香川市民劇場例会感想文集

−MOTHER−
1998年5月例会 青年座「君わらひたまふことなかれ」

運営委員会まとめ

 五月例会青年座の「MOTHER」は、与謝野晶子を中

心に、明治の青春群像を描いた喜劇でした。      

 与謝野家へ集まってくる「鉄幹のもとを早々に巣立って

いった才能あふれる北原白秋」「貧乏に追われた薄幸の詩

人石川啄木」「晶子に強く影響を与えた菅野須賀子」等の

歴史上の人物たちが、互いに影響を与えながらいきいきと

動いていました。                  

 才能ある者を正しく評価し、その信奉者として生きた、

明治男の美学を「男がすたる」という言葉で表した鉄幹が

丁寧に描かれていました。それと対照的に、鉄幹によい仕

事をしてほしいと罵声をあびせながらも、鉄幹への愛がさ

めていく気持ちと闘い、鉄幹を愛し抜こうとする晶子が表

現されていました。                 

 文学者としてよりも、女性として、生活者として晶子が




描かれており、その心情に共感を覚えたという感想文が多

く寄せられ、作者の意図がそこにあった事がうかがわれま

す。                        

 また、日本ならではの四季をたくみに織り込んでの脚本

演出も好評でした。特に、啄木が持って帰った桜の花びら

が、特高が持ってきた啄木がすでに死んでいたことを知ら

せる手紙からヒラヒラ落ちていくシ−ンは、とても印象的

でした。                      

 今例会は、「セリフが聞こえない」という声にみられる

ように、内容が十分に伝わりきれなかった事で、残念な部

分もありますが、全体とし鉄幹や彼らを取りまく若者達と

の関係を通して、女性として、人間として、どう自立して

生きたかというテ−マが晶子の生き様を通して語られ、ス

ピ−ディで楽しめる喜劇になっていたと言えるのではない

でしょうか。                    



感想文

◎人生は出会いと別れのくり返しですが、私はある事で少

し人間ぎらいになっていました。そんな時、お声をかけて

下さって、もう失う物はないのだから知らない世界に飛び

込むのもいい、そんな軽い気持ちで出かけました。タイム

トンネルを抜けて大正時代に自分も居るような、そんな気

分になりました。ピッタリと息の合った舞台を観ていると

軽い気持ちなどと失礼な事を思った自分がはづかしく思わ

れました。特に、春・夏・秋・冬とさり気ない小道具、花

とか陽ざしとか風鈴とか家具・夕陽・木もれ日、こまかい

部分までの演出と出演者の方たちに、こんな心のいっぱい

つまったような世界もあった事を教えていただいて、私も

勇気ある生き方を分けてもらった気がします。ほんとうに

いい出逢いをありがとうごいました。         

         菜の花 60代以上(女性)



◎今回の「MOTHER〜君わらひたまふことなかれ〜」

は素晴らしい劇でした。               

 机上の理論を第二部でぶつ石川啄木、峻烈なまでに個人

としての独立を保つ菅野須賀子、飽くことなく政治クサイ

理想を掲げ上げる平塚明子。彼らと対照的に地に足のつい

た詩作を続ける与謝野晶子。晶子は「グレ−ト・マザ−」

であり、「グレ−ト・ワイフ」でもありました。これは良

妻賢母という封建文化の女性とは異なるものです。晶子は、

「原始のフェミニスト」であったのです。       

 それから、子どもの存在と動きを演出と演技でカバ−し

たことには感嘆しました。              

                 20代(男性)



◎文学史で習った人物の登場にとても親しみを持ちました。

晶子は本能のままに生きた人のように思い込んでいました

が、鉄幹を愛し抜き大勢の子を育て多くの作品を残した精

力家でそれでいて仕事のむしでなく、可愛さおかしみのあ

った人として描かれていて嬉しくなりました。鉄幹が無断

で売りに行こうとしていた晶子の蔵書が特高によって散乱

した時、私は夫婦ゲンカが始まるかと思いましたら、鉄幹

をかばい通したことに晶子の賢明さを感じました。自由奔

放に性が語られる今日もなお作品が官能的に感じられるの

は不思議な気がします。それにしても津田真澄さんの熱演

にはのどが心配になりました。盛大な拍手を送ります。 

いいお芝居をありがとう。              

                福寿草 40代



◎登場人物総てが写真で見る文豪達に類似しているのは、

大変感心しました。特に鉄幹役の山本龍二氏、啄木役の五

十嵐明氏、大杉栄があの様に豪快な人物なのも嬉しい気が

します。物語全体に漂う優しさを感じ、又とない良い舞台

だったと心が暖かくなりました。           

 マキノノゾミ氏の今後の活躍がとても楽しみです。  

             扇会 50代(男性)



◎明治の大物が揃いましたね。青年座の皆様本当によくや

ってくれました。書物で読みました事思い出し乍ら観てお

りました。それぞれの役柄、ム−ド、明治の末期に身を置

いた様でした。自分が主人公になったりしてね・・・・。

でもきれい事ばかりでもなく、とっても面白くあっという

間に時間は過ぎました。               

          さくらの園 70代(女性)



◎まさしくMOTHER、バイタリティあふれる母親の姿

でした。                      

で、しずかな場面はしずかでその分台詞が聞こえにくかっ

たのが惜しいと思いました。きっと高松公演では改められ

たことと思います。                 

 芝居の楽しみ方はいろいろあって、脚本の良し悪しを見

る(?)のが楽しみ、という人も居ると聞きました。今回

は荷下ろしの手伝いをしたのでスタッフも心にとめてとい

うふうに香川市民劇場は身近に感じられます。     

             まつの会 まだ50代



◎★芝居以前のことであるが俳優達の科白聞こえず、後半

啄木が何か面白い話をしたらしいのだが全く聞こえず興味

半減した。                     

★芝居の主題が男女の愛なのか、文壇の交友なのか、世相

の移り変わりなのかはっきりしない。これは台本が悪いと

言ってしまえば酷であろうか。            

★この芝居に大杉栄が出てくるが、大杉栄と言えば殺害さ

れたアナ−キスト(?)と言う事を知っている評者にとっ

て、大杉栄をこの様に扱うのは見当違いのような気がする。

★「香川市民劇場」はこの様な歴史的事件を語った芝居が

多いが、「歴史的事件」が劇的でなければ、唯歴史の上っ

面をなぜるだけになるのではないだろうか。 悪例「NH

Kの大河ドラマ」(決して見ない)          

                       Q


◎「そんなわたしが好き」と言うあきこさん。そんなあな

たがとても好きです。自分を誉めて上げても十分良い人生

ですね。「マザ−あきこ」のミュ−ジカル版でもよいかも

と思ったりしながら楽しませていただきました。あとあじ

がとっても良かったです。              

                こくりこ 50代

◎MOTHER 君わらいたまふことなかれ      

 演題どおり肝っ玉母さんの与謝野晶子が、人生を前向き

にたのしく生きている姿を感じられ、とても楽しいお芝居

でした。                      

 友は友を呼ぶといわれるように、晶子の生き方に賛同し

自然に集まってくる人々、皆本音で話し、強い信頼と尊敬

し合って・・今、人間関係が希薄になっているといわれま

す。晶子の生きた明治時代を少しうらやましく感じました。

弾圧に負けず我が信じる道を歩んでいる人々を。    

            ミッキ−マウス 50代

◎はじめおかしな題名だナと思ってましたが、マキノノゾ

ミ氏の書かれたもの読んで納得しました。「ものがたり」

読んでお芝居観て登場人物が同じ頃生きて交流があったな

んて、考えたこともなくおどろきでした。個々の人物とし

ては作品や物語で知ってはおりましたが、確かめてみたく

帰ってすぐ何十年も昔の国民百科事典ひらいてみました。

その通りのことがのっており白秋、啄木、大杉は生まれた

年号も同じでどうして今まで知らなかったのかと不思議に

思う程・・・。                   

 あの時代に「君死にたまふことなかれ・・・」なんて堂

々とうたった歌人として尊敬し情熱の人とは知っていまし

たが、現実の生活する人としては余り考えたこともありま

せんでした。あんなにたくさんのお子を育て(それも電化

された便利な今とちがう時に)ながらまわりのものすべて

に愛と真情で体当たりするような生き方、あわただしい動

作それが本当の家庭での姿だろうと思い一層スゴイ女性だ

と立派さを知らされました。それだけに、パリに遊んだ鉄

幹との旅、よかったなあ・・とこちらまでうれしくなる思

いがします。マキノノゾミ氏の文の終わりに書かれた様な

気持ちにいつもさせて頂いております。      感謝

                      70代



◎物語の時代のパワ−と同時に、私たちの先輩に、こんな

にも活気に溢れた夫婦がおられたことを知りました。  

 自分の生活の中での夫婦、友達関係について、観劇後2

〜3日してから深く考えさせられました。       

 晶子が劇中で語る「美しいものが好き」という言葉が頭

から、心から離れません。              

 本当にありがとうございました。          

           うたかた 30代(男性)

◎今日のお芝居は時代の背景があり、私共には大変興味深

いものでした。楽しく観させて戴きました。      

只、声が小さく聞き取りにくいところが多くありました。

願わくば、私共年配となる者は、声の通ったお芝居を鑑賞

致したく思います。故に、マイクを設置していただければ

とても幸いと思います。切にお願いします。      

                      60代

◎あれこれと例会作品を観るうちに「どんな芝居を仕上げ

るにも、それぞれの役割を果たす人たちがいるもんだ」と

思うようになり、その出来映えに少しづつ感心したり、ぶ

つぶつ愚痴をこぼしてみたりするようになってきた。  

 私の指定席は(5/29)前の方であった。なのに、さ

っぱり台詞が聞き取りにくいのである。そして、何か早口

で喋っているのはわかる。でも、話がみえないから筋道が

わからない。わからないからおもしろくない。     

 マキノノゾミ氏は「お芝居は観て考えるものではない。

観て感じるものだ」とおっしゃっている。演者と観客の媒

体は台詞で結ばれ理解されあう。点と線とが空中分解した

ら興味は半減してしまう。    

                 六つ松 70代

◎与謝野鉄幹・晶子をはじめあまりにも有名な方々の登場

なので、目うつりを感じてしまいました。       

 若き日の文士、文人、アナ−キストと言われる方々まで

登場させたのは、そのころの時代を物語るためだと思いま

した。あの方々はほんとうに元気がよくて、国のことを思

って文字通り口角アワをとばしていました。与謝野家の床

は大丈夫かと心配したほどですが、とても頑丈に出来てい

ましたね。実は私も、あの小道具の一つ二つを運びました

ので、よく出来ているナと観ました。与謝野晶子の才女ぶ

りは世間のよく知るところですが、それに対して鉄幹の凡

庸としたしぐさが面白いと思いました。晶子が婦人解放運

動に加わらなかったこととか、鉄幹が社会運動家の一人を

お金で助けたとかはあっても、それ以上彼等にかかわりを

もたなかったというのも、このお二人の特徴だったようで

すね。                       

 須賀子の亡霊と語らせる所とか、最後の場面で、晶子が

鉄幹に罵声をあびせるところなどは、晶子の気持ちを作者

が代弁しているように感じました。          

 激しい時代の動きの中に、このご夫婦がどう生きたかを

知るきっかけにもなりました。よかったという評価もあり

ました。今後に期待します。             

             松風 60代(女性)