李白の怒り 枠

 中山は中国でふざけた毎日を送っていてけしからんというメールをいただきましたので、真面目な話を・・・・

 今、私は来週の日曜日に開かれる広州市の弁論大会の練習に明け暮れています。広州市にある日本語かを持つ4つの大学と、広東省内の2つの大学が参加し行われるのですが、本年度は曁南大学が当番校。是非とも優勝をしなければならないそうで、選手に選ばれている学生は寝る時間も削って、日本事情の勉強をしたり、2日に一回の弁論の練習をしています。私もかなりおつきあいしているのですが、少々疲れています。

 そんな中、生徒の弁論練習を待つ間、こんな話がありました。
 私が持ってきた日本の国語便覧を見ていた、李先生が「中山先生、大変です。この教科書間違っています。大きな間違いです。李白は怒っています。」とあわててやってきました。

 この先生は一昨年大学を卒業し、1年日本に留学をして、今年曁南大学で初めて先生になった方。初めて見たとき、私はてっきり、私より年上だと思っていた先生です。その先生は「国語便覧」の「静夜思」を指して、かなり緊張しています。続々と先生方が集まり、話し合いの結果、便覧には2箇所の故意的な間違いがあることがわかりました。

 しかし、便覧の「静夜思」は私たちがよく知っているものです。

便覧に載っている「静夜思」は
   床前看月光   床前月光を看る
   疑是地上霜   疑うらくは是、地上の霜かと
   挙頭望山月    頭を挙げて山月を望み
   低頭思故郷   頭を低(た)れて故郷を思う

 中国の先生方は
  首聯「床前名月光」は「床前名月光」、
  頸聯の「挙頭望山月」は「挙頭望山月」
 が正しいというのです。

 中国の古い文法「古代語」では「看」はまず使わないといいます。その上、これは月光が射してくるのを認識するのだから「看」てはいけない。そして、この月は満月でなくてはいけない。平仄も会わない。
 この詩について元々の詩と少し違っていることを私は聞いていましたので、「日本人の感覚に合うよう、少し直したんでしょう。」と軽くいいますと、「それはいけません。論理的におかしい。中山先生のお力で何とかして訂正して下さい。

 「この詩は中国の小学生でも知っています。日本の学生が間違った詩を覚えるのは大変悲しい。地下の李白は怒っています。」 という事で、許して貰えそうにありませんでした。全国に広まっている「床前看月光」を私は1人で訂正に回るわけにはいけませんので、地下の李白から恨まれることにします。

枠

広州だより

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