その3 デニーロ・レオレオ不仲疑惑『ボーイズ・ライフ』

   
   アメリカ映画のベテラン演技派といえばいわずと知れたロバート・デニーロ。(ついでに言うとフランス映画の演技派といえばこの人しかいないんかいというくらいにジェラール・ドパルデュー
そして、今や若手演技派ナンバーワンと言えばロミオことジャック、レオナルド・ディカプリオだろう。
このふたりが共演してレオの演技力が話題を呼んだ映画が『ボーイズ・ライフ』('93年)だ。


    この映画でデニーロはレオのママの再婚相手、つまり義理の父であるわけなのだが、これがとんでもないやつで、とにかく継息子であるレオをいじめまくるんである。
デニーロ扮する義父ドワイトはまあいろいろ大人げない嫌がらせをするのだが、途中「ケンカを教えてやる」と言うことからつかみあいを始め、もう、その時の二人の様子といったら真に迫っていて、それこそアカデミー演技賞ものなのである。


    この映画に出た頃の無名のレオは、「デニーロを喰った大型新人レオナード・デカプリオ」なんて紹介されていて、私はふう〜ん、なんて思っていた。
そして『ボーイズ・ライフ』を観て、なるほど〜、うんうん、この子演技、うまいわ、と私も感心したのであった。
がしかし、私ははたと考えた。演技派といったらオレ、と自他ともに認めるデニーロ、この時の心境やいかに?(笑)


   そこでインタビューなんかを読んでみると、デニーロ曰く「レオはすごい俳優さ。時々
ちょっと生意気なことを言うけどね」。
よく考えてみよう。普通、新作映画のインタビューというのは、監督やら共演者のことはベタ誉めするものである。こういう場合の「ちょっと生意
気」というやつは、
「すげえ生意気」っていうことなんじゃないだろうか?


   そしてレオの方はといえば、撮影中にませたことを言ってデニーロに隅にひっぱられて叱られたと言っているのだ。
レオは、「でもその後パイをおごってくれたよ〜」、なんて取り繕っているのだが、もう遅いぞ…あんたたち、
仲、悪いんじゃない?


   そう思ってもう一度、『ボーイズ・ライフ』を観てみると、わははあ。
レオ君は個人的にもごひいきの俳優さんなのだが、この当時16歳の彼といったら、今見ればかわいいと思うものの、声変わりしてるんだかしてないんだかわからないようなマブタの腫れまくった、かなり悪そう&生意気そうな子供なんである。
けっこう、かわいくない。なんとなく、デニーロ父ちゃんがいじめたくなる気持ちも、わからないではないという気になってきてしまった。
新旧演技派ふたりの真に迫った殴り合い、それ、ひょっとして、
本気でやってただけだったりして…


    冗談である。この後ふたりはちゃんと『マイ・ルーム』('96年)で共演している。 新作にデニーロが共演としてレオを指名しているという話もあるらしい。