その7 ダークマン DARKMAN
'90年アメリカ 脚本・監督 サム・ライミ 出演 リーアム・ニーソン フランシス・マクドーマンド ラリー・ドレイク 科学者であるペイトン(リーアム・ニーソン)は、政治的な陰謀に巻き込まれて研究所ごと爆破されてしまう。ペイトンは死んでいなかった。だが顔は見るも無惨に焼けただれてしまう。 復讐に燃えたペイトンは、研究開発した、自在に顔の変えられるマスクをつけて元の自分の顔を装い、悪人に立ち向かってゆく。 …ものすごいB級映画である(笑)あらすじを聞いただけで木曜洋画劇場まっしぐらって感じだ。だがこれがめちゃくちゃ面白いのだ。 カナダに旅行をしたとき、ホテルのテレビでやっているのを観たのがこの『ダークマン』なのだが、字幕なしの英語でヒヤリングがあやうい中、なにやら異常な迫力で画面に釘付けになってしまった映画なのである。 焼けただれてしまって恋人にも逢えなくなってしまったペイトンは、元の自分の顔のマスクを被って彼女に逢いにゆく のだが、このマスクが、90分だかそこらしかもたない。効果が切れたあとには世にも恐ろしい(笑)顔の崩壊が訪れるのだ。 きっちり90分という時間の割り振りもすごいが、この顔崩壊映像がすごい。妖怪人間ベムも真っ青だ。 デート先の遊園地でえらく取り乱してしまうふたりの映像もすごい。画面の色がいきなり変わって、ふたりしてホラー な顔でギャ〜ッ!と叫んじゃうのだ。え、ギャグ? やっているのは『シンドラーのリスト』('93年)、『ロブ・ロイ』('95年)の大物俳優リーアム・ニーソンと、『ファーゴ』('96年)でついにアカデミー主演女優賞を受賞してしまったコーエン夫人のフランシス・マクドーマンドだ。 こんな大物ふたりの超B級映像、この映画でしか観られないに違いない。お宝映像だ(そうか?) 加えて、この映画ではこの恋人のことをキミは美しいと誉めているのだが、え?だってフランシス・マクドーマンドだよ?ちょっと、待て。 こんな、女優さんにお金がかけられないのも異常にB級っぽくて良いのだが、その分、悪役は悪いよ。 いろんなヤツに変身してしまうペイトンについにやっつけられてしまう悪の親玉だが、悪い悪い、こんな悪人顔なヤツもあんまり見ない。ひと目で悪いヤツ、全身から悪いオーラを発しているヤツ、これこそB級の醍醐味というものである。 サム・ライミ映画お得意の地を這うようなカメラワークも見物である。クライマックスのアクションはハラハラ、手に汗握る展開に目を離せない。 そして、哀愁のラストには…「ダークマンと呼んでくれ」の名台詞(特別出演ブルース・キャンベル!)には、思わずうっと来てしまうのだ。これまで笑いながら、ツッコミながら観てきたというのに。うまい! この映画はB級だ。だが、滅法エキサイトしてしまう、100%エンターテインメントなB級映画である。この映画だったら、何回見てもいい! |