その1 剛毛チャンピオン

    白人さんは毛が濃い。大抵、日本人とはくらべものにならないくらい、濃い。もうボーボーだ。
「毛唐」という言葉があるが、「毛」という字が入っているところを見ると、昔の日本人がどれだけ白人の剛毛に驚いたのかよくわかる。
 映画スターも例外ではなく、私はよく映画を観ている最中、俳優さんの剛毛に驚いて、しばらくの間ストーリーそっちのけになってしまうことがある。


    特にラテン系の人は体毛が濃く、覚悟はしていてもいざ見ると(ブロンドの人は色が薄いので ごまかされるところがあるかもしんないけど)真っ黒な毛が密生していたりして度肝を抜かれる。どきどき。
あったかい地方の人が、どうしてあんなに暑そうな毛をボーボー生やしているんだろう。


    しかし、知ってる俳優さんの中で誰が一番濃いかということになると、私はずっとボールドウィン4兄弟 ロビン・ウイリアムズを軽く押さえて、ダントツでショーン・コネリーだと思っていた。
007シリーズの頃の、若いショーンときたら、
「毛むくじゃらのおいちゃん」、それ以外に表現のしようがないというほど、眉毛も濃ければ胸毛も濃い、「濃ゆい男」ナンバーワンであった。
あの映画を観るまでは。

『ゴッドファーザーPARTV』('90年)を映画館で観た時の衝撃は忘れられない。
その男の名は、アンディ・ガルシア。最近、『絶対×絶命』('97年)『NY検事局』('97年)など公開作が続いていたあのイタリア系ハンサム男だ。もちろん、ラテン系、あの眉毛、あの顔だちからして、 毛も濃いに違いないということくらいは私だって予想していた。がしかし!裸でベッドに寝そべる ガルシア君の胸毛ときたら、私の想像力をはるかに越えたパワーだったのである。
ものすごい量の胸毛なのだ。真っ黒である。地肌、見えないよ。
フェルトのような胸毛が、彼の胸だけではなくびっしりと肩までを覆い隠している。もしも、ハエとか、そういう虫がうっかり迷い込んだりしたら、 もう絶対逃げられないと思う。ジャングル。密林。


     というわけで(どういうわけなんだか)、それ以来、私の中での剛毛チャンピオンはダントツでハエ取り紙いらずのアンディ・ガルシアということになり、未だその地位は揺るいでいない。ぶっちぎりである。
どなたか、チャンピオンを押さえて新たな世代交代を担うことのできる剛毛俳優さんをご存知でしょうか?ご一報下さい。