香川市民劇場例会感想文集

2003年10月例会俳優座劇場 高き彼物

感想文

◎高き彼物・「清らか」か?

 受付でもらったパンフに「高き彼物」の劇評が掲

載されていた。いずれも高名な方ばかり。曰く、「

さわやかで後味がいい喜劇」。「この作品を一言で

言って『清々しく澄んだ四角い青空』」。「清らか

なもの」云々。

 たしかにこの芝居から私たち人間は「高い志を持

って生きることが大事だ」ということを改めて知っ

たことは間違いない。

 しかし、「清らかさ」「澄んだ」話としては、主

人猪原先生の過去の事件?はーこの芝居の重要な柱

であるーあまりにもいただけない(清らかでない)。

「清らかさ」「さわやかさ」をいうのなら、もっと

適切な挿話で芝居を構成できる筈。私にはこの点が

どうしても納得できなかった。

              長月 70代男性

 

◎ご無沙汰しております。先日、徳島市立文化セン

タ−にて「高き彼物」観せていただきました。どう

もありがとうございました。この公演は、とても楽

しみにしていたものでした。マキノノゾミさんの作

品は、これまでみたことがなかったもので・・・。

それとこのタイトル「高き彼物」って何だろうとず

っと気になっていました。ですが、第二幕の途中あ

たりまで、どうも主人公の猪原に共感できず、かな

り戸惑いました。彼の「discipline,discipline」

という口癖も何かうそっぽいし、教科書さえやって

いれば大学に合格できるというのも、あまりに非現

実的だし・・・。ところが、二幕の後半、彼が自分

の(ふれられたくない)過去を曝け出すあたりから

俄然おもしろくなってきました。曝け出すって勇気

がいることですよね。でもそういう猪原に、私も、

やっと共感できました。最後の最後で、きちんと観

客を引き込ませて納得させてくれる、それがマキノ

ノゾミさんなのかもしれませんね。    女性



◎「高き彼物」は舞台上の人物の求めた心の山頂で

あろうが、そして又、吉野の歌でもあろうが、この

芝居そのものが「高き彼物」であると帰りの途でく

り返してつぶやいた。高橋は至芸であるが、藤本や

歌川は舞台にある俳優というより日常の人物そのも

のに見えて、この人は今演技をしているのか、現実

の娘であり教師なのか、とわれとわが目を疑った位

である。何より脚本が今の町や村にありそうな話を

描いている。現に私の娘の友人はバイクのツーリン

グで命をおとしたし、また別の友人は相乗りで重傷

を負った。そのとき、誰がハンドルを握り、誰が肉

体と心を傷つけたか、そういう高校生と、元高校教

師の出会い。私も教師ですごしたので、高橋の「傷

」の実態には意見はあるが作者がねらう「人間」の

裸像は率直にうけとり、ごまかさない清冽さの連続

は現代への警鐘である。私は何度か落涙した。笑い

ながら慟哭。これはほとんどモ−ツアルトの世界。

勿論、細かくいえば注文はある。ミス・キャストに

も触れたい。しかし、それを記すと全体が狂うので、

ここでは抑制しよう。とくに印象深いのはセット。

奥の石垣、ひまわり、洗濯物、部屋の時計、一幕で

は午後二時からのリアル・タイム、二幕では故障し

て止まっている。アイロンがけでは湯気が立ち上が

る。努力の字の色紙、いずれも無駄がない。この部

屋と廊下、机、階段、過ぎ行く時間、誰もいない空

間。それこそ「高き彼物」であった。

         バ−コット 70代以上男性



◎「高き彼物」は、東京で観ようと思って観れなか ったお芝居で、高松で観れて最高です。歌川椎子さ んは「OUT」など、数々の作品で拝見して大ファ ンなのですが、今回の野村先生は、とにかく圧倒さ れました。お名前は「ウタガワシイコ」とお読みす るのですね。初めて気づきました。藤本喜久子さん は、以前舞台で拝見した時、ボ−としていながら、 みんなの動きが止まった時ふと意外なことを言う役 をされていて、はまり役だと思っていたのですが、 今回は、知的でしっかりした女性の役が素敵で、新 たな面を発見しました。  そして何と言っても、高橋長英さん。終った時は、 いっぱい感想を書こうと思っていたのに、今は「か っこいい」以外言葉がうまく出てきません。その他 にもたくさんのすばらしい役者さんたちに出会えた お芝居でした。     ひばり 40代女性 ◎先日「高き彼物」を市民劇場でゆっくりお芝居を 見て、久しぶりに心から感動することが出来て、帰 りは心ほくほくと満足して帰ってきました。役柄が 全員適役でよかったと思いました。  見る前はスト−リ−がわからなかったので、どん な作品だろうかと一抹の不安がありましたけれど、 最後まで先生を退職した理由がわからず、なぜなぜ 止めたのだろうと気を引くところとおしまいに自分 が力を入れた生徒が立派な社会人になっているのを 見てよかった。            名無しとしとともに聴力がおちていると思い、こんなお 芝居もう来られないかなと淋しかったです。   とにかく  音が低いのか(と自分をなぐさめつつ)   とにかく  聞きとりにくかった。   とにかく  となりに人が大笑いしている 意味が理解できず。   とにかく  もっとよく聞こえるお芝居を 見せてほしい。    岩ちゃん 60代女性 ◎見上げるような苔の石垣、裏口に涼風が吹きぬけ る雑貨屋。座敷の端で扇風機が首を振り、何宗であ ろうか仏壇はキチンと飾られている。ここで役者さ ん達は、歌人吉野秀雄が「志す高き彼物」をどんな 形で観せるのか。私は最良席「お20」で脳の五官 を働かせ続けた。今回は事務局も惑わされていたの か、ブル−パンフのテ−マは、見出しを含め全て「 高きかのもの」として流しており少々嫌気が漂う中、 そこは高橋長英さん演ずる猪原先生、小田島雄志劇 評家が言う、お金のためでなく本当に大事なもの即 ち「高き彼物」のために生きようとする道を、自悔 の念に満ちた熱弁で諭す姿に心を打たれ、気を取り 直した。「高きかのもの」は「清らかなもの」であ る。15年間、心の事件として封印してきた手淫汚 職を恥じらい職を捨てたくだりは、正に作者のマキ ノノゾミがどうしても「清らかなもの」としてとら えたかった彼物に違いない。            さおり 70代以上男性