没有銭 2000.4.24 |
広州はまた梅雨に逆戻り。毎日雨の心配をしなければなりません。 さて、4月14〜17日まで家族で桂林に行ってきました。14日の夜の汽車に乗り、17日、早朝また汽車で帰って来るという旅でした。 桂林なんか・・・とバカにしていたのですが、やっぱり「桂林」だけのことはあります。ほんとうに美しいところでした。桂林から有名なリ江(リは三水扁に離)下りをしてたどり着いた所は陽朔。『地球の歩き方』に「桂林より、陽朔がきれい」と書いてあるところです。さすが『地球の歩き方』。西川編集長、あっぱれ!(西川編集長と広州でお話したことがあるのです)完璧な美しさでした。 その陽朔では外国人(この場合、西洋人)が多く、それ用の土産物が多いのですが、私たちが行った日、西洋人のお客がとても多かったらしく、売り手はそちらばかりに気を取られており、東洋人の私はのびのびと「冷やかし」ができました。船で陽朔に降り立ったときも、船の中で一緒だったドイツ人の集団に物売り達は気を取られていて、日本人の間では有名な「しぇんえん(千円)、しぇんえん、どれでもしぇんえん!何でもしぇんえん!」の声を聞くことはできませんでした。 そのドイツ人たちも、船の中では、私たちを中国人だと思ったらしく、「ニイハオ!ニイハオ!」と言いながら下の娘をソニーのデジタルビデオで撮り、「どうだ、すごいだろう!」と言わんばかりに、再生して私に見せてくれました。愛想だと思い、「オウ!ワンダフル!ダンケシェン」と言っておきましたが・・・・ さて、陽朔、何も買わずに小型バスに乗りますと、前の西洋人用の最新大型バス(ベンツ製)が道を塞いで進むことができません。すると小型バスの近くで商売をしていたTシャツ売りのおばさんが、なにか仕方なさそうに、 Tシャツを売りに窓から顔を出しました。 私が目を付けたのは胸に大きく「没有銭(お金はない)」とプリントされたTシャツ。以前、日本人学校の先生が着ていたというシャツです。前々からどこかで売っていたら買おうと思っていたので、バスの窓から値段交渉。 おばさんは私たちを香港人だと思ったようで、やる気なく「広東語はできない・・・」とか言っていましたが、私が普通話で値段交渉を始めると、俄然元気が出てきました。最初50元(750円)から始まった値段交渉は途中「高い、要らないわよ。品質が悪いわよ(中国語)」という女房の加勢もあり12元(約180円)になりました。これは私たちが1日320元でチャーターしたボロいミニバスの効果も相当あります。観光地でこの値段ならかなりのものでしょう。 さて、このTシャツ、日本ではあまりインパクトがないと思い、広州に戻ってきた日、さっそく着てみることにしました。コピー用紙を買いに出かけますと、専家楼(私たちの宿舎)のシャオジェたち(おねえさんの意、若い女性の服務員)が、「何!そのシャツ!」と大笑い。「お金持ちなのに・・・」と言うから、「桂林に行ったから、今はお金がないんだよ。」と言って外に。 自転車でキャンパス内を走ると、すごい反響です。みんなが指さしています。あっけに取られて見送る人、笑い出す人、どの人も何らかの反応をしてくれます。すれ違ったバイクのおじさんが反転して、前に回り込みます。小学生の集団は集団で追いかけてきます。 他人のことにあまり干渉しない中国人、普段はむっつりの中国人が大変な反応です。かなり後悔し始めましたが、部屋まで戻るのは面倒なので、人混みを避け遠回りをして文房具屋へ。 自転車を止めていると、品の良さそうなおじいさんが恐る恐る「ちょっと、あなた・・・」と声をかけてきました。「ひょっとしたら、お金をくれるのかなぁ」とも思い、あるいは「公序良俗に反すると注意されるのかなぁ」とも思い、「すみません」と一応謝っておいて、小走りに文房具屋へ。中国ではこういう、良いお節介のお年寄りが多いのです。 入るといきなり、おじさんが大笑い。私が欲しいと言ったコピー用紙を棚から引き出しながら、「お前、日本人で、有有銭なのに・・・」と言っています。「私はお金のない日本人」と答えると、レジカウンターのいつも無愛想なお姉さんも指さしで大笑い。 「反響が大きすぎるよなぁ」と後悔しつつ、店から出ると、公安(門番)の若い兄ちゃんが何か言いながら近づいてきます。 「しまった。捕まるのかなあ。いくら中国でもシャツで捕まるかなぁ。外事処に言うとすぐに助けに来てくれるんだろうな。逃げるとやばいだろうなあ。でも小銃持っていないしなあ」などと思っていると、「自転車はあっち!」とのこと。見ると、「自転車置くな!」の看板があります。私の知らないうちに文房具屋の横は駐禁になっていたのでした。 冷や汗をかきながら、シャツの前を隠すように、専家楼へ。帰るとポルトガル語専家のアメリゴさんが、いつものようにロビーでシャオジェと中国語の練習中。(逆にシャオジェはポルトガル訛の英語を勉強。)アメリゴさんは「オウ、タカ」と手を挙げますが、私のシャツには何の反応も示しません。当然ですが・・・ シャオジェが変な英語で「没有銭」の説明をしますが、なかなか通じません。結局、私が「イット ミ〜ン アイ ハブ ノウ マニイ」と説明すると、「オウ、俺も欲しい」と言います。「I メイヨウチエン too」。アメリゴさんも中国語がだいぶ上手になっています。 その間もシャオジェは大笑い。苦笑いをして、部屋に戻ろうとすると、シャオジェの1人が「そのTシャツ、太酷!」と言います。酷はcoolの意味の流行語。「どこで買ったの?いくら?」と、とても興味深そう。「まあまあかっこいいんだ」と少し安心しながら階段を上ってくると、前外事処所長で、現在、専家楼で何をしているかわからないけど、いつもいて、とても親切なおじいさんが、心配そうな顔で「中山さん、それは止めた方がいい。」と言います。「なぜですか?」と聞くと「あなたは先生だからねぇ。」 まあ、それ以来、一度も着ていません。やはり私は目立つのが嫌いな日本人でした。 写真は、 ・問題のTシャツ。 ・船の中の大勢のドイツ人。女の子は、ドイツ人夫婦の養女らしい。 ・一般的な陽朔の山並み。 |
|