広州散髪事情 |
1998.11.25
8月、出発前に名張市内で散髪をして以来、3ヶ月とうとうたまらなくなり、理髪店に行きました。 中国にも散髪屋はたくさんあり、大学内にも3軒ありますし、日曜ともなれば、大学の門を出てしばらく行ったところに、ハサミ一丁の、街頭理髪店が並びます。 しかし、街頭は論外として、大学内の店に行くにもかなり勇気がいります。 まず、煮染めたような色のタオル(街頭ではそれもありません。) 次にギャラリーの視線。みんなよほど暇なのか、その理容師の腕前をみるためか、長い間散髪の技を見学しています。 それからスタイル。時々、若者でも失敗したような髪型の人がいるのでうまく自分の意志を伝えられなかったらどうしようと悩みます。 中山大学の日本語専科、中村先生は面倒なのでスキンヘッドにされていますが、その勇気も私にはありません。 しかし、長い髪がどうしても我慢できなくなり意を決して、大学内の高級そうな店に入りました。 まず、シャンプーを10種くらいの中から選びます。それぞれ5元から10元くらいの間で値段が決まっています。私は日本でもみたことのあるリジョイを選びました。8元です。 するとシャンプー係のオネーサンは、煮染めたようなタオルを私の肩に掛け、おもむろにシャンプーを原液のままドボドボとかけます。店に入ってから、なにも触っていない頭に30CCくらいかけるのです。次にペットボトルに入った水。これもドボドボとかけます。泡が煮染めタオル以外何も防備していない私のシャツにかかります。爪で洗うので、頭皮が痛いのですが、「痛い」という中国語を知りません。日本語で言うと、笑ってそのまま続けます。 中国へ来て、ボディーラングイッチは大変便利な物と悟りましたが、「痛い。」というのは、表すことができませんね。 もうそろそろ、頭皮から出血が始まるのではないか、白いシャンプーと血が混じり合うとピンクになるのかなぁと思った頃、オネーサンは奥のイスを指さしました。その前には小さな洗面台。泡を洗い流すのです。 痛みから解放され、逃げるようにイスに座ると、すぐとなりの部屋で昼御飯の用意のため、野菜が油で揚げられています。冷たい水から、暑すぎる湯へとガス瞬間湯沸かし器の原理に感心し終わると今度はカット係りのオネーサンの登場です。 恐らくどうするのかと聞いていると思い、日中辞典に載っていたとおり、「どうか全体に短くして欲しい。」とお願いします。しかし、案の定、通じません。 手で、短くするジェスチャーをすると、オネーサンは笑顔で頷き、赤い草書体で「とうきょうしんじゅく」と書いた、風呂敷のようなものを私にかけ、カットを始めました。 しかし、「とうきょうしんじゅく」とは何のことでしょうか。こんなことが、中国ではよく起きます。 「電脳城(広州の秋葉原)」でプリンターのインクを買ったときの袋は「京都名物 おたべ」と書いてありました。舞妓さんの絵も描かれていました。 「新宿で修行したのかなぁ。そんなことないよなぁ」「中国のブランドかなぁ。」「なんでひらかななのかなぁ」と考えているうち、すごいスピードでカットは終わり、「これでいいか?」と聞いているようです。 しかし、前頭の私の特に薄い部分にはハサミが触れられていません。切ってはかわいそうだと思ってくれたのでしょうか。 嬉しい配慮ですが、しかし眼鏡をはずした私の目から見てどうも変です。髪がしっかりしている側頭は、切りすぎかなぁと思うくらい短いのですが、細く少ないとは言え、3ヶ月間延ばした前頭はかなり長く、おろすと目にかかります。 ここも切ってくれとジャスチャーすると、いいのかと念を押すようです。何度か頷くと、オネーサンは惜しげもなくさっぱり切ってくれました。ほんとうにサッパリと。 以上、シャンプー15分、洗髪2分、カット5分くらいでした。値段はシャンプー液代含め13元(200円弱)。首筋に入った毛がちくちくしますが、大変安く、思ったよりうまくできて、満足でした。 次の日、教室に入るごとに、学生がわーわー言います。「若くなった」「先生はそんな顔だったのか。」と異常な反響です。私が得意そうに「たった13元だった」と言うと、またしても生徒は「先生高いよー。普通5元だよ。」 「先生、髪少ないから負けてもらうべきだった。」など真剣なアドバイスを受けました。 道端では1元から2元。普通10元だそうで、あの「とうきょうしんじゅく」の店は高級なので、学生はあまり使わないとのことでした。 |