香川市民劇場例会感想文集

1997年3月例会 民芸 君は何処に
運営委員会まとめ 

 女子挺身隊の過酷な労働のため身体を病んでいるみこ。

娘を思い、住みなれた豪邸を売り払い安普請の家に移って

きた梯二郎。そんな父の願いをも砕く過酷で理不尽な税。

原作者 小島政二郎さんの実話にもとづいた作品の、父娘

を演じられたお二人に『息の合った絶妙の演技、父と娘の

心あたたまる思いやりがしっかりと伝わってきた』『娘を

思う父親は喜怒哀楽の激しい中にも、とっても暖かい心情

があふれていて、いつのまにか涙』など、沢山の賛辞が寄

せられました。                   

 このように、今回の芝居の最大の魅力は、大滝秀治さん

奈良岡朋子さんの見事な演技力でした。『重いテ−マを喜

劇風に、見事に演じきった』という感想のように、コミカ

ルな所作や台詞まわしが、『悲しくつらい話のはずなのに

観終わった後のさわやかで温かい気持』や、『幕切れの父

柾二郎の「みこ、お前は今どこにいるんだ」の台詞にあふ

れ出る涙をおさえることが出来なかった』と、感動を深め


たのではないでしょうか。              

 また、「学徒動員」「挺身隊」という言葉が幾人もの感

想文にあるように、柾二郎やみこと同時代を生きてきた会

員から寄せられた感想文が圧倒的な例会でした。    

 みこと同じように、挺身隊がもとで入院生活が続いた先

輩と、彼女を支え続けた挺身隊仲間の同級生たちの実話を

書いてくださった感想文。『戦後五十年がたつというのに、

彼女および彼女たちの戦争はいまだ消えていない』とあり

ます。                       

 声高に戦争反対を訴えるわけではないが、罪無き人々が

身も心も深く傷つき、それを背負って生きていかなければ

ならない、みこの生きざまはそれに負けまいとする壮絶な

叫びだったのではないでしょうか。          

 戦争を知らない世代の会員は、この「未だ消えやらぬ『

戦争』」をどう感じたのだろうか。          

         



感想文

◎お二人の息がとてもぴったりと合っていて本当にたのし

いお芝居でした。特に大滝さんの着替えの速さには感心し

ました。人間というものは、みがき続ければ何歳になって

も光り輝くことが出来ると改めて感じました。奈良岡さん

のセリフとても聞きやすかったです。美声〜!     

                うぐいす 50代



◎よかった。カ−テンコ−ルの時、これだけの舞台をたっ

た六名の出演者でやっていたのかというおどろき。大滝・

奈良岡のご両人ならではのやりとり。前々回と似たセリフ

の多い出し物でしたが、中身のこい考えさせられる内容で

した。でも何かもう一つピタッとこない。       

 自分なら別の選択をするだろうと思う場面も何度かあり

気持がもう一つのってこない。ちょっと距離をおいて観て

いた。設定の親子関係が特殊なのか、自分が変わっている

のか考えてしまった。                

 親子ではあるけれど各々が相手の人格を認め自立した関

係。困った時は助け合うのが家族だと思うが。いつ、どん

な選択をするのかがむつかしい。そりによって人生も大き

く変わる。             良子 50代



◎三月例会で芝居の醍醐味を久しぶりに満喫。他人への思

いやりを直截に表現する事のてれくささ・嘘っぽさ。それ

を避けようとして人は頑固な、伝法な口のききかたをする。

そのおかしさを大滝・奈良岡ご両人が見事に演じた。  

 役者は自分の台詞を喋っておれば済むものではない。相

手方との丁々発止の台詞のやり取りこそが舞台の命である。

『君はいま、何処に・・・』にはそれがあった。『リチャ

−ド三世』の致命的な失敗はそれがなかったことである。

               アカンサス 60代



◎さすがはベテラン大滝さん奈良岡さんのすばらしい演技

でした。言葉は荒っぽかったけど本当の親子の様な暖かさ

がにじみ出ており息のあったところを見せて戴けて楽しか

ったです。                     

 お手伝い清子役の入江産さん、さりげない演技で家庭の

ぬくもりといったものを出しており、目立たなかったけれ

ど、すばらしかったと思いました。          

実話にもとづいたものとの事に尚更胸うつものがありまし

た。最後の「みこ、お前は今どこにいるんだ」との大滝さ

んの絶叫には思わず涙してしまいました。

               桜の園 60代以上



◎最愛の娘が他界してしまう悲しくてつらい話のはずなの

に、見終わった後のさわやかで温かい気持ち、これは何な

のでしょうか。大滝さんと奈良岡さんの息のあった絶妙の

演技、父と娘の心あたたまる思いやりがしっかり伝わって

きていたからでしょう。それと「ささ」役の伊藤さんの台

詞まわしがたんたんとしていて、一見かみ合ってないのか

と思ったのですが、それがなんとも味わいのある温かさを

伝えて来て父と娘の仲にじゃまにならず快く受け取れ、よ

い脇役を演じられているように感じました。      

 幕が開いて、今回の舞台美術はもしかしたら転換に時間

がかかるのかしらと思ったのも取り越し苦労、第一場の引

っ越ししたばかりの場から第二場もあっという間に片付づ

いた部屋になっていておどろきました。裏方さんもご苦労

さんです。私の転勤の時の引っ越しも手伝ってほしいナな

んて思ったりして...。               

             ワインレッド 50代



◎父親に対する娘の言葉使いが最後までなじめなかった..

.と言うか、そういうタイプの娘を演じるのに、あの上品

でおっとりして美しい声の奈良岡さんでは何だか不自然で

した。                       

 それにしても大滝秀治さんの演技はすごい! 芝居が終

わって人影もまばらになったロビ−の椅子に毛糸の帽子を

かぶった老人が疲れ切った顔をして座っている。よく見る

とついさっき迄舞台の人だった大滝さんでした。近づくと

「どうだっかナ...今日の芝居は?」「この芝居は決し

てとちってはいけない、それがず〜っとこわいんだよナ」

厳しい顔つきでやっと聞き取れる位の声でつぶやいていた。

舞台では楽しそうに演じているように見えて役者にとって

舞台は命がけなんだナ、ベテランの役者が命がけで演じて

る芝居を地元でジカに見ることの出来る倖を、あらためて

思い、市民劇場に感謝!               

                 阿修羅 50代



◎素晴らしい舞台でした。

 お芝居を観たというより人生そのものを一齣切り取って

見せて貰ったようです。戦前、中座で見た伊井容峰、河合

武雄、北村緑郎の大年増のやり取りを思い起こしました。

お二人に拍手を送ります。              

                清晃 60代以上



◎君はいま何処にで戦争中から戦後、学徒勤労動員、成長

期にある中、食糧難にもなるし、この時代を体験したお二

人が演じてくださりましたので、当時の思い出が滲み出る

ような表現力。                   

 豪邸を売り払い小さな家に移り理不尽な税を取られた親

子の会話、他の人が立ち入る透き間がない本当の親子のよ

うで、息のぴったり合った演劇で感激致しました。   

                 グルメ族 女性



◎君はいま何処に長いこと待った様な気がしていそいそと

出掛ける。雨降りが少々心配したがまあまあのいりでほっ

とした。                      

さすが(ハップ)(デコ)と呼ぶ仲との由これほど繊細な

息の合った父娘の関係。私も女学校時代学徒動員に行った

自分を思いだし感動することも一塩でした。奈良岡さんの

言葉の悪いのが芝居をおもしろくしていた。大滝さんのパ

ワ−にもびっくりしました。感動の余韻で寝つきが悪かっ

た。                南天 60代



◎大滝秀治さんも奈良岡朋子さんもからりの年齢と思われ

ますが、声にはりもあり、二人は一期生として本当に息の

合った芝居でした。                 

みこ(娘)にそそぐ限りない父の愛情、そしてラストシ−

ンの父親の絶叫、涙なしでは見られませんでした。久しぶ

りに心に沁みるものでした。             

               桜の園 60代以上



◎みこたちは、いまも・・・。

「君はいま何処に」を見ていて、ず−っと私は一人の方に

思いを馳せていた。彼女は私の先輩で、戦時中、丸女から

山口県の海軍光工廠に挺身隊として動員されていた。勤務

中病気になりそれがもとで下半身の自由がきかなくなった。

戦中から戦後を通して彼女の入院生活がつづいた。現在リ

ハビリのかいがあり、やっと少しは歩け、身の回りのこと

もできるようになられた。その間、彼女を支え続けたのは

挺身隊仲間の同級生達であった。           

 戦後五十年がたつというのに、彼女および彼女たちの戦

争はいまだ消えていない。香川県下の学徒動員数はおよそ

一万八千人、学徒死者三、挺身隊二千六百十一人(香川県

史)が記録されている。               

 幕切れの父、柾二郎のせりふが終わったとき、あふれ出

る涙をおさえることができなかった。         

                  長月 60代




◎今回の公演、大滝さんの声が小さくてマイクがはずれて

いるのか、私達のサ−クルは皆不満でした。丸亀の方は広

いので高松にくらべて全体に皆声が聞き取りにくいです。

今後よろしくお願いします。             

              みやこわすれ 60代



◎家族それぞれの思いようが無理なく伝わってきました。

ベッドの上のミコの顔が、白く美しく残っています。素直

に感情移入することができ、あと庵治の良い観劇ができま

した。                       

               ありがとう 50代



◎芸達者のお二人の息の合った芝居を楽しませていただき

ました。父と娘の関係って、確かにそういう所があるなあ

と共感する部分がありました。実生活の中でふと、このお

芝居を思い出す瞬間が、これからあるのではないかという

予感          ミント コッコ 40代



◎現代にマッチした我が身の出来事の様でとっても感動し

ました。一つだけ残念なのは、私は二階席だったから言葉

が聞き取れなかったのがとってもとっても残念でした。 

でも私もう仕事の都合で・・・。           

                飛行船 50代



◎こんかいの「君はいま何処に」は実話をもとにまとめた

作品とのことでして、とても感動しました。娘を思う父親

は、喜怒哀楽の激しい中にも、とっても温かい心情があふ

れていて、所々でいつの間にか涙が流れて胸がいっぱいに

なってしまいました。                

 実は、私の父も江戸っ子だったんです。「べらんめえ」

とまでは口調は激しくありませんでしたが、歯切れのいい

、腹に陰が残っていない、さっぱりした気性でしたので、

又、病気にも無縁の家庭だったから、毎日がさわやかな家

で過ごすことが出来ました。こういう病気というものが家

庭の誰かが背負っていると、どうしても陰気になりやすい

と思うのに、陰がない、その日その時を精一杯明るく生き

ている。                      

 私も、今は三児の母親ですが、実生活は、ついつい愚痴

がでたりしてマイナス思考になり、暗い空気が流れるとき

があります。でも、やはり一生一度の人生、出来る限り明

るく、楽しい生活を心がけなくては、両親に申し訳がない

という気持になりました。              

                  南天 50代



◎主人公の父親の年令に近づいたためか、父娘の愛情の深

さが十分に伝わってきた。戦争中の「勤労奉仕」という言

葉を理解できる人々が少なくなりつつある現在では若干の

補足がいるのでなかろうか。             

 声高に戦争反対を叫ぶのでなく、重たいテ−マを喜劇風

の仕立てでさらりと流した脚本と、そりを見事に演じきっ

た奈良岡、大滝両氏の演技はすばらしかった。     

 私の叔母もまた戦争に巻き込まれているが(更に言えば

叔父も義父もだが)あれやこれやの思いがこみ上げて来て

涙があふれて困った。                

 舞台装置も美しく、照明の見事さ、退屈させるものがな

く、すばらしいの一言でした。それにつけても観客が中年

高年を中心とした女性たちで男性が少ないことにも驚かせ

された。                      

 こんな舞台を見ている女性たちは、日々賢くなって確実

に成長を続けていることを思うと、日本の将来は明るいと

感じた。               60代以上



◎老いについて色々考えさせられる劇だったので、自分の

立場等色々対比しながら見させていただきました。   

 これからの人生色々過ごし方はあると思いましたが、ル

−ルに入らないこう云う過ごし方もいいものだなあと思う

所が多々ありました。奈良岡様大滝様の芸達者の方々、劇

中に入り込んで色々考えさせられる事がしばしばでした。

 大変な熱演、有り難うございました。        

              劇団チャイム 50代



◎幕が開いて、引越し後の荷物のゴタゴタを見て、私は軽

くほっ、とつぶやいた。そして第二場の座敷と洋室(物の

配列を含む)を見て、今度はほ、ほとつぶやいて「洒落て

るなあ」と思った。冒頭の舞台に何をしつらえるかは重要

なポイント稼げになるし、乱雑さと整然さの対称は観るひ

との心を引き止めるに十分であった。そして数十秒の幕間

にいかな手法であのゴタゴタ荷物を片づけたのか、私は短

絡的に大いなる疑問を持った。(暗い幕間に、まわり舞台

が動いたとは...)                

 ところで、大滝さん。ほんとに憎めないおひとですよね。

あのクシャクシャ顔・どなりたてるハスキ−な声・めがね

越しの頓狂な鼻筋・突き出す下唇と直立不動のまじめ姿態

などなど。けだし特異なキャラクタ−の持ち主であり、本

劇の田島柾二郎ははまり役といえるし、私は大喝采してま

すます熱烈に贔屓筋のひとりに加えました。      

 他方、揺れるチェアに毛糸編み姿の奈良岡さん。めいっ

ぱいのおめかしで娘役に挑戦したが、所詮演じることと、

なりきることのはざまには、一定の距離があるやに思いま

す。父への心遣いは、はるかに越えてめ観る目には「夫婦」

のそれに近く映る。劇団民芸にはみこ役をこなす若い人は

いないのかなあ。                  

 白と赤の毛糸玉・「空」と「和」の掛け物・一輪挿しの

花・庭の草木・盆栽の移動位置等々細かい小物類の取り換

えは配慮ある効果演出として見届くが、いきなり抱かれた

.まがいもののワン公はいただけない。それはなくとも芸

達者な大滝さんはちゃんと「心理描写」してくれますよ。

 ちらしには彼と彼女「ハップ」「デコ」と呼びあう同期

生とある。別の素材でちょうちょうはっしと華々しくわた

りあう熱演をひたすら念じ期待するものある。     

               六つ松 60代以上



◎久々の民藝の私小説物に触れて快感を覚えた。生の空気

感にあふれ、舞台の光と陰が身体に浴びるかのようにふり

かかり、装置の左右の明暗も見事で拍手を送りたい。  

 これはテレビや映画では得られない芝居の醍醐味でいそ

がしい中にも芝居例会に足を運び心地よさ、会員であるこ

との自己意識を高揚させるのである。サ−クルでの友情の

よさだけでなく、芝居そのものの快感を毎回の例会が会員

に与える熱演こそ大切である。今回の民藝はこれに応えた。

 大滝は文字通りのはまり役。役者と本人のどちらが本物

か分からなぬ位の迫真性。これ以外に別人の演技者は考え

られぬ。奈良岡もわがままぶりと甘えぶり、それで父を想

う娘の心情が切々と伝わる。お転婆性も心にしみる。  

彼女の「イルク−ツク」や「払えないの?」も好演だが、

こういうのもじつにいいと思った。ただ、もし、ぼくのわ

がままをいってよければ、日色ともゑや樫山文枝の「みこ」

もまたペ−ソスがあるだろう。奈良岡みこのほかに日色み

こ、樫山みこもみてみたい気がもたげた。       

 これはイルク−ツクの奈良岡の印象が強烈であること、

みこの身体に巣くう腎臓の病根をどう表現するか、柾二郎

や清子(お手伝い)とのカケアイにも関係する。    

 いずれにせよ、「リチャ−ド三世」がチャイコフスキ−

とムソルグスキ−の下向音型とするなら、これはモ−ツア

ルトの下向音型であり、ぼくは彼のト短調や二短調の室内

楽を聴く思いであった。幕が下りても席を立つ気持になれ

なかった。重ねて拍手。脚本もすばらしい。      

                イカロス 60代