広州だより 茘枝狩り

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1999.7.3
 今年は50年来の豊作となった茘枝(レイシ、中国語でリージ)。
もう、毎日食べています。一斤(500g)、3元(45円)から7元で安くて美味しい。時間の経過と同時に、おいしさが落ちていくので、果物屋さんを毎日チェックしています。

 私が授業で「日本でレイシはとても高くて、それほど美味しくない。」と言ったので(何も強要したわけではありません)、学生が「昨日、故郷から送ってきた。」とか、「朝、採ってきた。」と言って、持ってきてくれました。やはり、朝取れたのは美味しい。しかし、採ってすぐはもっと美味しいはず・・・・・・。

 と言うことで、期末考査を控えた、7月3日(土)、増城市にライチ狩りに行ってきました。大学のマイクロバスを丸1日600元(高速代金含む)で借り切って、同僚の保刈先生、侑香の友達の白梅さん一家5人、私たちの中国語の家庭教師の夏さん(華南師範大学の学生)、そして、今回の茘枝狩りの手配をしてくれた程君、総勢13人で出かけました。

 程君は、本当はこの夏に卒業だったのですが、もう1年勉強をすることになり、現在アルバイト生活中。朝鮮華僑なのですが、お兄さん・お姉さんがしっかり広州で活躍しているので、生活に困ることもなく、もう1年、年下の彼女のいる大学にのんびりと残ることができるのです。現在、韓国の企業の通訳などでアルバイト代を稼いでいて、暇なときはよく遊びに来るので、茘枝園の予約などを頼みました。なかなかおもしろい子で、中国人には珍しく冗談が多い。私が「全くおもしろくない」と言うと、「先生の冗談もぜんぜんおもしろくないけど、私は笑っているのです。だから先生も笑って下さい。」というような子です。まじめでとは言えないのですが、優しい子で、気が合うのです。

 さて、程君が電話番号帳で探し出した茘枝園は増城市の「茘枝世界」という、観光農園。広州から約1時間半ぐらいのところです。増城市は別名「茘城」と呼ばれるほど、茘枝の有名なところ。かの昔、茘枝が大好きだった楊貴妃のため、人馬で8昼夜かけて長安まで運んだ茘枝もこの増城のものだとか、市の入り口には大きな茘枝のモニュメントまであります。

 増城の市街を抜けると、一面、茘枝畑というか茘枝山というか、とにかく一面茘枝の木ばかりです。増城市に入るまで、道ばたには1個1元のパイナップル売りが並んでいたのですが、増城にはいると、茘枝売りの人達が店を並べ、赤いビニール袋を茘枝の木に結びつけたものをしきりに振り、阿蘇山のトウモロコシ娘のように存在をアピールしています。

 さて、着いたのは「茘枝世界」と書いた4階建ての新しいビル。ここで、受付をして、案内のおじさんとお姉さんのバイクに先導されて、予約した山に行きます。運転手さんが「こりゃ、まいったな」というでこぼこ道をすごい砂埃をあげて進み、茘枝山へ。

 そこには「已約(己でも巳でもありません、已然形の已)」と書かれた看板の木がありました。入山料一人30元、子どもは半額、お持ち帰りは5キロ50元とのこと、広州で買うのよりずっと安い値段です。しかも、品種は最高級の「桂味」。

 しかし、ここは中国、ここから交渉。程君に交渉してもらい、私は側から「高い。私たちは日本人だがお金は持っていない。貧乏な日本人だ。」を繰り返します。結果、380元でこの木を好きなようにしてもいいとの事になりました。

 側では、茘枝畑管理人の子ども達がいて、その姿をみると500元くらいでもいいかな、とも思ったのですが、その子達がなぜか小屋の中でキーボード(楽器)を出して遊び始めたので、「なんだ茘枝大尽じゃないか。」とも思い、ねばった結果です。

 しかし、茘枝農家にとって、今年の豊作はかなり厳しいのだそうです。大豊作による価格の暴落で、手間賃が出ないのだそうです。実際のところ、私たちのような「茘枝狩り」で日当をだしているとのことでした。
 
 さて、なんの気兼ねもなく、茘枝を好きなだけ採ってお土産にできます。また、これが本当に美味しい。私は果物はそれほど好きなのではないのですが、これは素晴らしい。やはり取り立ては違います。いくつでも食べられます。うっかりするとのどが痛いくらい甘い。しかし、さっぱり。水分もたっぷりで、芳香もあります。

 広州の人は茘枝は「熱」の食べ物で、あまり食べてはいけない。特に酒と一緒に食べると体に非常に悪い、と言います。が、私たち家族は広州にいる間に一生分食べてやる、という意気込みです。

 おじさんは「そこらあたり採ってもいいのだけど、うまいのは全部採っちゃったから、残っているのはみんなまずいよ。」と言います。試しに何本か採ってみたのですが、程君の予約しておいてくれた結果残っているこの木が最も美味しい。

 男達は木に登り、女達は手を伸ばし、子ども達ははしゃぎながら、運転手さんも含め、みんなで嬉々として茘枝を採り、食べました。

 私たちの採ることのできなかった高いところは、専門のおじさんが、私たちの「おお、さすがプロ」という歓声を聞きながら採ってくれました。みんなたらふく食べて、お土産は5キロ入りのボックスに約8箱。

 ほんとうに日本に送りたい気持ちでいっぱいなのですが、検疫でひっかかってしまいますし、時間と共にまずくなるという果物でもあります。広東省では品質を落とさず輸出する方法を開発した人には高額の賞金を出すという告示まであるそうです。

 毎日、蒸し暑い広州ですが、こんなにおいしい果物がいっぱいです。茘枝の季節は7月中旬までだそうです。
レイシ1 レイシ2 レイシ3
箱詰め作業 茘枝の木 本職の茘枝とりさん

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