その9 そのお面はやめろ〜:『仮面の男』
この映画、けっこう面白かったのだが、主演とうたわれているレオレオをさしおいて、観た人みんながおっさん四銃士にイチコロにされて帰ってきたという映画であった。 この映画のレオレオ、くるくるロンゲはニコラス・ケイジの足下にも及ばない似合わなさだし、生え際がなんだか気になっちゃったし、ぱっぱっと肩にかかった巻き毛をオネエっぽく払いのける仕草はちょっとマイブームになったが、やっぱりなんとなくベテラン四人組のおっさんたちにしてやられたという感じは否めなかった。 しかも、日本では先に『スケバン刑事・少女鉄仮面伝説』という強力なライバル鉄仮面がすでに存在していたので、あれを観ていた人はみんなぼわわんと、「頬に風が当たっちょる」というセリフを思い出してしまったのである。 あの鉄のお面、私はああいうのをすぐ真剣に考え込んでしまうのだが、あんなもんを何年もかぶってたら、まず、錆びるだろう。そして、これはぜえったいなるはずだと思うんだが、ハゲるだろう。全部ハゲなくても、こう、まだらになるとか。 で、牢獄は当然空気も汚いから、鼻毛もぼうぼうに伸びることだろう。汗かいても顔も洗えないから毛穴はつまって、吹き出物も出来放題だ。で、当然とんでもない食事をしているわけだから、栄養状態も最悪、やつれ果てて、ご面相も変わってくるハズなのである。 だから、6年だっけ?経ってみると、もうお面なんてかぶせなくたって双子だなんて絶対わかんない状態になってるハズだ…ぶつぶつ、と、リアリズムを追究する私の脳味噌はそんな事を考えたのであった。
でもこれはフィクション、そんなことはいいっこなしだ。さんざん言っておいてナンだけど。 なんだかんだ言いながらもレオレオの一人二役はやっぱりなかなか名演技で、あのお得意の眉毛芸も見物だった。 がしかし、例の鉄のお面をかぶっているところだけはどうしても笑ってしまうのだ。 誰が入っているかわからなくなるから、お面のシーンは誰か別の人がやっているかと思いきや、ちゃんとレオレオ本人がやっていたので妙に感心したりしたのだが、あのお面をかぶってるとなんだかなあ〜。 表情もなんにもわからないので、その姿でぬぼ〜っと立っていられると、なにやら『怪物くん』に出てくるフランケンとかみたいなんだよなあ、なんとなく落ち着かない。ここで笑っちゃいけないが、あのお面、やっぱりヘンなのだ。 クライマックス、四銃士たちがここぞとばかりにかっこいい一張羅の銃士隊の服に身を包み、「さあ、突撃だ!」と剣を合わせるシーンでも、ただ一人、ぼろんぼろんの服を着てお面かぶったレオレオが混じっているのがすごく怖いのだ。そしてあのシーンで、レオレオをちらっと見たダルタニアンが、ふと目を逸らしたのを、私は見逃さなかったぞ。 それにしても四銃士のベテラン俳優陣は映画ファンには夢のような豪華な組み合わせだった。私もあのヘンなお面かぶされてもいいからあの中に混じりたかったわあ〜(はあと) |