その10 若造が死ぬとき
この若造というのは、必ずガキのくせに自分ではガキじゃないと思っている。同年代の少年または青年よりもちょっとだけ優秀だったりして、すっかり一人前のつもりでいる。 一人前のつもりでいるからいろんなことに参加したがるし、首を突っ込みたがる。そして災難に遭うのだ。 最近のでは(もうあんまり最近じゃないか)、『クイック&デッド』('95年)のレオレオ演ずるキッドなんかがそういう若造だった。 キッドはけっこう早撃ちだ。女の子を腕にまとわりつかせてキャーキャー言われて喜んでいる。 負けりゃあ死ぬという早撃ち大会に、やめときゃいいのにイキがって参加する。 なんで無理遣り参加するかというと、オヤジ(ジーン・ハックマン)に認めてもらいたいからだ。 だいたい「オヤジに認めてもらいたい」という理由自体がもう思いっきりガキな証拠なのだが、本人は全然気付いていない。 で、これがもちろん死ぬのだ。だからやめときゃいいのに。 この映画で撃たれちゃったレオレオは、確か「死にたくねえよぉ〜」なんて言っていたと思うのだが、思うに映画で若造が死ぬときというのは、たいてい決まったパターンがある。 まず、上の条件を満たした生意気な若造が撃たれちゃったり、事故に遭っちゃったりする。そうすると年上のおっさんが駆け寄り、若造は抱き起こされながらこう言うのだ。 「へへへ…オレ、死ぬのかな…」 おっさんは「バカ野郎、死にゃしねえよ。故郷に帰って牧場やるんだろうが!」とか言うのだ。「牧場」の部分は、使用目的に応じてなにか若造が描くでかい夢に任意に変えてもらってかまわない。 そこでかわいい嫁さんをもらって子供をこさえて、なんておっさんと若造が夢の話をしているうちに若造は息絶える。 このシチュエーションは西部劇だったりする。 これが刑事ものなんかだったりすると、邪険にされていた新人の張り切りクンが凶悪犯の銃弾に倒れ、相棒のベテラン刑事に抱き起こされながらこう言うのだ。 「へへへ…オレたちコンビだよな。」 そしてベテラン刑事のほうは「ああ、コンビだ。最高のコンビだぜ…!」と初めて認めてやるのだが、腕の中でガックリと息をひきとった若造のマブタを閉じてやりながら必ずこう言うのだ。 「まだ子供だったのに…!」 そこで若造の相棒を殺されたベテラン刑事は、瞳に復讐の炎をメラメラと燃え上がらせるのであった。 これを、『ダーティハリー』パターンと呼ぶことにする。←勝手に呼ぶな あ、そして、変則パターンとして、死んじゃう新人クン、今日が誕生日だったなんていうのもありがちだ。確か『リーサル・ウェポン3』('92年)にそんな新人クンが出てきていたような気がする。 そこで可愛い恋人もしくはお母ちゃんがロースト・チキンかなんかこしらえて家で待ってたりすると泣かせるな…そこへ悲報が…ああ。 若造が死ぬときというのはこのようにけっこう恥ずかしいものなのだが、若造が「悔いのない人生じゃった…かあさんをよろしくな」なんて言い残しても気持ち悪いので、やっぱり「へへへ…オレ、死ぬのかな…。」でいいのかもしれない。 |