その7 ラブコメだったぞ『エアフォース・ワン』

特撮がまたトホホでグウ。
    昨年の東京国際映画祭特別招待作品であり、今年の正月映画の目玉商品だった『エアフォース・ワン』
主演は現代ハリウッドを代表するヒーロー俳優ハリソン・フォード。売り込み文句は「ハリソン・フォード扮するアメリカ大統領がテロリストと戦う
ノンストップ・アクション」だ。
しかし、この映画、私にとってはコメディだったのである…。


    だって主役の大統領ハリソンがあまりにもバカタレなのだ。
彼は正義の味方のアメリカ大統領。モスクワで「合衆国はいかなる状況におかれてもテロには絶対に屈しない!」とのっけから強気に出た大統領ハリソン。おお〜かっこいいぞ。
がしかし、帰りの飛行機、言わずと知れたエアフォース・ワン(大統領専用機)がテロリストに乗っ取られてしまうのだ。
機内はもちろんパニック、ホワイトハウスもてんやわんやの大騒ぎだ。そんな中大統領の護衛官は必死で大統領ハリソンを脱出ポッドに押し込み地上に発射。これで大統領の身の安全は確保できた!…と思いきや、あほあほ大統領ハリソンは機内に隠れてなんとポッドには乗ってなかったのである。


   バカッ!みんな命がけであんたを助けようと必死だったんだぞ。家族が乗ってるからって勝手に居残るなあ〜!


 
この顔、魂抜かれてないか?
  その後、なぜか大統領をやるくらいのじじいのくせに、ベトナム戦争のヘリ・パイロットだったというとってつけたような理由だけで近代兵器で武装したプロのテロリスト相手に素手で格闘、何人か仕留めた大統領ハリソンだが、とうとうゲイリー・オールドマン扮するテロリストのかしらにとっつかまってしまう。
そして開口一番「私が合衆国大統領だ。」ぶははは、知ってるって!何をいばってるのだばかもん。


    こういう考えなしの大統領ハリソンだが、妻と子供には優しい。
テロリストゲイリーの要求はカザフスタンの独裁者ラデクの釈放。娘を殺すぞと脅された大統領ハリソンは、娘かわいさにラデクの釈放を承諾してしまうのだ。あんた、
テロには屈しないって言った矢先に…
気持ちはわかる。そりゃあ家族を殺すなんて言われたら誰だって何だって聞いちゃうだろう。普通の人なら。
でもハリソンは普通の人じゃないのだ。アメリカ合衆国大統領なのだ。そこで私情をまじえちゃいけないではないか。
だがそんなことは意に介さず、大統領ハリソンは私情まじえまくり、迷惑かけまくりなお騒がせ男なのであった。


    その他にもビニールテープで縛られた手をガラスの破片で切るなど古典的な縄抜け法も披露してくれるし、勝手にエアフォース・ワンの燃料抜いちゃって後でピンチに陥った上で護衛官いっぱい死なせちゃうし、この映画の大統領ハリソンは、涙と笑いなくしては観られないお人なのであった。
そう、これはコメディ、しかも家族愛が入っているので
ラブコメなのかもしれない。←そんなわけないって


    とりあえず、次の大統領選は各州の代表の方々、ハリソンにだけは投票するのはやめましょうね。ろくなことがないです。
この映画でいちばん冷静で、しかもかっこよかったのは私情まじえまくり大統領ハリソンの指示を辛抱強く待っていた副大統領のグレン・クロースだった。次の大統領は、彼女に決定。