2006/9/9
中川博司 社民党長野県連合幹事長
平和憲法空洞化へまっしぐら

■安倍晋三自民党総裁選候補者「新しい憲法をつくる」は大問題

自民党総裁選が、9月8日告示され安倍晋三官房長官・麻生太郎外務大臣・谷垣禎一財務大臣の3人で戦われるようですが、これまでのところ安倍晋三氏が有利で、26日に召集される第165臨時国会で首相に指名されることになるでしょう。これから日本の最高責任者になろうとするその安倍氏は、9月1日立候補表明を行い「新たな憲法の制定」「日米同盟の強化」「教育改革」を打ち出しています。特に「新しい憲法をつくる」という考え方は大きな問題があります。

第1に、憲法99条の「憲法を尊重し擁護する義務を負う」国会議員が、自ら「新しい憲法をつくる」ということは、99条に違反することになります。

第2に、憲法制定権は国民にあるのであり、国会は発議権を持っているだけですから、国会や総理大臣に「新しい憲法をつくる」権利はありません。それを無視するというのであれば、それこそ主権が国民にあることを真っ向から否定することになります。

第3に、「新しい憲法をつくる」とは、「憲法改正」を意味しているのではなく、まったく新しい憲法をつくるのだとしたら、それこそ時代錯誤・国際的な認識を持ち合わせていないことになります。自民党の加藤孝一元幹事長でさえ「新しい憲法をつくることは、革命かクーデターか、戦争の後でもない限りできない」と批判しています。

このような憲法違反の発言をする国会議員を、国民は「憲法を守れ」と激しく批判することがなければ、権力者の発言はどんどんエスカレートし、「現行憲法の解釈を変えて集団的自衛権を認めるべき」とまでいい、アメリカ軍と一体となって世界中で自衛隊が戦争を行うことができるようになってから「おかしい」と言ったのでは間に合いません。

■MD計画の推進強化―『2006年版防衛白書』―

8月1日発表された『2006年版防衛白書』は、北朝鮮のミサイル発射という事態や中国の弾道ミサイル配備を理由とし、MD(ミサイル・ディフェンス)の推進を国民に容認させ、海上配備の迎撃ミサイルSM3(スタンダード・ミサイル3)や陸上配備のPAC3(パック3)を早期に導入しようとしています。

阿部官房長官は北朝鮮のミサイル発射実験について「船舶・航空機の航行の安全に関する国際法に違反している」と言っていましたが、その後韓国政府は朝鮮がミサイル発射前に航行禁止区域を設定していたことを把握しており、日本政府だけが知らなかったわけがなく、最近の報道でいつのまにか把握していたことを前提としているように、国民の不安を増幅させてMDの推進に意図的に利用してきたことは明白です。

さらに、阿部官房長官は「ミサイル等の基地をたたくことも検討研究を行うことは必要ではないか」と敵基地先制攻撃論を展開しました。これを受けて自民党国防部会は「敵基地攻撃能力保有」に関する議論に着手しました。しかし、敵基地攻撃能力保有論は、侵略を容認するもので憲法に違反すると同時に、アジア諸国に対して大きな脅威を与えるものとなり、許されるものではありません。

MD費用はSM3一発20億円、PAC3一発5億円、SM3の海上配備のためのイージス艦の改装費1352億円、PAC3配備のための費用は1404億円と防衛庁が明らかにしている費用は、当面の額だけでも1兆円以上になります。そして在日米軍再編のための費用負担が3兆円、毎年支出している米軍の駐留経費は6000億円を超えています。国民が「脅威論」にまんまと乗せられれば、今後重い税負担が返ってくることになります。

■進む日米軍事一体化

在日米軍再編は、沖縄の基地負担を軽減するものではなく、本当の狙いは日米軍事一体化です。在日米軍再編とあわせて、横田基地(在日米軍司令部と米空軍第5司令部と航空自衛隊総司令部)、キャンプ座間(米陸軍第1司令部と陸上自衛隊中央即応司令部)、横須賀港(米第7艦隊と海上自衛隊司令部)と首都圏に米軍と自衛隊の司令部が同居することになります。つまり、アメリカの軍事戦略の中に自衛隊を組み込むことを目的としているのです。

『防衛白書』でも「防衛省への昇格に伴い、国際平和協力活動を自衛隊の主任務とし・・・日米の役割・任務・能力、周辺事態での共同作戦計画・相互協力計画を検討し・・・空港・港湾の利用など有事体制を継続する」とし、米軍と一体となっての自衛隊の派遣と「銃後を支える国内体制づくり」を目指しています。残るは「集団的自衛権」行使容認の解釈改憲の手続きだけという平和憲法空洞化まっしぐらの内容となっています。何でもかんでもアメリカの言いなりで、日本は本当に独立国といえるのでしょうか!