広州の風 アルバイト
1999年11月1日(月)掲載

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 日本人ビジネスマンにとって中国広州といえば「交易会」だそうだ。中国で生産されるものを世界中のバイヤーが買い付けにくる。機械・衣料・食料品・医薬・民芸品・文具・・・・。とてつもなく広い会場に所狭しと商品が並び、「ああ、中国という国はこういう国なんだ。」と改めて感心させられる。

 この交易会がある10月と5月、広州にある大学は英語をはじめ日本語やその他外国語を勉強する学生、主に4年生を通訳のアルバイトとして送り出す。そしてこのアルバイト料(1日200元=3000円が相場らしい)の半額、大学によっては全額、大学のものとなる。だから、アルバイトではなく、「実習」。ひどい気もするが、学生は、実際にビジネスの厳しさを肌で感じることのできる「勉強」と考え、喜んで出かけていく。

 曁南大学は、この交易会に関して実習はないし、アルバイトも禁止。華僑を受け入れている関係で曁南大学は他の大学と違う場面が多い。この「実習」に関する処置もその一端。「アルバイトに行くくらいなら、一生懸命講義を受けなさい。」ということらしい。

 しかし、曁南大学の学生も交易会に行きたい。つらい場面も多いが、実際にビジネスにかかわる緊張感がいいのだろう。

 だから「先生、交易会のアルバイトに行きたいので、先生の授業欠席してもいいでしょうか?」と内緒で聞きにくる。大学からは禁止をすると言われているから「いい」とは言えない。しかし、授業より学ぶことが多いと、外国語学科の多くの先生は考えている。私もそのとおりだと思うので、「風邪ひいたと言ってくれよ。」と私が言うと、「嘘はつけません。」とうつむいてしまう。中には「先生、明日から2日間、病気になるので、すみませんが先生の授業に出ることができません。でも、がんばってきます!」などと元気に言う学生もいる。

 交易会のアルバイトから帰ると、学生同士、情報交換が行われている。「もう全然、できなかった。」と泣きそうな子や、意味のわからなかった単語のリストを手に友達に聞きにまわる子、お客にひどく叱られショックを受けている子もいる。

「標準語でお願いします。」と言ったけれど「大阪弁くらい勉強せぇ。」と言われ、「先生、来週からの講義、1時間は大阪弁でやってください。」と真剣に言ってくる学生もいる。

 学生が担当した日本人の中には、大変親切で、「がんばりなさい。」と言って、経済用語を丁寧に教えてくれたり、心づけをくれたりする人もいる反面、明らかにセクハラと思われることをしたり、完全に学生を見下した対応をする人もいるようだ。

 この時期、広州で教えている日本人教師はみんな「どうか、学生がいいお客にあたりますように。どうか、日本人が学生の前で恥ずかしいことをしませんように。」と祈っているのだ。
 いろんなことがある交易会だが、このアルバイトでビジネスの厳しさや楽しさを覚え、学生は確実に一回り大きくなる。

 伊賀地区ではアルバイトを禁止している高校が多い。地区の生徒指導・進路指導担当者の会議をはじめ、校内の会議でもよく話題になる大きな問題だ。確かにアルバイトのメリットは大きい。将来の職業選択の機会として、自分のアイデンティティー確立のため、働くことの苦しさを知る意味で、などなど、そのメリットは数え切れない。

 しかし、そのメリットを生かすには、生徒と保護者、そして雇用者の強い自覚がどうしても必要だと私は思うのだ。そこのところに、まだ不安があるのではないか。できることなら「生きる力」が問われている今の日本の高校生は全員、アルバイトをしたほうがよいと私は思う。しかし、その前に、私たち教員はもちろん、親も社会も、もう少し勉強しなければいけないと思うのだが・・・。

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