その6 ごめん、笑っちゃったよ『身代金』

噂の息子の鼻の穴
     '97年公開されてヒットしたメル・ギブソン主演の『身代金』。監督が『バックドラフト』('91年)『アポロ13』('95年)のロン・ハワードということもあって、かなり期待して映画館に足を運んだ。
主演のメル演ずるミューレンは全米で5本の指に入る大手航空会社の社長。彼の9歳になる息子が誘拐され、犯人は200万ドルの身代金を要求してくる。ところが犯人逮捕を試みるFBIの再三の失敗に業を煮やし、彼はテレビを使って犯人に宣戦布告するのだが…。


     今やアメリカ映画界屈指のスーパースター、メル・ギブソンが息子を誘拐された父親の役を大熱演しているのだが、私はこの映画、実はそこがまずかったんじゃないかと未だに気になってしょうがないのだ。


     だって、メル・ギブソンなんだもん。まずどうしてもメルが
エグゼクティブに見えないのである。飛行機の操縦はまあ『フォーエバー・ヤング』('92年)で覚えたにしても、なんたってメルは『マッドマックス』('79年)で『リーサル・ウェポン』('87年)な男。
完全な肉体派俳優である。なのにそんな、息子の身代金を要求されるような大金持ちだなんて…
加えて彼の妻はレネ・ルッソ。ああ、この2人は
リーサル・ウェポンコンビではないか。おまけに今公開中の『リーサル・ウェポン4』ではこのふたり仲良くトレーラーハウスに住んでいるのだ。誰がエグゼクティブだって?


     ダメ押しはメルの誘拐される息子役のこぞうだ。テレビCMをやっている時から大写しになるこのボクちゃん、あまりのかわいくなさに画面から目が離せなかった。余裕で親指が入ってしまいそうな鼻の穴、この子が誘拐されて酷い目にあっても悪いが全然可愛そうじゃないのだ。入れ込めない。子役は他にもいっぱいいただろうになぜ…。どうやらこのブラウリー・ノルティという子はあのニック・ノルティの息子らしいのだった。ニック・ノルティ、いい俳優さんなのに、息子のこととなると…愛は盲目だ。


     そして映画も後半、ついにキレたメルは犯人に対抗してテレビで「金は渡さん!」と大見得を切ってしまうのだ。ええ?
メルは大金持ち、そして身代金の要求額は200万ドル。彼にとってはたいした額じゃない。ただただ、意地で言い切っている。もうまわり中が大騒ぎ、妻も半狂乱だ。その中でひとりメルだけが頑固に
「金は渡さん!」
息子が殺されるかもしれないっていうのにこの意地っぱりぶり。もう息子の安否なんてどうでもいいのか?ここで犯人のいうなりになっちゃあ男がすたるということか?あまりにも頑固に犯人にケンカを売る姿を観て、緊張感あふれる映画館でこらえきれずに笑ってしまったのは、私だ。
結局息子は無事だったからよかったものの、私がこの息子だったらメル父さんのとった行動を知って、ふか〜く傷つき、将来トラウマに悩まされるだろうと思う。


    でも、後半「金は渡さん!」と言い出してからのメルはいきいきとして、完全にリッグス刑事になっていた。映画が面白くなってきたのもこのあたりからだ。
とすると、この映画のキャスティング、まんざら間違いでもなかったのかもしれない。でも、いったいメル・ギブソンの経営する航空会社ってどんなのだろう…?
スリルとサスペンス溢れてたりすると、ちょっといやだなあ。