広州の風 卒業写真・・・化粧

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 広州の風・・・化粧

 亜熱帯の広州では春から夏は雨期。だから卒業写真は冬に撮る。広州の冬は紫の紫荊花が咲き乱れ、学内はいつにもまして美しく、また気候も学士服を着るのにちょうどよい。学部ごとに決められた日、1日30元(約450円)で借りてきた黒に赤の襟の学士服と角帽を身につけ、友人や、故郷からやってきた家族と一緒に写真を撮る。この日は学生にとって「大学生活の中で一番大事な日」だと言う。

 そんな日を明後日に控えた日、買い物から帰ってきた私は、大学の門の前で4年生の黄さんと孫さんに出会った。「先生!」と呼ぶ彼女たちに「どこに行くの?」声をかけると、黄さんは「あの、け・・」と言いかけて、孫さんに止められた。孫さんは「ちょっと、買い物に。」といつになく簡単に答える。何事かを察した黄さんも「あっ、ちょっと。」と言い、笑いながら「それじゃあ」と手を振る。いつもとは違う彼女たちの対応に、私は「あんまり派手なのはだめだよ」と背中に声をかけると、彼女たちは笑って「は〜い」と答えた。

 彼女たちは化粧品を買いに行くのだ。そしておそらくそれは生まれて初めて買う化粧品だ。卒業写真を撮るために一夜漬けでお化粧の練習をして、「一番大事な日」に臨む。しかし、何しろ始めてのお化粧で、たくさん化粧品を使うものだから、私から見て不自然なことが多い。だから、授業中、「化粧は止めた方がいいよ。素顔が一番いいんだから。1回や2回で上手にできるはずないんだから諦めなよ。」と繰り返し言っていたのだ。こういう話はすぐ妻に伝わることになっており、「いいと思ってしてるのに、失礼なこと言わんとき!」と叱られた。

 写真撮影の当日は日曜日。朝早くから学生が迎えに来てくれ、一緒に写真を撮ってもらう。故郷から出てきたご家族に挨拶をして、一緒に撮ってもらうことも多い。全体写真は午後からなのに、午前中だけで疲れてしまう。
 女房に叱られた後なので、当日は化粧については何も言わないでいたが、婁さんなどは「先生、私の化粧変でしょう。お化けみたいでしょう。でも、今日は卒業写真だから、どうしても・・・」などと恥ずかしそうにしながらやってきたので、余計なことを言った自分を反省する。

 彼女たちのあこがれの化粧品は日本のメーカーのもの。しかし、日本のものは関税率100%もかかるので、高嶺の花である。それでも、彼女たちはそれを使いたいと言う。日本のドラマや雑誌などを見ると、日本の高校生や大学生がとても美しいからで、その原因は化粧品に負うところが多いからと考えているからだ。

 頭髪については、香港・マカオからの学生の中には脱色をしている者もいる。しかし、中国大陸の学生には抵抗が強い。日本語学科での4年生のクラスで最近、髪の毛を少し茶色に脱色した女子学生がいた。私にとっては何の問題もない姿なのだが、クラスメートの中には、なぜそんなことをしたのかと非難があったという。髪を染めることなど学生なのだから不要であるし、中国人として黒い髪の毛に誇りを持つべきだという内容だ。

 スッピンで眉の形さえ整えていない中国の女子大学生のこの話を、日本のガンクロ茶髪の女子大学生はどう受け取るのか聞いてみたい。決して日本の学生を非難するわけではない。高校生は別問題として、女子大学生にとって化粧は重要な身だしなみであろうし、自己表現の手段でもあろう。顔を洗っただけで、人前に出る中国の学生の方こそ恥ずかしいというかもしれない。しかし、その上でお互いの価値観の違いを越えての学生としての意見を聞きたいと思うのだ。

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