感想文
◎「戯曲と小説」
戯曲になると小説とは随分違うと思いながら芝居
を見た。芝居では小説とはまた違って生身の人間が
直ぐそこで動く。具体的で臨場感にあふれている。
小説では「なんでもあげる。うちのものなんでもあ
げる」といった。すると慈念は躯ごと力を入れて、
里子を押し倒した。格子戸の外に風が出て、庭木の
葉ずれがはげしく鳴った。
というくだりが戯曲(芝居)では、
里子 うちの躯をあんたにあげるわ。あんた。
あての躯と好きなようにおし。あてがあんた
にあげられるもんは・・・なーんもあらへん
・・・あての躯をすきなようにして・・・・
ぬくもりおし・・・。
(帯をといて、胸をひらき、慈念をかき抱く。慈念
突如として、里子にだきついてゆく)
闇ー−−−。
と、きわめてリアリズムで生臭い。
水上勉の小僧時代の経験や見聞が土台になってい
る。実話ではないにしろよくぞまあ禅宗の伽藍生活
をしっかりと書いたものだ。
慈念の出自からくる心に秘められた希求は「餌をふ
くませている母親雁の心」なのであろう。
それにしても慈念が哀れである。
嵐広也は慈念を懸命に演じた。しかし、慈念と年齢
が余りにもかけ離れすぎている、体形も。無理があ
る。慈念はやはり15,6才の小坊主に見えねばな
らぬ。高橋惠子の里子は、「ぞくっ」とするほど美
しかった。見事に里子を演じて見せた。
長月 男性
◎まず高橋惠子さんの妖艶な美しさに圧倒されまし
た。
そして、約3時間、情緒ある中にもスピ−ディ−
な展開に退屈せず見ることが出来ました。
金内喜久夫氏の達者な演技は定評のあるところで
慈念を演じた嵐広也くんは、名門嵐芳三郎氏のご次
男という血筋の良さを除いても大変な熱演であった
と思う。端正な美貌の持ち主である。今後に、大い
に期待したい。 菜の花 女性
◎ドキッとしました。里子が庭先で足袋を脱ぎ捨て
素足の美しさを惜しげもなく慈念の眼前にさらけ出
した場面を見てでした。昭和10年前後では女性が
男性の目の前でこのような仕草を見せることは殆ど
無かったのではないかと考えたからです。今の時代
電車の中ででも脚をおっぴろげて下着まで見えるよ
うな座り方をしている高校生から妙齢の女性を見慣
れた者としては隔世の感を覚えました。
全体にその昔のエロチシズムが溢れていて、しか
し、いやらしくなく上品な流れで当時の社会?男女
のあり方を彷彿とさせると感じました。
慈海を殺したのは、里子への愛情からでしょうか
?それとも自身への虐待に耐えかねてでしょうか?
いろんな解釈を与えてくれた結末に楽しさを見出す
ことが出来ました。
それにしても本音と建前の社会は、政治だけでは
なく宗教の世界(しかも禅宗の)にまで蔓延してい
たのかと考えるときいささか寂しさを禁じえません。
男性
◎今回初めての参加で「雁の寺」を観て感激してい
ます。観劇後、家に着いたのは10時50分で、そ
れから一通りの家事を済ませて眠ったのが、いつも
より大分遅くなりました。明日の仕事大丈夫かな!
という心配も、翌朝のスッキリとした目覚めで吹き
飛んでしまいました。その日一日、頭も体も軽く、
楽しく仕事が出来たのも例会のお陰だと思います。
今後も、気分をリフレッシュして仕事へのエネルギ
−にしたいと思います。本当に「感謝!」です。
グレ−プフル−ツ 女性
◎今日6月2日の演劇は大変面白かった。若狭の地
形上、昔から貧しい地域で人々が苦しんでいた事が
よく解った。特にしわ寄せが女の上にかかって来る
ことも理解できる。高橋惠子さんの動作がうまかっ
た。さすが大女優さんだと思った。若坊さんに扮し
た慈念さんもうまい方だと思った。地方では度々見
ることは出来ないけれど続く間は観覧したいと思い
ます。お世話をしてくださる方々のご苦労に感謝し
ながら一筆感想をお知らせいたします。
水上勉作の「雁の寺」はずっと前に読んでいたの
に忘れていたのを思い出しとてもよかった。
20年会 女性
|
◎この芝居は映画化されたのを見たことがあった。
芝居の方は映画より数段まとまりが良かった。この
芝居は三つの層から成る芝居だと思った。
@青年(少年)僧の母を慕う芝居
A青年僧の老僧侶への憎悪(虐待)に対する反発、
そしてそれに対する殺人
Bそれを完全殺人たらしめた松本清張的解決
いずれの主題も興味があり過不足なく表現されてい
たとは思うが、最近の事件、佐世保の小学校の事件
を考えるとき、Aの青年僧(若しくは)少年僧の鬱
屈した気分を良く表現したものと見た。
Q
◎これはさすがに重たい作品であり、氏族社会、部
族社会、あるいは祭政一致の社会の人間の悲劇、上
下の亀裂を深く考えさせた。高橋がいなければこの
芝居は成立しないほどの適役。しかし、嵐も金内も
高橋に次いで適役、しかも好演であった。陰鬱な風
景における悲惨な美と愛の刻印は確かであるが、個
人の自立と人権をうたう今日の社会の若者にはどう
見えるであろうか。原作の暗示する母子像(裏返し
て父子像)を現代の青年はどう受けとるのか、聞い
てみたいと思った。
舞台については群像のシ−ンはもっと自然な日常
感があれば一層よかったと思うし、場面転換の頻度
が多すぎて、客席のわれわれの感情移入を途切れさ
せ没入の妨げとなったのは残念である。水上文学は
「文学」であって、その原作を超えての芝居として
の完成度を果たすのは容易ではない。
バ−コット 女性
◎最初に雁の寺を魅き付けたのは舞台と装置。
「本来無一物」の掛け軸は正に作者水上勉さんの出
発点であり、この芝居の原点と想えてくる。
舞台は回って、背高でもの申しそうな釈尊像が暗
闇から現れる。それは住職、慈海と襖絵の雁一家に
何かを諭しているように見えた。
次に注目したのは、寺に入り込んできた元祇園芸
者里子役の高橋惠子さん。テレビではたまにしか視
ることはないが、この小舞台を大々的に弾ませる魔
力がこの人にはある。老住職を巧みに操る色気、孤
独の共感から嵐広也さんの慈念へのほとばしりでる
母性本能と欲情を交差させながら、実に歯切れよい
口調で語りかける姿に、これぞ名優と思わせるに充
分な夜だった。 さおり 男性
◎金内喜久夫さん演ずる慈海和尚、良かったですね
え。僕が原作を読んで抱いたイメ−ジ通りの存在が
舞台に出現しています。坊さんという聖職者として
の面と一匹の雄としての面が混合している慈海とい
う人物が単なる悪者じゃない!と金内さんが実に上
手く演じていました。もうちょい太っていれば最高
でしたね。
それにしてもまあ、慈海和尚の食通なこと!なん
か・・・池波正太郎の小説みたい・・・。
ただまあ不満をあえて言うならば、昭和8年の好
色僧侶が「軍国主義」なんていう単語を口にすると
はとても想えません。もっと俗っぽくてHくさい表
現で軍国主義に相当することを言わせて欲しかった
ですねえ。
そうそう忘れていました。高橋惠子さんは美しか
ったですなあ。仕草も一つ一つ実になまめかしかっ
たし。14才の少年にとっては刺激が強すぎますよ。
慈念は毎晩何度もオナニ−していたのでは・・・と
妄想してしまいます。
ちきり 男性
2003年度「四国市民劇場賞」贈呈式
「まくあい」355号でお知らせしたように、03
年度の四国市民劇場賞は「はだしのゲン」に決まり
ました。その贈呈式が、5月23日(日)に東京の
俳優座劇場で行われました。
ミュ−ジカル「港町ちぎれ雲」の熱気冷めやらぬ中、
終演後、四国からの参加者と「はだしのゲン」の役
者・スタッフが劇場の客席で再開し、なごやかな雰
囲気の中で贈呈式が行われました。
表彰状と副賞が、主宰の木山さんと主演の田中実
幸さんにそれぞれ贈られました。副賞は、ゲンと新
次が原爆ド−ムを背景に麦畑の中を元気に走る姿を、
徳島の藍染めで描いたすてきなタペストリ−で、劇
団のみなさんからも「美しい」と感激の声が上がり
ました。会員のみなさまにお見せできないのが残念
です。贈呈式には、香川から三宅と崎山が参加しお
祝いしました。 事務局
|