香川市民劇場例会感想文集

2005年6月例会 幹の会+リリック 「冬物語」

感想文

◎シェイクスピアもびっくりの演出

王の嫉妬を軸に物語りは展開する。話の筋も単純明

快。

 考えてみるとこの芝居は、シェイクスピア晩年の

作というから、16世紀の終わり、日本でいえば豊

臣秀吉の時代の作品ということになる。

 この頃これほどのスケ−ルとスト−リ−性を持っ

た芝居は日本にはなかった。シェイクスピアに遅れ

ること100年で日本ではやっと近松門左衛門によ

って歌舞伎芝居が誕生する。その意味でいえばスト

−リ−が単純なのは当然だといえる。当時の芝居を

観る人たちのニ−ズの程度に相応するのだから・・

・。

 それにしてもお芝居の後半は随分と自由奔放に演

出していたものだ。

 意表を突く背高のっぽの「時」(平幹二朗二役)。

ごろつき、道化の演歌調にアレンジした歌。前田美

波里のハ−マイオニの彫像(石像が生身の人間にな

る)奇抜さなど結構楽しく見ることができた。

 しかし私にはこの演出は、シェイクスピアの原作

の持つム−ドからはかなりぶれていると思った。も

う一つ私は芝居(新劇)にはややり社会性がなけれ

ばと思う。心にストンと落ちるもの、これが欲しい

と思う。

 幕が下りて、会場入口に向かう私の後ろから来る

ご婦人たちが、「よかったのお」「歌あり踊りあり

でおもっしょかったのお」というのを聞いて「こん

なお芝居もあってもいいか」と思ったことであった。

           長月 70代以上男性

  

◎いや〜、カッコイイな、平幹二朗は。いや〜、ユ

カイだな、オ−トリカスは。まあ、平幹二朗大先生

は当然のことながら、松橋登さん演ずるゴロツキ(

英語では何ていうんですか?)のオ−トリカス魅力

大爆発。「ロミオとジュリエット」のマキュ−シオ

みたいなもんですな。ジュリエットの乳母といって

もいいかな。ただ違うのは、マキュ−シオが死ぬと

「ロミジュリ」はどこどこ暗くなるのに、「冬物語

」だとオ−トリカスが出て来るまでは平「リオンデ

ィ−ズ」幹二朗様が陰惨にしていたスト−リ−をこ

の愛すべきゴロツキ君がパア−ッと明るくしてくれ

る。脇役ですけどすごく大切ですね。「水戸黄門」

でいうなら、うっかり八兵衛かなあ。

 ところで、パ−ディタがボヘミアの海岸に捨てら

れるってすごく変ですよね。ボヘミアと言うと、今

のオ−ストラリアの辺りで内陸国ですから。でも、

これってシェイクスピアが狙ってわざとやったらし

いです。何でも、「冬物語」上演期にイングランド

の女王様がボヘミア地方の王族かなんかと結婚した

らしい。いっか、そんなこと。楽しければいいのだ

よ。「ハムレット」とは違うのだよ、「ハムレット

」とは!        ちきり 30代男性



◎仲の良いボヘミア王と妻への嫉妬、シチリア王は

怒り狂う。人間、一度憎しと思い込んだら中々元に

戻るものではない。この厄介なやきもち焼きは高じ

てウツとなり妻は勿論、出生した娘まで亡きものへ

と事を運ぶ。

 シェイクスピアはこれを季節的に冬とみなし、1

6年の歳月を経て悟るも、「冬来たりなば春遠から

じ」との考え方に帰一、生存していた妻子に詫び、

ボヘミア王子と娘の恋愛を成就させるくだりなど、

このロマンス劇を「冬物語」としたところが彼の終

期時代に似しいと思った。

 演出家であり役者として中心はシチリア王の平幹

二朗さん、よく透る声、毅然として説得力のある長

いセリフに酔った、感動感の舞台だった。二年半前

の例会でジョセフィン役の前田美波里さんを初めと

する全員の唄って踊る姿に、豊春を覚える許りの夜

だった。      さおり 70代以上男性



◎見応えのある舞台でしたねぇ!平幹二朗さんの声、

前田美波里さんの美しさ、もうただただ声に酔いし

れ、スタイルの良さに目は釘付けでした。それに盛

り沢山の演出。

 開演まで人形とばかりおもっていた方、あの姿で

じっと何十分おられたのでしょうか。又ハ−マイオ

ニの美波里さんも長い間まばたきいとつせず同じ姿

を保って、プロとは何かを思い知らされました。

 思えばリチャ−ド三世を見て入会、リア王、そし

て今度の冬物語と幹の会+リリックの好演は日常か

ら別世界へと誘ってくれ、次は何を見せてくれるの

か、今から楽しみです。

         リフレッシュ 50代女性



◎今日のお芝居を楽しみに30分程前に席に付く・

・・舞台の袖に人が?えっ人形なんだ、舞台装置も

スッキリしていて、等思いながら始まりを待った。

その時あの身じろぎもしなかった人形?が跳ね舞っ

た。うわぁこんな企画もあったんだと、人形さんご

苦労さん・・・。とにかく前田美波里さんの美しか

ったこと。臨月の体を美しいシルエットのドレスで

表現、素敵でした。フロリゼル王子のウエストの露

出したオヘソが格好良かった・・・ごろつきさんの

演歌も楽しかった。

 嫉妬心。王様もあんなきれいな妃が外国の王にあ

のようにサ−ビスすると無理からぬこと。何ごとも

ほどほどに。後半の妃の像まるでマリアの像の様で

した。楽しませて戴きました。係りの皆様にお礼申

し上げます。   スカラペ 70代以上女性



◎シェイクスピアの戯曲はセリフが多いというのが

特徴ですね。しかも、日常会話にはない言葉が長々

と続きます。その長いセリフをとうとうと語る平幹

二朗さんのエネルギ−はすごいと思いました。

 嫉妬に怒り狂うさま、また幼児のように悲しむさ

まなど、シェイクスピア劇独特のものを感じます。

シェイクスピア劇のもう一つの特徴は、人間の愚か

さについて描いていることだと思います。人間の赤

裸々な感情をえぐり出して見せる。これも魅力を感

じる一つだと思います。

 ところで平幹二朗さんがステ−ジから語りかけた

冬物語のこの劇のメッセ−ジは何だろうかと考えま

した。人間は本来愚かな者だ、けれども、その事に

気付き、悔い改めることが出来るなら、彼の罪は許

されるのではないだろうか・・・ということでした。

 幹の会とリリックはいつも大サ−ビスをして下さ

るのですが今回はミュ−ジカル風の場面が時々あっ

て、これもすばらしかったです。やっぱり”シェイ

クスピア”はいいなと思いました。

           松風 70代以上女性




◎相手を傷つけるだけでなく、自分自身をも滅ぼし

てしまう猜疑心の恐ろしさ、真実が見えなくなって

しまう怖さを平幹二朗さん演ずるシチリア王を通し

て描いて見せた第一幕・・・言葉の豊かさがやっぱ

りシェイクスピアだなあと感じました。

 うってかわって道化が登場する第二幕はちょっと

ドタバタ風。昔は、シェイクスピアのお芝居って何

だか難しそう、と思い込んでいましたが、本当はち

ょっと猥雑なところもあって、とてもサ−ビス精神

旺盛なんですよね。その意味でも、やっぱりシェイ

クスピアらしいお芝居でした。

 前田美波里さんの花ある美しさ、気品は、ハ−マ

イオニという后のイメ−ジにぴったり。声もとても

素敵でしたが、彼女のもう一つの魅力を観客に堪能

させようということか、村のお祭りでの官能的なダ

ンスをする女としても登場しました。観客としては、

何だか得をした気分ではありましたが、スト−リ−

の中でちょっとちぐはぐな感じも・・・。たとえば

ハ−マイオニの心の中の葛藤をダンスで表現・・・

といったような形で彼女のダンスの魅力をお芝居に

取り入れることは出来ないのかな・・・などと生意

気な感想を持ちました。

 シチリア王に「何でそんなことがわからないの!

?」と歯がゆく思いながら、実は人間は誰でもこん

な風に真実が見えなくなってしまう弱さと心の闇を

持っているのだろうなあ、と思いました。だから、

なぜだか生きていたハ−マイオニに、そんな弱い人

間にも救いはあるのかもしれない、とほっとしまし

た。       果汁100% 50代女性



◎男の人って嫉妬深い?

このお芝居の原作は読んだことがありませんが、実

に楽しいお芝居でした。「オセロ」同様男の人がこ

れほど嫉妬深いとは思いませんでした。

 人々の口の端に上る男の辛さは、イヤというほど

聞かされてきましたが、愛情の深さの裏返しの嫉妬

についてはこれほど深いものだとははじめて知りま

した。仕事上の嫉妬についてはかなり聞かされてき

ましたが、女性の天性の美しさ優しさに対して猜疑

心の塊のような男性が、この世に大勢いらっしゃる

と考えるとなにやら楽しくなってきませんか?うち

のダンツクもこのように苦しんでくれるでしょうか。

男も女も愛情の深さについては同列なのでしょうね。

 それにしても簡素な舞台装置で、場面転換の速さ、

人々の動きの機敏さ、時の経つのを忘れさせてくだ

さいました。出だしの人形が人間に代わるところか

ら、幕を経て16年経て成人した赤子が美しい娘さ

んに成り代わるところまで、アットいう間の展開手

法も見事でした。

 祭りのダンスの楽しさ、特に深沢さんの見事な歌

唱には耳を疑うばかりの楽しさでした。それにして

も美波里さんの姿態の見事さ、日々の鍛錬の賜物で

しょうか私も斯くありたいものだと考えながら、う

っとりと見とれてしまいました。

 この洪水のように吐き出される見事な言葉の連続

にはさすがシェイクスピアだと感心しながら聞きま

した。二階の端まで良く通る発声と共に役者さんは

台詞を簡単に覚えられるのかなと変なところで感心

です。原作が良く、演出が良くて役者が揃えばこん

な楽しくすばらしい舞台になるという見本のようで

した。         レイコ 60代女性



◎いきなり異世界が目の前に繰り広げられ、前半は

少しとまどったけれど、後半になると、その世界の

片隅に私もいて、王がわが娘と知らずに会った時、

思わず「ハッ」と何かを感じた時、なぜか目頭が熱

くなりました。

 見てよかったと思ったのは前田美波里さんの美し

い肢体。日々ボケ−と生きていたのでは、あの肢体

は保てないだろうとつくづく感心いたしました。

            すみれ 40代女性



◎なかなかドラマチックでいい芝居でした。平さん、

前田さん、一流といわれる人達はやはり説得力があ

ります。前回の「煙が目にしみる」もとても面白か

ったし、市民劇場は最近ヒットに次ぐヒットですね。

ささやかな年金暮らしの身に例会は数少ない楽しみ

の場です。

ますますの御発展を祈っております。

         ギャ−トルズ 60代女性



◎暗い舞台、長い台詞、あっシェイクスピアだ、そ

うだ嫉妬に狂ったオセロだと思った。

 拡張の高さはあるけれど少し古すぎるのでは。で

も観客の気持ちは分かっていてくれた。16年後は

ステ−ジが明るく軽やかになってきた。それぞれの

演技がすごいし、歌も楽しかった。幹二朗さんの演

技の確かさ、美波里さんのきびきびした動きの美し

さ、こんな演劇なら沢山見たいと筆不精な私がペン

をとりました。     馬酔木 60代女性



◎香川市民劇場に入って2年半になるが所謂翻訳古

典演劇を見たのは初めてである。

 歌のようなセリフまわし、踊るような身のこなし、

スピ−ドのある展開・・・いずれも芝居心を堪能さ

せてくれた。

 前半の重苦しい流れから後半の軽やかな発展そし

て意外性を持つハッピ−エンドとお芝居の楽しみの

フルコ−スでした。

 シチリア王と王妃を演じた主役のお二人の演技美

しさは勿論のことボヘミア王子を演じた若手俳優の

健康的魅力に注目したい。菜の花 60代女性



◎時々台詞の聞き取りにくい所もありましたが美波

里さんのスタイルの美しさに感嘆し、平さんの機敏

な動き、深沢さんのすばらしい美声に感動しました。

日頃からの努力と精進を重ねておられるのでしょう

ね。

 ところが、観る方の私たちはどうでしょう、フィ

ナ−レで俳優さん達が、にこやかに手を振っておら

れる最中、次々に席を立ち、帰ろうとしているので

す。本当に恥ずかしく申し訳ない気持ちで一杯にな

りました。

 皆さん、観劇する時は、それなりのマナ−を守り

ましょう、大人なんですから!

           イソトマ 50代女性



◎「冬物語」上演で、よい点は平の熟達した演技と

名口調、前田の清純性と舞姫ぶりです。気になった

点は前半の暗く、オペラ・セリア風の短調と後半の

オペラ・ブッファ風の長調への転換への舞台転換が、

私には自然性が感じられず、これはシェイクスピア

原作の問題であるか、あるいは演出のせいか、また

は演技者にあるのか、私は判断しかねました。いず

れにせよ、正反合がうまくかねあっていないと思わ

れました。それはそれ、シェクスピアは人間の猜疑

心、嫉妬心を描く名人です。

        バ−コット 70代以上男性