広州だより ビザがない!

枠

1999.3.2

 新年好! 一時帰国や春節で体も頭もなまってしまい、ご無沙汰のたよりです。
さて、中国のハデとは聞いていましたが、これほどとは思いませんでした。町中何日もお祭り騒ぎなのです。

◆爆竹
 広州市内は爆竹は禁止されていますが、それでも大学内でも、こっそり、バババババッと大きな音が響きます。初めは「うるさいなあ」と言う感じなのですが、側で聞き続けていると「鼓膜がさけてもいいから、もっと強い刺激をくれ〜〜ッ!」という倒錯した感覚に襲われます。体についた古くて悪いものを落とし、生まれ変わるいう意味なのだそうですが、ほんとうに体の新陳代謝が一気にすすむような快感です。

◆金と赤
 どうして中国人はこんなに「金と赤」が好きなのでしょう。繁華街はもう街全体が金と赤です。そして、「おっちゃん、こんなん買うくらいやったら、もうちょっと店きれいにしたら?」と思われるくらいのお店も「福」を逆にしたのやら男女の子どもが旧式の「礼」をした赤と金の飾りをこれでもかと飾ります。

◆帰省
 2月、大学はひっそり。お店もほとんど閉店。みんな故郷へ帰ったのです。春節は家族でゆっくり過ごす日。職員も学生もみんな故郷に帰りました。テレビは、毎日、広州駅や長距離バスターミナルが大混雑であることを伝えていました。お金がなくて帰れない人もとりあえず駅やバスターミナルへ行くのでスリに気をつけなくてはいけないとのことです。



 そんな中で、春節とはあまり関係ない話題。

 広州に遊びに来た私と妻の母を連れ、私たちはマカオで春節の3日間を過ごしました。
マカオは今年の12月、中国に返還。急ピッチで工事が進められています。

 マカオに住むポルトガル人(女房の友達の友達)によると、「どうだマカオをポルトガルに貸してよかっただろう、こんなにきれいになったんだぞ。」という意地を見せるための工事なのだそうです。もし日本なら後少しで返還する土地にお金をかけるだろうかと考えてしまいます。

 しかし、お陰で陸橋にはエスカレータがつき、美しい景色の道路は石畳、たくさんの美しい博物館と、観光客にとってありがたいことこの上ない町になっていきます。

 ポルトガル領最後の春節も見たいし、香港より安くリッチな気分が味わえるので、私たちは、広州からバスで2時間半、90元でポルトガル領マカオに行きました。妻は3回目、私は2回目でした。

 マカオでは私の母がマカオ総督からお年玉をもらったり、巨大獅子舞や巨大爆竹を見たり、楽しい旅行を終え、中国に再入国しようとしたときのこと。

 家族を先に済ませ、最後に入国審査を受けた私に係員のお姉さんは「ビザがない。」と言います。そんなはずはないと、パスポートを取り戻し見ますと何と私が最近とった最新の2回使えるビザに「キャンセル」の印が押してあります。

 ややこしい話なのですが、2月の日本への帰国に備え、前から私は1回のビザを持っていました。しかし、マカオへ行くことになったので1回のビザをキャンセルし、2回のビザを申請したのでした。しかし、どこでどうなったのかわかりませんが、1回の方が残り、2回のビザがキャンセルされていたのでした。1回分は日本へ帰国した際すでに使い、この時点で私はビザを持っていないことになってしまいました。

 「見ての通り、子どもと年寄りを連れていますので、何とか見逃してください。」
と無理を言ったのですが
 「状況はわかりますが、ビザがないと通りません。」
と係員は言います。当たり前です。母はゲートの向こうから
 「何とかもう一回わけ言うて、丁寧に頼んでみ。」
と言いますが、許してくれるはずはありません。

 この時点で時間は午後6時、帰りのバスは6時30分に、この税関を出たところから出発です。しかもそれが最終。

 途方に暮れた表情を作ると、
「入国管理室に行くとビザが出るかもしれない。急いで行ってみなさい。」
とのこと。入国管理室の場所を聞いて、急ぎました。妻に
「心配はいらないから、戻らなければ帰れ。」
妻は
「あなたのことは心配しないが、私たちを心配してほしい。何とか6時半までに戻ってくるように。」
と言いますが、望み薄。中国は招聘状がなければ基本的に入国はできないのです。

 しかも滞在ビザは審査も厳しい。外国人居留証は持っていますが、居留すべき根拠となる「外国人専家証」は大事なので広州にあります。しかし、一縷の望みを託し、全力で走って5分。一発で入国管理室にたどり着きました。

 ありがたいことに人はあまりいません。息せきって、
「ビザを下さい。」
と言うと、かなり厳つい顔のお姉さん、
「これに書け。」
と申請書をくれます。なんとか書き終わり渡すと
「100香港ドルを持って明日の午前中もう一度来い。」
と言います。そんな悠長なことは言っていられません。あと25分で中国側に出なければいけないのです。

 「私は3人の子供、2人の母親を連れて、6時30分のバスに乗らなければならない。このビザのキャンセルが間違いなのだ。20分でビザを出してほしい。」
と自分でもびっくりするくらい上手に英語で言えました。答えは
「少し待て。」
かなり厳つく、肩幅も男以上にあるお姉さんは奥の方に消えました。

 しばらくして出てきて、
「お前は大学の教師なのか?」と聞きます。そして
「『外国人専家証』を見せろ。」
「それは今、持ってない。しかし『居留証』ならある。」
「居留証か、少し待て。」
「あまり待てない。6時30分に帰らなければならない。」
「わかっている。座って待て。」
と低い声でまた奥に消えます。相変わらず無表情、鼻の下にうっすら髭が生えています。どういう理由かわかりませんが、中国では時々うっすら髭を生やした女性を見かけます。

 いらいらすること5分、その男らしいお姉さんが出てきて、
「何とかする。写真が一枚出せ。必要だ。」と言います。

 そんな証明写真を持ち歩いているはずがありません。「ない」と言いますと、また「少し待て。」
【待てないんだよ。だめなら、だめと言ってくれ。】と心の中で叫び続けますと、ポラロイドカメラをもって現れ、
「20香港ドルいるがいいか。」と言います。そして太い節くれ立った指でシャッターをきります。

 そしてまた奥へ。すぐにまた現れ今度は
「ここでは観光ビザしか出せない。」【ゲーッ】
「しかし、何とかしてもいいとボスが言った。」【ああ、なんと!しかしそんなこと許されるのか?】
「だから、申請書を書き直し、「観光」としろ。あとは何とかする。」【いいのかなぁ】
「100香港ドルが必要だ。マカオペセタでもいい。」【ああ!中国元しかない】
「ないのならそこの人に替えてもらえ。おい、この日本人に元と香港ドルを替えてやれ。」
 隣のベンチのおじさんに両替してもらい、渡すと
「あと、10分だな。もう少し待て。」
とパスポートを持って奥へ。しかし表情は厳つい。声も低い。

 そして
「なんとか間に合った。しかしこれは観光ビザだ。広州に帰ったら必ず滞在ビザに書き換えてもらえ。必ず大学の事務所に行け。いいか、わかったか。滞在ビザにするんだぞ。よし、わかったなら走れ!」

「太謝謝!、サンキューベリーマッチ、ありがとう。」と全力で駆け出しました。さっきのゲートでは、さっきの人が「グッド、OK」とにこにこ顔で、ほとんどチェックなして通してくれます。そこからまた全力で走り、女房が「もう少し待ってほしい。」と交渉しているバスにたどり着くことができました。

 中国の役人は、融通がきかず、不親切とよく聞きますし、実際そんな場面も何度かありました。しかし、この係りの人は確かに厳つい表情のままでしたが、非常に親切でした。いろんな人に聞いても20分でできたビザは信じられないとのこと。

 まあ、しかしこのハプニングの発端は公安局のキャンセル印の間違いなのですが・・・・。

 最後に娘(小2)がマカオで作った俳句(春節休みの宿題)を・・・・・
     春節の マカオにオカマ いなかった (季語:春節)
マカオの春節 ジャスコ
マカオの巨大龍
春節のジャスコ(広州)の特設会場

枠

広州だより
HPへ