その8 『マイ』は魔法のキーワード

原題は『CURE』。
     先日映画館へ行った時のこと。いつものように冒頭で新作映画の予告が3,4本流れる。この予告を観るのが映画館で映画を観る楽しみのひとつでもあるのだが、今回は予想もしない予告に不意打ちをくらってしまい、すっかりご機嫌になってしまった私であった。
なにやらうっとりした画面に真面目そうな文字が出てくる。おっ、これはラブロマンスか感動のヒューマン・ドラマだね!?と思った矢先に、ずらずらと出てきた文字。

『93年 マイ・ライフ』『95年 マイ・フレンド・フォーエバー』『97年 マイ・ルーム』

ん?それで?と思った次の瞬間、「そして98年、マイ・シリーズの…云々」ときたのだ。
ぶわはははは、
マイ・シリーズ!誰が決めたんだマイ・シリーズ!


     実はこれはマコーレー・カルキンの弟、キアラン・カルキン君主演(?)の、『マイ・フレンド・メモリー』という映画のコマーシャルだったのだ。
私たちはもうそこで大爆笑してしまったので細かい内容は全然覚えていないのだが、どうやら配給側は大真面目で、笑わせようという気はさらさらなかったらしい。なんせうっとりモードオン!感動をあなたに。なCM構成だったのだ。なのに笑わせてどうする。


    しかも『マイ・ライフ』以外は原題が全然違うのがさらにトホホである(「マイ・フレンド・フォーエバー」は
『THE CURE』、「マイ・ルーム」は『MARVIN'S ROOM』だ)。確かこの『マイ・フレンド・メモリー』も原題は全然違っていたと思う。
いったい誰がシリーズ化したのかは知らないが、よく考えてみると、タイトルの冒頭に「マイ」というのがついている映画は、感動のヒューマン・ドラマ系映画が多いのだ。
こちらは原題もそのままなのだが、『マイ・ガール』('91年)もしかり、『マイ・レフトフット』('89年)もしかり。
なにやら日本の映画業界では、タイトルに「マイ」がついている感動系映画はヒットする、というジンクスでもあるのかもしれない。原題がなんだっていいや、じーんとくるこの映画、絶対「マイ・シリーズ」に入れようぜ。なんていう具合に決めているんじゃないか。


    そういえば、やはり邦題でこれをつけるとヒットする、というものに「天使」というのがあるらしい。タイトルに「天使」を入れるとヒットするというのだ。『天使にラブ・ソングを…』('92年)などは典型だろう。
私の好きな映画で、香港映画の『天使の涙』('95年)なども大ヒットした。しかし同じウォン・ガーウァイ作品の『恋する惑星』('94年)がやはりヒットしたのをいいことに、組み合わせて『恋する天使』('96年)という邦題がついちゃったのがあって困ってしまう。
この『恋する天使』、原題は『大三元』で、このままじゃマージャン映画と間違われそうなので気の利いた邦題が必要ではあるのだが、もうごちゃごちゃになってどれがどの映画だかわからなくなるではないか(笑)。もうちょっと考えてくれ、天使シリーズ。


    ここで感動のマイ・シリーズに反旗を翻すべく、大笑い・アクション満載なオリジナル・マイ・シリーズを作ってやる!と思ったのだが、いくら考えても私が思いつくマイ・シリーズは、せいぜい
まいっちんぐマチコ先生くらいのものなのだった…今回は降参してやるぜ、マイ・シリーズ。