香川市民劇場例会感想文集

2005年9月例会 文学座公演 赤い月
感想文
◎「赤い月」は激しくて、めまぐるしい芝居で、氷
室たちの熱演、舞台転換の工夫など、みるべきもの
が多く、その努力は大いに買いたいが、原作とその
背景の奥行きからすると、舞台の完成度に私は疑問
をもつ。マ−ラ−の音楽がこの芝居のエスプリに合
致しないわけではないけれども、マ−ラ−に一定の
イメ−ジを持つ私などのような愛好家にはどうも同
意できないものがあって、残念至極。
 果敢な取り組みには敬意を表したいし、資源小国
の日本が「ふつうの道」を歩めば、虚妄の「満州国
」にいたるという方程式を教えた点はもっと評価す
べきであろう。「ふつうの国に非ざる」第九条の存
在とその重みを深く考えさせるものがあった。
        バ−コット 70代以上男性
  
◎オペラも良いが「赤い月」を見よ!
幕が下りる。私の周りの人たちがそっと目がしらを
ふいた。満州や朝鮮からの引き揚げの話は、これま
でたくさん聞いてきた。しかし、目の前の舞台で生
身の人間が演じると、えも言われぬリアリティと迫
力がある。
 なかにし礼の実体験にもとづいたこの作品は実に
見事である。スピ−ディな展開、起伏のアルスト−
リ−、なかにし礼ならではの音楽も良い。加えて鵜
山仁の演出が作品をより厚みのあるものに仕上げて
いる。あっという間の三時間であった。
「これが戦争の現実なのだ」
 敗戦直後の日本中の人びとが「もう二度と戦争は
してはならぬ」「戦争はごめん」と心に誓った筈だ。
この原点を忘れてはならぬ。
 総選挙が先日終わった。とたんライオン党がさっ
そく「憲法改正」を口にした。9月14日には国会
内に「憲法常任委員会」をつくって、「憲法改正の
論議を始めよう」と言い出した。2年後(2007
年)の改正ゴ−ルに向かってライオン丸が速度を速
めている。
 本命は「九条の改正」。「戦争をしない国」から
「戦争ができる国」へ。ライオン艦長が立髪を逆立
てて、「おも舵いっぱい」と吼えまくる。
 戦争を知らないライオン丸船長よ、オペラも良い
が「赤い月」を見よ! 長月740代以上男性

◎「赤い月」はなかなかの作品でした。一部史実に
反した点はあるものの、「お芝居」としては許容の
範囲内でした。
 最大の魅力はスピ−ディ−さと濃密さでした。三
時間近く観ていてワクワク(?)しました。優れた
エンタ−テイメントであり、メッセ−ジ性はさほど
ないと思います。テ−マは「反戦」なんぞでなく、
「ある女性の半生、あるいは極限状下でのラブロマ
ンス」でしょう。
 いやあ、それにしても赤軍兵士が「いかにも」な
感じでしたね。女性を次々にレイプするソ連兵。
「それでこそ赤軍だ!」と納得しました。どうせな
ら、彼らの略奪シ−ンも入れてほしかったなあ。赤
軍では兵のガス抜きのために略奪を認めていました
からね。
 日本兵もいかにも日本兵らしい。「軍事的には正
しいが、道徳的には間違っている」というやつでん
な。          ちきり 30代男性

◎舞台は冒頭から気がめいる重たい雰囲気に包まれ、
いきなり戦争の本質を突きつけられた思いがしまし
た。けれど実際はもっと重苦しかっただろうと思う
と言葉になりません。
 演劇に現実を忘れさせる楽しさを求めたいと願う
反面、忘れてはいけない過去や現実を演劇を通じて
感じることも重要だと思います。「赤い月」に取り
組まれた文学座の皆さんに敬意を表します。
 今回、演者・演出ともに申し分ありませんでした。
特に平淑恵さんはテレビでもお馴染みですが、彼女
は舞台のほうがより輝いていて素晴らしいです。よ
く通る自然な声と、小柄でありながら大きく見える、
その存在感、彼女はまぎれもなく波子そのものでし
た。そして公平役の川口くんが本当に子供らしくて、
愛しい存在でした。彼がこの舞台を通じて何を感じ
取ったか。彼の人間形成にプラスに作用してほしい
と願っています。   ツキスミ 30代女性

◎戦争を告発する作品はこれまでにも、いくつかあ
ったと思いますが、この作品も引揚者の立場からあ
の戦争時の重苦しさを、よく描いていると思いまし
た。
 娘をソ連兵に差し出した母親の悲しみ、国策とし
て中国地方へ移住させられた。特に開拓団の人たち
の苦労は想像もできないものだったと思いますが、
それだけにあの方々は、もっと怒ってもいいと思い
ました。
 これまでは被害者としての作品が多かったのです
が、これからは加害者の立場から、あの戦争を告発
する作品ができてもいいのではと思います。
草原情話のメロディがとても良かったです。
           松風 70代以上女性

◎前もって原作と黄昏に歌えを読んでいたが、戯曲
化するとこうも温かみが出るのかと驚いた。
 なかにし礼さんは所謂引揚者の一人である。実母
の生きざまを黙って見つめていた7,8才頃の話。
それ迄何一つ不自由なく育った彼にとって、正に不
可思議の連続光景だったに違いない。引き揚げ等云
う言葉にはトゲがないが、実際はいばらばかりで、
想像を絶する様相が展開されていくが、あえてソ連
軍の暴行や同胞間の性を赤裸々に描き出す純粋さは
劇化ならではの成果だと思った。
 平淑恵さんと会うのは初めてである。大岡越前イ
メ−ジとはまるで違う。ひたすら母親役からぶれる
ことなく、冷静な愛情主張に徹した演技は、作者が
最もアッピ−ルしたかったところだろう。
 戦争体験のないキャストが見事に演じたこのドラ
マ。鵜山仁演出に100%応えることができたのは、
ほかならぬ文学座伝統のチ−ムワ−クの賜物。再び
戦中、戦後の実態を想起させ私自身の人生と重ね合
わせた夕べであった。さおり 70代以上男性


◎「満州のバカヤロウ」叫びたくて、きっと心の奥
にしまって生きてきた無数の人びとの声が舞台を突
き抜けて聞こえてくるようでした。愛国心という言
葉に踊らされて、また戦争への道を歩んでしまいそ
うな危うい時代だからこそ、権力者が、日本軍が、
戦場で何をしたか、しっかり考えるべきだと思いま
した。
 この舞台では、エレナは視覚的には出てきません
が、そこは十分想像力を働かせて見ないといけない
と思いました。波子がした事は明らかな殺人であり、
「エレナのことは許してくださるかしら・・・」で
済まされることではないですから・・・。
 生きて帰らむ
      修羅となりても
戦争を生きた人だけでなく、10代の人もぜひ見て
ほしいお芝居だと思いました。
            ひばり 40代女性

◎今回の「赤い月」は、何とも辛く哀しいものでし
た。戦後生まれの私には、計り知れない恐怖と残忍
さに心が震えました。極限状態になった人間の心理、
そして男女の性、何とも空しい。
 母は強しと言えども果たして私は波子の様に、た
くましく子供を守れるだろうか?いろんな事を考え
させられました。
 戦争を体験された方々は、そんな苦難を乗り越え、
今もたくましく生きている。人間ってやっぱり強い
んですね。役者の皆様の熱演に感動し、平淑恵さん
の美しさに救われた思いです。戦争のない平和な世
界を願いつつ・・・ 合掌
           りんどう 50代女性

◎戦争を知らない世代である私たちは、戦争とは、
そのとき国民は・・・いろいろ考えさせられた作品
でした。
 以前、藤原ていさんのドラマをTVでみましたが、
満州からの帰国がどれほど大変な道であったか。
 残留孤児問題、靖国、憲法九条問題・・・戦後6
0年を迎えてもなお解決していません。
 舞台は次々と場面が変わるのに、スム−ズに進行
していきました。
 運命に立ち向かい生き抜く姿に、日本復興の礎を
見ました。     ほととぎす 40代女性

◎原作者と同じ年齢の戦争体験者です。戦争を舞台
(演劇)にする難しさは、現実を知っているからよ
く分かります。でも文学座の皆さんの熱演には心よ
り拍手を送ります。声が小さくて聞きずらいセリフ
もありましたが・・・ ニッキ− 60代女性

◎すばらしかったです。
 あの壮大な物語をよく2時間30分の舞台にまと
めあげたものだと感心致しました。演じている人達
もみなさんとてもよかったです。「赤い月」の本は
読んでいたので、場面がとんだり、話が前後しても、
ついていけましたが、あらすじを知らない人にはど
うだったですか。感想を聞かせてください。
            すみれ 40代女性

◎どういう風にこの芝居を判断しようかと迷ってい
る。「このような芝居は困る」と言えば、歴史に対
する判断停止になるし、「このような芝居は嫌いだ
」と言えば一部政治家の如く過去の歴史に対し只、
単に嫌悪感を示すだけになるからだ。
 一言、語れることは満州国と言う、歴史の運命は
一女性の証言で語るにはあまりにも重く、複雑であ
ると言うことである。作者は満州国で歴史を一女性
の恋愛と家族愛で語れると誤解したのではないだろ
うか。
 そのように考えると「このような結論の判断して
いる芝居は、あまりにも長々しすぎる。少し退屈、
あまりにも悲惨」と言わざるを得ない。  

◎この公演のキ−ワ−ドは「チ−ムワ−ク」だと思
う。すばやい場面転換の時の出演者のセット配置に
はさすがプロの集団である。また照明も良かった。
次になかにし礼の脚本が良かった。単純なスト−リ
−を膨らみをもたせ劇的に仕上げている。最後に平
淑恵の熱演は素晴らしかった。
 所謂お涙頂戴の母物でなく、愛に生きるのみなら
ず恋にも生きる女を丁寧に描いていた。こう謂う作
品は地方では市民劇場でしか見られない。市民劇場
の灯を絶やさないようにしてほしい。
            菜の花 60代女性

◎各年代の人と意見を聞ききたい
私は原作者とほぼ同じ年代に生き、しかも敗戦によ
り大陸とは違う外地から父を残して引き上げた者で
す。敗戦近くには校庭の防空壕に潜り込みながら、
キラキラと美しく銀色に輝きながら落ちてゆく爆弾
を見上げたこともありました。したがってこのお芝
居の時代背景と引き揚げに際してのご苦労は他の人
びとより少しは良く分かるかと思います。
 ここに描かれている女性の逞しさが、敗戦後打ち
ひしがれていた男性を叱咤激励して、戦後の日本復
興に大いに役立っていたと思いました。己を愛する
ことが出来なくてなんで人を愛することができよう
か。欲しいものは例え汚い手を使ってでも手に入れ
るという業の深さ。この時代の人とはとても思えま
せんでした。
 平さんの殆ど出ずっぱりの中でも声に乱れがなく、
立振る舞いにその時々の年齢を感じさせるあたりさ
すがだと感じました。俳優さんは必要とあれば三味
線も弾くなど立派なものですね。あらためて修行の
厳しさを感じました。
 セットの簡略にして要を得たつくりは勿論、場面
が暗転する際のピアノの音など全体に音楽が素晴ら
しくスタッフのご苦労が場面を盛り上げていると感
じました。
 それにしても平和になって60年、そろそろキナ
臭い匂いを感じてきたこの頃、改めて平和のありが
たさをつくづくと感じました。このお芝居を観て、
戦争中に内地で時を過ごしてきた人、戦後生まれの
人、全然戦争を感じてこなかった人などに、どのよ
うない感じ取ったか各世代の人の意見を聞きたいと
思いました。
 カ−テンコ−ル時に花束贈呈があればさらに良か
ったのではないかと思いながら席を後にしました。
          マサ坊 70代以上男性