その11 キアヌ・リーヴス KEANU REEVES

   私の初キアヌ『栄光のエンブレム』('85年)だったと思う。思うっていうのは、覚えてないからだ。
当時飛ぶ鳥落とす勢いの人気だったロブ・ロウ(でも今はチワワあたりにもどつき倒されそうな弱気のロブロウ)の青春スポ根映画だが、ろぶろうの話は、どうでもいいなキアヌ、どこに出てたんだろう。
その後、たぶん最初に見たのは(意識したのは)'90年くらいの『ロードショー』のグラビアだったと思うんだが、キアヌ、メッチャメチャ可愛かったんだよねえ。
色白で、その色白っていうのが白人さん特有のあのキメの荒い白さじゃなくて、ちょっと陶器を思わせるようなすべすべ感のある白さで、笑うと清潔感が溢れ出してくる感じで、とにかく可愛かった。
 

   そして観たビデオが『ビルとテッドの大冒険』('89年)(確認しようとロードショーのスター名鑑を見たらこの映画フィルモグラフィーに載ってない。えらくなったな、キアヌ)。しかも次に観たキアヌ映画は『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』('90年)だった。ぶははは、いいぞキアヌ!ラリリのまだらハゲじゃん。
私はいまだにこれがキアヌの最高傑作だと思っているんだが、このへんのボケボケ役があまりにハマっていたものだから、私はこの頃キアヌ噂の演技力にはまったく気付いていなかったのであった。


   んで、こんなかわいいヤツをロードショーなどのアイドル雑誌がほっておくわけはなく、『ハートブルー』('91年)なんかでもがんばってたので、キアヌは映画ファンの間ではそこそこコンスタントに人気があったと思う。でも、あくまでも大人気ってわけじゃなく、そこそこに。
それがなんと『スピード』('94年)で大ブレーク。どのくらい大ブレークだったかというと、おとなりのお宅のおばさんまでが、「カヨちゃん、おばさんねえ、写真集買っちゃったのよ、キアヌ♪」と私にこっそり耳打ちしてくるくらいの大大ブレーク。
なんかびっくりしたよ、だってキアヌなんだもん、 ラリリのまだらハゲの。


    で、ここまでは良かったんである。『スピード』、演技力いらないもんなあ。ふんがー!って鼻息荒くしてればオッケーという映画だし。
しかし、大ブレークしてしまったために、その後のキアヌの動向は世界中の注目の的に。 
『チェーン・リアクション』('96年) 『JM』
('95年)あたりで、太りやすい体質と激しい棒読み演技、実は映画なんかよりベースやってるバンド「ドッグスター」のほうが好きなんだよオレ、っていうやる気のなさがバレてしまったのである。 ジェイソン・パトリックを葬り去ってしまった失敗作『スピード2』('97年)の出演を断ったのも、賢明だったからじゃなくて、バンドやりたいからってだけだし。
かと思うと『リトル・ブッダ』('94年)に、あんた誰?なアイラインメイクで出てみたり、『カウガール・ブルース』 ('95年)ですごいモミアゲつけてみたりと急にがんばったりもする。
私生活ではホームレスと酒盛りしてるところを激写されるわ、誰と噂になってもボーッとしてるわ、どんなに金があってもどっかの質屋のワゴンで買ったようなドタ靴しか履いてないわで、この人はわけがわからない。そもそもなんで俳優を目指したのかもよくわからない。
要するに何も考えていないんだということに気付くのに、私もだいぶかかった。


     だって、『マトリックス』('99年)のキアヌ、メチャメチャカッコ良かったじゃない?カッコつけりゃああれだけカッコいいのに自分の容姿にこれほど頓着しない人というのも珍しい。映画スターじゃなくともあれだけ元が良ければちょっとくらいはナルシーになりそうなもんであるが、キアヌには全然それがないのだ。
だけど、たぶん、そこがキアヌのいいところなんだろうなあ。インタビューにろくに答えられなかったりするもっさり加減も、悪く言うとサービスしろよってことになるんだろうが、良く言えばシャイで可愛い(シャイな人は浮浪者みたいな格好世界中に報道されるの嫌がると思うが)。


    去年の『ザ・ウォッチャー』('00年)では、酔っぱらったダンス魔というすごい殺人鬼を熱演して私たちを大脱力させてくれたキアヌだが、『ギフト』('00年)の暴力亭主は意外と良かったりして、相変わらずがんばっているのかいないのかわからないキアヌ。ただひとつ言えることは、どの出演作を観ても、キアヌはずっとボーッとしているということだ。そこが彼の持ち味ね。
さてさて『マトリックス』
の続編はいかに?