香川市民劇場例会感想文集

2004年2月例会文学座公演 缶詰

感想文

◎缶詰は作家の執筆を急がせるために出版社が本人

をホテルに閉じ込めることにしばしば使うことばで

あるが、これは経営者が難関を突破するための鳩首

会談であり、私には新鮮だった。

これは芸達者な文学座の人たちが経営者変じてシナ

リオ作りの缶詰となり、悲哀が笑いを呼ぶ芝居とな

った。それにしても「悲哀」は男の生きざまにあり、

女性にはない(女性は悲しみ一辺倒の形)という日

本の姿を私は考えました。これはいわゆる「新劇」

らしい演出の「笑いの部」であり、至芸という場面

も多かったが、現在の若者にはどう映るかを私は知

りたい。      バ−コット 70代男性

 

◎「缶詰」、良かったですねえ。何と言っても角野

卓造さんが。角野さんはTVドラマ等でよく脇役を

演じておられますが主役としてもパリッと光ってお

りましたね。

 ことにあの眼!5列目から見ているとあまりにも

生き生きしていて圧倒されそうになりましたよ。観

劇中、鼻をほじっていてうっかり舞台上の角野さん

と眼が合いかけ、「コラ!マジメに芝居を見ろ!」

と怒られるのではないかと思いました。

 それにしても、社長・専務・常務のパンパカトリ

オはサラリ−マンじゃなくてしゃべり漫才をやって

た方が幸せだったかもしれません。あんなに息の合

ったトリオはそうやたらといるもんじゃありません

よ。

 あ−、それから「まくあい」に「困難、日露戦争

」とありましたが、私は「国難、日露戦争」とハガ

キに書いていたはずです。やはり字が汚かったので

しょうか?

次も大いに期待しております。

            ちきり 30代男性



◎華のある役者さんというのは、観客を大切にする

役者さんだということが今回の「缶詰」の角野卓造

を見てよく分かった。暖房をしてあるとは言え、こ

の寒さの中、ランニングとトランクス一つで、がん

ばり、最後のお別れの挨拶の時も幕が降りきるまで

手を振って下さった・・・見る方にとっては、感謝

したいような役者さんである。作者の水谷龍二さん

は、去年、風間杜夫のひとり芝居三部作のカラオケ

マンで見た。サラリ−マンの悲哀を、この作品でも

面白く、しかも、じっくりと見せてくれている。

 夢かも知れないが、もし、香川市民劇場で、風間

杜夫を見せていただけたら、すばらしいなあ!

            菜の花 60代女性



◎はたして新劇か−社会性の欠如−

 芝居の脚本(作品)は必ずその時代を投影するも

のだ。言ってみれば社会の鏡の役目をしているとい

える。それは、作家が意識するとしないにかかわら

ず紛れもなくその時代に生きて作品を生み出してい

るからだ。

 こうした尺度で、今回の「缶詰」を見てみると、

まったくと言ってよいほど、時代の背景や社会性が

見えてこない。

 製靴会社でなぜ引退勧告が出されたのか。経営が

行きづまったのか、だとすれば何故なのか、社内の

勢力争い等はそうした延長線上の問題なのではない

か等々。

 私は何も会社の経営分析をしろとなど言っている

のではない。芝居を立体化させる範囲内でそうした

背景が語られないものかと言っているのである。で

ないと浅はかなものになってしまう。喜劇だからと

てこの観点がしっかりしていなければ駄目だと思う。

 今回の「缶詰」は、俳優のうまさと演出の妙と竹

久夢二の話に支えられ、何とか芝居の格好がついた

と思っている。大変酷な言い方だが、新劇誕生の原

点を忘れぬ芝居づくりを私は望みたいと思う。

             長月 70代男性



◎角野卓造さんにはセリフ即ち決まりきった言葉は

要らない。これが卓造さんの真骨頂だからである。

 心配性に徹する橋田素賀子の「渡る世間・・・」

に対し今回の缶詰では正反対の開放型社長を演じ、

十人のキャストが息を狂わすことなく、ツボどころ

でアドリブをはめドンチャン騒ぎも結構芝居になる

ものだと感心した。布団の投げ合いもその一つ。舞

い上がる綿埃は見えなかったが、前列席でなくてよ

かったと休心しながら三人の仕草に微笑を通した。

 わけの分からぬ団塊世代の経営陣に愛想をつかせ

る一方、この缶詰劇を引き立てたのは美人の女将役

の塩田朋子さん、所作、容姿、何れをとっても女将

として一級品だった。

 喜劇は喜劇で終わらないのがこの喜劇。喜劇には

教訓がある。団塊世代の諸君!逆境に克て!

            さおり 70代男性




◎久しぶりに例会に参加し、楽しみました。

 開幕前の場内のざわめきも、また幕が上がってか

ら一斉に拍手が起こるのも、やはりいいものだと思

いました。

 例会作品の「缶詰」も面白くてよく笑わせてもら

いました。なぜあの三人が缶詰になっているのかは、

ケンケンガクガクの三人の会話?の中から少しずつ

わかって来る。しかし、社長が退陣に追い込まれた

原因がなんだったのか、そこがわかりにくかったの

ですが、底上げ靴の話がほんの一瞬出て来たので、

もしかしたら、そのことも一つの原因だったのかも

と思われたりしました。「底上げ靴」、そう云えば、

あれがいっときはやりましたね。

 退陣を迫られている社長に同調して、ここまでつ

いて来たけれども、必ずしも運命共同体ではない二

人なんだ。ということもわかって来る。罵声が飛び

交い大立ち回りまでいくのだけれど、あとは仲よく、

三人そろって歌なんかうたって(これもよかったで

す)、この三人ならまた何かを生み出すだろうとい

う予感を感じました。角野さんは「息子ですこんに

ちは」以来ですね。あれも楽しい作品でした。

             松風 60代女性



◎「缶詰」、とてもおもしろかったです。何か打開

策を、と思っているうちに、どんどん展開が悪い方

に転がっていくところは、前回の「その場しのぎの

男たち」にも通じるものだと思います。でも、サラ

リ−マンの悲哀ですよね。ありきたりな表現ですけ

れど。きっとあの三人も一生懸命に生きてきたんだ

と思います。もちろん結果的に方向性や方法は、誤

っていた部分もあるかもしれないけれど。仕事も失

い、家庭も失って、それで人生が終わってしまうの

は、あまりにも悲しい。だから、あの人たちにも誇

りを持って生きていってほしいと思いました。喜劇

であるはずのこの舞台の幕切れで、客席からすすり

泣く声が聞こえました。皆さん、そんな気持ちでこ

の舞台をみたのではないでしょうか。

             公子 40代女性



◎文学座版社長シリ−ズだそうで中年男たちの絶妙

な掛け合いに時のたつのを忘れてしまいました。

 たまたま社長になれた同期のサラリ−マン達の悲

哀を、余すところ無く映し出した話に思わずしんみ

りしてしましました。

 社長派が巻き返しを図るのに、温泉宿に立てこも

って作戦を練るなんて、すばらしい設定ではないで

しょうか。それが映画の撮影に発展するとは脚本の

発想がなんと豊かなんでしょうか。

 それにしても男性の血の気多いのには驚かされま

すね。あの布団の投げ合いの無邪気さと負けず嫌い

の真剣さにはお腹を抱えて笑いながら、ふと修学旅

行を思い出しました。

 角野さんはじめ俳優さんが、あの動きの激しさの

中でも次の台詞が息切れもせず出てくるなんて、い

かに身体を鍛えておられるのかと感心しました。

 幕間も無く、場面転換がすばやく継ぎ目が無いの

で実に楽しく、劇中の歌までサ−ビスしてもらって、

最後の場面などしんみりとするばかりでした。まこ

とに上質のドタバタを有り難うと感謝しながら帰途

についたものでした。

            みえこ 60代女性



◎大の男が三人本気でふとんを振り回したたきあっ

て汗だくの演技に大爆笑。角野さんはギタ−や歌も

お上手で三人での歌も聞きほれました。茶めっ気の

ある表情仕草に本当に演劇を愛していらっしゃるの

だろうと思いました。  福寿草 50代女性



◎一言でいえば、「大変よかった」。

 この作品は、三名の青年時代P・P・Mのグル−

プを結論にして、劇化されたように思えました。青

年時代の「七つの水仙」を歌った三人が、しだいに

社会のシステムの中で「缶詰」にされていく、にっ

ちもさっちもいかなくなり、その挙句のドタバタ。

 この「缶詰」のもつ悲哀、そしてドタバタの中で

の喜劇、人間の喜怒哀楽が全て缶詰にされているよ

うにも思える。

 それから言えば三つの「缶詰」かも・・・。

             どしゃぶり 男性