香川市民劇場例会感想文集

1999年9月例会 唐来参和
運営委員会まとめ 

 十年前の九月例会で大変評判が良く、再演を希望する人

も初めて観る人も楽しみにしていたようでした。

さすが600ステ−ジを突破した「唐来参和」、益々磨き

がかかった一人芝居にいつの間にか引き込まれていったの

ではないかと思います。

 大きな屏風の片隅から時代を思い出す様な古い角型マイ

クを携えて現れた、和服のよく似合う小沢さん。江戸時代

の語りに深い味わいがあり、寄席の気分で小沢昭一の世界

に引き込まれていきました。

 後半の芝居へ自然に引き込んでいく「前口上」は、その

語り口の素晴らしさとともに後半の芝居の入門編ともなっ

ていました。

 背景に歴史を物語る垂れ幕を読みたかったと言われる人

もありました。


 江戸時代の洒落本・草紙「好色一代男」、上田秋成「雨

月物語」や読本・森羅万象の「田舎芝居」等があったが、

松平定信が禁止したが後に読本・滑稽本などによって風靡

された。平賀源内・参和・蜀山人と小沢さんが紹介された。

源内さんは土地の人、蜀山人(大田南畝)は幕臣で狂歌の

名人として江戸の人気を集めた奇人であった。参和と同じ

様に住みにくいこの世を、洒落、風刺でユ−モア化して、

自らも笑い、人も笑わせた。

 苦界まで落とされた妻が、死にかけている夫を苦しみか

ら救ってやろうと命を絶たせた、この思いは現世代にも通

じるものが感じられる。

 最後に蜀山人の歌を。

「あまい親 可愛いと気ままさせ 老いてのちのいまは後

悔」。この江戸時代の歌も、現世代をも風刺した一句。



感想文

◎永遠の美少年、小沢昭一に乾杯!

 一時間40分の上演時間の半分近くが、芝居の前口上で

あった。ところが、すべて芝居を観る上であらかじめ知っ

ておきたい「吉原」に関する基礎知識。原作にないこの前

口上は小沢昭一氏が考えたと思うのだが、観る側にとって

は親切な『すぐれもの』の前口上であった。演出もしゃれ

ていて、よくぞ井上ひさしのモノロ−グ小説を芝居にした

ものだ。おそらく作者の井上ひさし氏もまったく別の「唐

来参和」を発見したにちがいない。

 おかしさの中に『安楽死』の問題がかくし味になってい

て、観る者の心にずしんと落ちた。「雑談にっぽん色里誌

」の著者ならではの見事の一語に尽きる芝居を観せていた

だいた。

 永遠の美少年、小沢昭一に乾杯。  長月 60代男性



◎感服。ただもう感服しました。たったひとりでつくる世

界。初めはまさに「寄席」の気分でしたが本題に入るとそ

の芸の本質を見事に発揮して、観客を小沢昭一の世界にひ

きこんでいく。このような芸があるとは、ただもう感服し

ました。戯作の『本質』をつかんでいるからでしょうか?

 早速、井上ひさしの「戯作者銘々伝」を買って、原作を

読んでみました。当然のことながら、そこには活字しかあ

りません。それを見事に、たったひとりで舞台の空間に置

きかえてしまう技というのは、素晴らしいと思います。

 もう一度別の演題で観たいと思います。

               子組030 40代女性



◎大きな屏風のかげから、笑顔の小沢昭一が見えた。

 会場から大きな拍手で始まった「唐来参和」、しんしん

と雪の降る中、老婆姿で終わる。一時間四十分。

観客を一人でひきつけるその芝居にプロのすごさを今更な

がら感じました。唐来参和という人、またその時代の説明

など、知らなかった事柄を粘土材工のようにだんごをこね

ながら、それが結構小道具のいろいろになる。本当に工夫

のあるお芝居に、大満足で帰ることが出来ました。

お世話ありがとうございました。  桜の園 50台女性



◎小沢さんの所作の一つ一つで、紙粘土{?}が徳利やお

ちょこ、はたまたタオルが酒びんに違和感なく見える様に

驚きこれが{芸}というものだんだとしみじみ感じ入りま

した。舞台ではシンプルな背景の方が良いですね。かえっ

て芸達者な役者さんによって、様々な風景、奥行きを感じ

させてくれます。今回運良くいちばん前の席で観ることが

出来ました。残念なことにその辺りの席でも、イビキをか

いて寝ている人がいました。

 小沢さん、こりずにまた来てください。

                  里佳 30代女性



◎「唐来参和」の例会に参加して以前の小沢昭一さんの舞

台を観劇したことがありました。おもわずその世界にひき

まれていく話し語り。導入部で語り部が劇中人物へ、また

最後の劇中人物が語り部へかえる見事さ。落語の世界のよ

うな、目の前に世界がひろがる素晴らしさを感じました。

 小沢昭一さん、有難うございました。

                ティ−タイム 40代



◎ひとり芝居は初めてだったので楽しみにしていましたが、

期待を裏切らない満足感に安心しました。「唐来参和」が

人名だったとは・・・前知識なしだったのが、かえって新

鮮だったかなと思います。ラジオ番組が長く続いていると

か。思い返せば、観客に男性が多くいたっけ。登場の際に

お茶目な表情が心に残るお芝居でした。

               もうすぐ誕生日 30代


◎大分前(2ヶ月位前か・・・)NHKのテレビの画面に、

黒いス−ツをきちんと着た小沢昭一が、「あちらは世界の

小沢、私は横丁の小沢でして」と言ってるのがうつり偶然

見ました。何かの対談でしたけど、ちょっとおかしみを感

じ、そしてとてもいい感じでした。今度、この人のお芝居

をみるのだと・・・という思いで目にしたことでした。た

のしみを有難うございました。       70代女性



◎2ヶ月に一回のこ時間、とても楽しみにしております。

今夜は夏の疲れが残り、きっと眠ってしまうだろうな-と

思い観劇しましたが、おっとドッコイ、最初から最後まで、

眠いどころかパチクリとした眼。さすが名優の小沢さん。

一時間四十分、よくぞ一人でしゃべり、演じ、笑わせ、時

にはジ−ンとこさせ、充分に大満足の夜でした。舞台はき

っちりシ−ン毎に転回され、これはスバラシかった。特に、

ラストシ−ン感動した!美しかった!まさに、イヨッ小沢!

カ−テンコ−ルでの観客へのサ−ヴィス。最後の最後まで

役者に徹していた。本当にお疲れ様でした。

                  長月 50代女性



◎小沢昭一さんが唐来参和を始めるにあたってかんたんに

着替える時に、こっちを指さして「あいつ眠っている、よ

し、起きろ!」て感じの身振りで鈴を出された時には、ド

キッとしてとび起きた。

              果樹100% 10台女性



◎台風の中、今日は受け付け当番の日どうしても出かけな

くてはと思っておりましたところ、台風も高松から離れて

くれまして、ホットいたしましたところ、今度は皆様が来

てくださるかと、少々不安もありましたが、多くの皆様が

出かけてくださり、観劇をこんなに多くの人たちが楽しみ

にしている方たちがいると感心いたしました。

「唐来参和」小沢昭一さんの一人芝居、さすが芸の力に驚

かされました。すばらしい演技力、すっかり舞台に私まで

も引き込んで頂きました。

                シルバ− 50代女性



◎初めて観る一人芝居。期待に乙女(?)のように胸を膨

らませ待っていました。そして今日、本当に役者の芝居を、

舞台を観させてもらいました。満足です。でも、後ろ半分

の空席が悲しかったです。

                      さくら会



◎これまでこのペ−ジへ寄稿したことがありませんでした

が、長月の芝居見蔵さんの感想に触発されて、ついつい筆

をとりました。

 見蔵さんは、「おかしさの中に『安楽死』の問題がかく

し味になっていて観る者の心にずしんと落ちた」と述べら

れています。私もまったく同感です。救いがないことが救

いであるような、寂しく静かな、しかも透明な美しさが心

に残っています。

 苦界まで落とされた妻が、死にかけている夫が最後まで

持っていた思いのこもった櫛を見たとき、苦から救ってや

ろうとして命を絶たせます。

 この妻と同じ場所にいたのが、森鴎外作「高瀬舟」の兄

だと思います。ただ、この兄は遠島の罪を受けることで、

不条理ながら救われたようにも感じますが、この妻は罪か

らも突き放されて、どうにも救いがありません。

 雪の舞い散るなかで、ただひとりの孤独。心の中に染み

入る雪の冷たさのような美しさ、悲しさに心を打たれた最

高の舞台でした。

                   菜の花 40代