その5  太陽は夜も輝く IL SOLE ANCHE DI NOTTE
 

'90年イタリア=フランス=西ドイツ 監督・脚本 パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
出演 ジュリアン・サンズ ナスターシャ・キンスキー



    『サン・ロレンツォの夜』('82年)『グッドモーニング・バビロン!』('87年)などで名高いタヴィアーニ兄弟の'90年の作品。

舞台は18世紀のイタリア。ナポリの名門貴族の息子であるセルジョ(ジュリアン・サンズ)は、結婚を目前に前途洋々の生活を送っていた。だが、婚礼の前日、セルジョは美しい婚約者が王の愛人であったことを知ってしまう。
絶望に打ちひしがれた彼は、家と故郷を捨て、山奥にこもって修道士となることを決心する。

    
 セルジョ神父の住む山小屋には時折食料を届けに来るものがあるだけだ。他には何もない。雄大な山が彼方に横たわっているだけだ。
そこで彼はすべての欲望を断ち切ろうと日々過ごすのだが、彼のもとには代わる代わる誘惑が襲ってくる。


    セルジョが神の道に入ったことを聞きつけて、ひやかし半分に彼を誘惑に来る貴族の名家婦人。しかし嫉けつくような欲望に負けそうになったセルジョは戒めに自分の指を切断してそれに耐える。
そのすさまじいまでのセルジョの決心に、淫婦とうたわれた彼女もまた、心を悔い改める決心をするのだった。
そして心の安らぎを求めて各地を放浪するセルジョ神父は、次第に数々の奇跡を起こすようになってゆくのだ。

    とにかく映像が圧倒的に綺麗だ。イタリアの山景色というのがこれほどしっとりしたものだったとは知らなかった。
ぼんやりと曇った空と、地の果てまで続いていそうな、雪をいただいたなだらかな山裾が交わるその景観は、それだけでもうっとりとしてしまう美しさだ。
 まだ若いジュリアン・サンズの端正な美貌も煩悩に苦しむセルジョ神父にぴったりとあっている。彼を騙しながらも苦悩していた婚約者役にナスターシャ・キンスキー
セルジョ神父を誘惑する象徴としてあらわれる少女にはシャルロット・ゲンズブール。「君は悪魔か?」と尋ねるセルジョに、彼女が幼さを残した表情で「悪魔だとしてもかまわないでしょ?」と上目遣いに言う仕草がまさに小悪魔的だ。


    『太陽は夜も輝く』は、バックに流れるピアノにもいざなわれて、画面の中へどっぷり浸かってしまう映画だ。
ああ、イタリアへ行きたい。