が得られたと思う。 しかしこのお芝居は、題名が「抱月と須磨子」のようで 主人公の周辺を欲深く説明して、結局回り舞台をぐるぐる 廻る、訳のわからない幕切れになっている。 本が悪い、だから役者の演技も生かされない。山本を見 ていて、チャップリンのヒットラ−をやらせたかった。 1924 ◎いつもは、機関紙の「まくあい」だけですが、今回わら 半紙の印刷物を頂きました。「はつ恋」の背景がよくわか りました。 須磨子の抱月に対する一途さ、しかし、頼りない女性で なく、自立した女性の一途さ、そして芝居に対する一途さ がよく描かれていたと思います。又、須磨子の名を高らし めたのは、その芸術性ではなく、大衆性であったという事 もよくわかりました。中山晋平といえば、日本歌曲の大御 所と思っていましたが、今なら、小室哲也ばりの流行歌の 作曲家でもあったわけすね。 強い女、須磨子でも結局自殺してしまい、弱い女、須磨 子。山本圭、三田和代が、抱月、須磨子になりきり、公演 でした。 40代男性 ◎何ていうか、傍観者というか覚めた目での観劇となって しまった。後ろめたさも残り、須磨子役も抱月役も、熱演 して、それが伝わるだけに、何とか、楽しみたかったので すが、私は、溶けなく、燃えないまま座っておりました。 ただ、二人の仕事、関係はよくわかりましたが。 今、舞台って何? 60代以上 ◎抱月と須磨子の芝居だと言うことだから、陰気な芝居で なかろうかと思ったがそうでなかった。この芝居は、抱月 と須磨子を主軸とした明治、大正風俗史演劇発展史及び演 劇人の心意気を描いた芝居と思った。 劇中劇のオフィリア狂乱の場面、主演男優に対して抱月 が嫉妬する場面等、面白かったが、この芝居通り抱月は気 弱な男性であり、須磨子は下品な女が女優になることによ って、後世にその名をとどめる名女優になったのであろう か。 又、この芝居では、須磨子の縊死の一因を劇団経営の行 きづまりとして描いているが、そうであろうか。これ等す べては芝居のためのフィクションと受け取っておきたい。 それにしても、明治、大正の芝居名、上演年を立て板に 水の如く述べたのには感心した。小生、フランス語の動詞 の変化を覚えるのに苦労しているので、あの役者に記憶術 を習いたいと思う。 つわぶき 60代以上 ◎今回の松井須磨子、私の持っているイメ−ジは紫の「お こそずきん」で抱月の後を追って自殺した静かな場面が強 烈でしたのでドタバタにぎやかすぎて戸惑いました。 わがままで人間関係もうまくいかなかった面を強調した のでしょうか。でも死ぬなんて、一筋に正直な人というか 抱月を失ってすべてがむなしくなったのでしょうか。 あの世でも手をたずさえて共に歩く姿で終わらせてます けど――。帰宅して何気なく上を見ると、まんまるな美し いお月様でした。有り難う御座いました。 60代以上 ◎よく大正ロマンという言葉を聞くけれど大正末期に生ま れた私は当時の事は知らない。だが物心ついた頃より耳に 残るカチュ−シャの唄声はなつかしく、はつ恋は大変心待 ちしておりましたが、あまりロマンではなくきびしい抱月 須磨子の恋であった。大人の恋である。行き着く所へ行き 着いた感じだ。 明治、大正の世の移り変わりが舞台によく現れておりま した。スタッフの皆様ありがとうね。 桜の園 60代以上 |
◎島村抱月、松井須磨子の関係はもっとロマンチックなも のと思っていましたが、実際は心の思いとは裏腹に、葛藤 の多い日々だったのかと思いました。抱月の演劇に対する 情熱とその彼に心酔しながらも彼の言いなりにはならない 須磨子の性格的なものとのぶっかりあい、それ等は周囲を も巻き込んで大きな苦悩であったとも思えます。しかし、 この二人はこの劇団にとっても切り離すことの出来ない存 在だったのでしょう。また、当時の演劇界にとつても二人 の存在は大きかったのだと思います。 あまりにも有名な抱月と須磨子のこの二人が残した物は 今も演劇界で追い求められていると思われる演劇とは何か という、このことではなかったでしょうか。演劇もまた芸 術であるとして、そこまで演劇を高めようとした抱月の思 いは、一つには周囲とのたたかいであり、民衆への挑戦で あったと思います。 このように見てきますと、今度の「はつ恋」は重いテ− マを持っての上演だったのだということがわかります。 ただ舞台が遠くて、抱月の時々発する光る言葉があったに もかかわらず、また三田さんの熱演や、歴史上の方々の登 場も今一つ心に響くものをつかみ取ることが出来ませんで した。でも抱月の思いや須磨子の人格に触れた気がしてい ます。 松風 60代 ◎帰りの電車内で二人のやり取り抜粋 A まず総評。少々荒削りだが隙の無い作品でしたね。 B そう、表皮的に突っ走り、いっきに駆け抜けた感じ ..。 A 役者さんが入れ替わり、立ち換わり、めまぐるしく ..。 B そうですね。自分の出番と役割認識を確立してないと 大きなミスにつながり場面が壊れてしまう。指令塔は 大変ですね。 A 衣装換え、かつら選び、出と入りの場所、個の占領位 置からせりふ廻しとその仕草。さらには照明あて、装 置の移動などなど。どれも重要なことだし、それぞれ が頭に叩き込んでおかないと、とんでもないことにな る。基本的なことです。 B 稽古場の阿修羅を意地悪にそっと覗いてみたい。それ にしてもみなさん芸達者。感動。 A お芝居するプロですよ。それで何年もめし食っている ...。 B 舞台の上と下、右と左。あまねく使い果たしましたね A 有効的に...。回り舞台もちゃんと操作して抜け目 がない。 B 行灯揀宴塔v。立て屏風など情緒的な小物が出ました A つなぎもよかったのでは。 B そう、幕あいの活用。どの劇団も定着した手法となり 見ざわりにならなくなった。 A そして、ひとり語りで場をつなぎ、薄あかりにしてそ れとなく手のうちをみせる...。 B いいことですよね。缶コ−ヒ−をどうぞ...。おお きに。 A プロセス分かりましたか。 B ええ、何とか。それにしても急がせましたね。 A おなじ間隔で根拠をつないでいきました。「ここは注 視して欲しいのクッションを」じっくり演じて欲しか った。 B 随所に流れを汲んで、さわり部分をセットしてみせた が。 A 端正なお顔の山本抱月。あれで上背がもちょっとあれ ば。 B 須磨子三田さん。勝ち気ですね。恐れ入りました。 A お豆さんを食ってた脇の脇のムラさんすきだなぁ。 A ともかく、みんなが主役して長丁場を乗り切った。 B そんな感じの例会。ごくろうさんでした。 A では、又次回まで...。車窓は海辺にさしかかった 六つ松 |