その3  恋しくて  SOME KIND OF WONDERFUL
 

'87年アメリカ 脚本 ジョン・ヒューズ 監督 ハワード・ドイッチ
出演 メアリー・スチュワート・マスターソン エリック・ストルツ リー・トンプソン



    『プリティ・イン・ピンク』('86年)に引き続き、脚本ジョン・ヒューズ、監督ハワード・ドイッチというコンビで作った青春映画の秀作。
高校生のキース(エリック・ストルツ)と、オトコ女・ワッツ(M.S.マスターソン)は幼なじみ。
互いに親友同士だと認めてはいるが、ワッツのほうはキースに恋をしていた。
そんなこととは知らないキースは、学園の高嶺の花アマンダ(リー・トンプソン)に夢中だ。
ある時、ボーイフレンドとケンカをしたアマンダが勢いでキースとのデートをOKしてくれる。キースは有頂天になり、でもそれを見ているワッツのほうは…


    眩しいくらいの青春映画である。'87年当時、いわゆる「ブラット・パック軍団」(注)が活躍していた頃、活きのいい青春映画がたくさん作られていたが、その中でもこの『恋しくて』は 群を抜いてみずみずしくて、それこそ胸がキュンとなる(あああああ恥ずかしい!(笑))映画なのだ。


とにかくオトコ女・ワッツに扮するM.S.マスターソンのボーイッシュなファッションがキュートで悶絶モノ。
ブロンドのショートヘアに革ジャンを着て、粋がってドラムを叩く。キースのアマンダとのデートの日に、運転手をしてやるよ、と、黒い帽子をかぶった運転手ルックで現れる彼女のかわいさといったらない。 ごつい男物の服を着ているというのに、華奢な体がよけいに彼女の女らしさを強調していた。
「男物のパンツはいてるの?」とクラスメイトからからかわれ、側で着替えているお洒落なアマンダと自分を見比べてみる。
アマンダとのデートに浮かれているキースに「キスの練習台になってやるよ」と言って大好きなキースとキスをするシーンはこのうえなく切なくていじらしい。何度も言うが、この映画、彼女を見ているだけでキミに胸キュン (←古すぎて卒倒しそうですね)状態で今にも狭心症を起こしそうになるのだ。


    で、そんなワッツの気持ちにちっとも気付かないキースことエリック・ストルツは、現実にこんなのがいたらかなり困るというくらいな超ウルトラニブ男なのだが、自分でも「はみだしもの」と言っている、少し暗い、感受性の強そうな高校生という役にストルツの ルックスはぴったりはまっていたと思う。
最初はお高くとまっているお嬢さんかと思われたアマンダも、実は自分の家が裕福ではないことにコンプレックスを持ち、お金持ちの友人に合わせようとして無理に自分を欺いていたのだということがわかってくる。
ラスト、やっと本当の自分の気持ちに気付いたキースからアマンダにプレゼントするはずだったアクセサリーをもらって、「これは私のものだと思ってたんだ」と運転手ルックのまま泣き笑いをするワッツに、思わず涙してしまうのだ。


    この映画の登場人物は、みんなキュートで、繊細で、輝くような若さにあふれている。
『恋しくて』は、へそ曲がりの私が「青春っていいな」なんていう、クサい台詞をつぶやいてしまう、数少ない映画のひとつだ。



「ブラット・パック軍団」

'80年代後半頃、一世を風靡した若手俳優集団の俗称。「ブラット・パッカー」などと呼ばれていた。
チャーリー・シーンとエミリオのエステベス兄弟、デミ・ムーア、キーファー・サザーランド、ジャッド・ネルソン、アリー・シーディ、アンドリュー・マッカーシー、ロブ・ロウなどで、私生活でも友人同士だったりした。
いわゆる「ブラット・パック映画」に、『セント・エルモス・ファイヤー』('85年)、『ヤングガン』('86年)などがある。