その1  柔らかい殻 THE REFLECTING SKIN
 

'90年イギリス 監督・脚本 フィリップ・リドリー
出演 リンジー・ダンカン ヴィゴ・モーテンセン



    アイダホの田舎町。少年セスの家は流行らないガソリン・スタンド。
セスは近所の未亡人(リンジー・ダンカン)が吸血鬼だと思い込み、 果てしなく想像をめぐらせてゆく。
兵隊帰りのセスの兄(ヴィゴ・モーテンセン)は未亡人と恋に落ちるが、 放射能を浴びていた兄は日に日に弱っていってしまう。
想像の世界に浸って未亡人を恐れるセスだが、実は本当に恐ろしいのは 未亡人ではなかった。
街では少年殺人事件が多発していて…

    画家・小説家として活動しているフィリップ・リドリーの初監督作。
アイダホの果てしなく広大な土地、目に染みるような青空、そよそよと風にそよぐ 金色の麦など、画面の中にはうっとりするような美しい風景が繰り広げられる。
その美しい風景の中で、ガソリンをかぶって自害する父、不気味な少年誘拐犯、双子の中年女、 死蝋化した胎児などの、およそそぐわないエピソードやイメージが次々に差し挟まれ、のどかな田園風景とのミスマッチがなんとも言えない奇妙な雰囲気を作り出している。

それまで私はヴィゴ・モーテンセンという俳優を知らなかったのだが、妙に存在感のある役者さんだと思っていたら、翌年、ショーン・ペンの監督作『インディアン・ランナー』('91)に起用されていた。
脇役ながらかっこいい、味のある役が多くてステキな役者さんだと思う。
未亡人のリンジー・ダンカンの程々にトウがたった、疲れたような演技もなかなかいい。


『柔らかい殻』は、奇妙で綺麗な映画だと思う。真っ青な空と金色の麦畑、 私はあの風景の場所に行ってみたくてしょうがない。