広州の風 英語
1999年2月掲載

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 今、日本では英語を第2外国語にすべきかどうか議論になっている。確かにことばは大切だ。私も中国で生活する中で、最も困ったのはことばの問題だった。中国語ではない。英語だ。

 私たち外国人教師のお世話をしてくれるのは外事処で、ここからの連絡は英語。外国人として招かれるいろいろな会合やパーティも英語。事務室も私が行くと英語で話しかけてくれる。ボランティアで曁南大学と広東工業大学で日本語学科以外の学生に日本語の初歩を教えているが、学生が質問してくるときは英語。日本人はみんな英語がしゃべれると「誤解」しているのだ。「アメリカととても仲良しで、経済・教育の先進国である日本だもの、英語は当然しゃべれるでしょう。」という感じだ。 初めの頃、私は8年間も英語を勉強しておきながら何というざまだと、反省ばかりしていた。昨年度在籍していた同じ外国人教師で、イギリス人のウィリアムさんは、そんな私を哀れみ、「毎日少しずつ練習しよう。」と授業の行き帰り、簡単な英会話を教えてくれた。
 そのウィリアムさんは「中国の学生は英語がうまい。チャイニーズイングリッシュだけど、英語を怖がっていないからだ。タカ(彼は私をそう呼んだ)は、英語を怖がっているね。」と言った。
 そういえば、西洋人の先生の周りには人々がよく集まる。一緒に旅行に行っても中・高生がよく話しかけてきて、写真を撮ってくれと言ったりする。東洋人の私はいつもシャッターを押すことになるが・・・。

 テレビの影響も大きいかもしれない。広州では香港の放送局の番組も見ることができるため、普通語(共通語)、広東語、英語の番組が入り乱れている。その中で、子どもにとって最もおもしろいのは英語の番組だという。広州市では小学校から英語の授業が始まるが、その前に子どもたちはテレビ番組で英語の素養を積むことになるのだろう。

 また、外国語に対する意識も違うかもしれない。広州の子どもたちはふつう家では広東語、学校では普通語を使う。「普通語」「広東語」というと、私たちには東京弁と関西弁のような感じがするが、その差はポルトガル語とスペイン語よりも差が大きいと言う。例えば「ニーハオ」も広東語では「ネイホー」になる。「日本」は普通語では「イーベン」と私には聞こえるが、広東語は「ヤップン」である。小さい頃から2カ国語を使い分けているようなものだから、3つ目の言語である英語にも抵抗が少ないのかもしれない。

 一方、大学では英語の授業時間は多いし、厳しい。「私は英語が苦手です。」という学生でも結構話すし、少なくとも私より上手だ。それでも英語の単位だけが認められず、留年する学生が毎年いる。英語は大学を卒業した者の大切な教養なのだ。 教員の試験にも英語がある。中国の大学は助手・講師・副教授・教授と昇進していくが、日本語学科の先生にとって最大のネックは英語の試験だ。最近教授になった同僚の先生は日本文学の翻訳者として有名で、その実績は充分認められていたのだが、英語が苦手で苦労したという。「家庭教師を雇って勉強しましたよ。英語は大事ですからね。」とその先生は私に言った。

 こんな事情だから、日本人であり、一応大学で教えている私が、英語を話せないのはとても恥ずかしい。しかし、外国人である私が中国語を話せないことは恥ずかしいことではない。だから今は片言でも中国語で話をするようにしている。ほんとうに簡単な中国語でも「おお、日本人なのに中国語が話せるのか。」と感心してくれる。

 授業中、日本語の外来語の説明で元となる英語を言うと、学生は笑う。「先生の発音はおかしい。」と。初めの頃は冷や汗をかいていたが、最近ではこう答えている。「君たちの英語はチャイニーズイングリッシュ、私の英語はジャパニーズイングリッシュ。少しくらい発音が違うのは当たり前。」。こういう姿勢が大事だとウィリアムさんが教えてくれたのだ。

【写真】
 英語学科と共用のLL教室は利用頻度が高い。1世代前のシステムで日本製。コンピュータで操作するがディスプレイには英語で表示される。

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