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2005/08/01
社民党長野県連合代表 山口わか子
労働組合や市民団体が狙われる恐ろしい共謀罪
■話し合っただけで罪なる?
話し合っただけで罪を犯す恐れがあるという理由で、戦前の治安維持法にも匹敵する共謀罪の新設を盛り込んだ「処罰の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」、なんとも長ったらしい法律案が法務委員会で審議されている。郵政民営化の陰に隠れて、国民を警察権力で有無を言わさず逮捕できる法律案を多数の力に物を言わせ、成立させたいと画策したようだが、さすがの混乱国会で今期は見送る方針を固めたという。しかし次期国会には成立を狙っていることは確かだ。
危機意識を持ったジャーナリストや弁護士、作家など約250人が28日、「法案の本質は思想・言論表現の圧殺で、密告社会を促進する」として廃案を求める共同声明を発表した。
共謀罪がどれほど危険なのか、それは犯罪を冒して始めて逮捕、処罰の対象となるのに比べて共謀罪は何も悪いことをしていないのに、話し合った(共謀した)だけで逮捕され処罰されてしまうからだ。
■特に労働組合がターゲットにされる
共謀罪とは、「罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者」というらしい。しかも団体の定義があいまいで、何でもすべて適用範囲にしてしまう危険性が大である。
例えばある会社で、リストラの一環として1つの工場を廃止して、別の遠方の工場へ縮小統合することになり、一部の労働者の配転と残りの労働者の解雇を決めた。会社の一方的なリストラによる配転と解雇に反対して、労働組合は他の労働組合の支援も受け、争議行為にはいった。こうした労働者の動きを警戒した会社は、ひそかに組合事務所に盗聴器を取り付けた。
団体交渉では社長が出席しないことから交渉は進展せず、労働組合の強い要求でようやく社長の出席は実現したが打開のめどは立たず長時間の団体交渉を継続すると意思統一した。
会社の労務担当は組合事務所での会話を盗聴することによって、この動きを知り、警察に相談した。警察は、組織的に社長を監禁することを共謀しているとして、組合執行部を組織的監禁共謀罪で逮捕した。執行部が逮捕された労働組合では闘うことができず、会社の提案をそのまま受け入れざるを得なかった。・・・このように憲法に保障され、労基法でも正当な争議行為をしているのに、共謀したとして摘発されてしまうとんでもない法案だ。
■事実はなくても裁判所が判断すれば共謀罪が成立
いまの刑法では、犯罪の被害が発生したときに限り処罰するのが原則だ。未遂罪は、被害発生の危険は生じたが被害の発生には至らなかったような場合に処罰される。例えば人を殺すために毒入りウィスキーを小包で発送しても、まだ殺人の未遂罪ではない。その小包が被害者のところに届いたときに、初めて未遂罪が成立する。
しかし、共謀罪は被害の発生も必要がなければ、差し迫った危険の発生すら必要はない。それは単に心の中で思ったこと、考えたことを処罰することができる。いかなる思想・信条であろうと、それ自体を処罰してはならないという憲法の規定を骨抜きにするものであり、絶対に許されない。
■共謀罪は監視社会を進み国家権力を強める社会に
最近、国民・住民を監視・管理する法律が次々と制定・準備されている。盗聴法、有事法制(国民保護法制)、住基ネット、生活安全条例、監視カメラ、そして共謀罪、これらが成立したら私たちの社会はどうなるのか、想像するだけでも恐ろしい。
2004年2月、立川防衛庁官舎にイラク反戦ビラを入れていた市民団体3人が逮捕された。容疑は住居侵入罪だという。まさか!今までビラ配りは日常ごく当たり前に行われていた筈だ。理由は「恐らくビラの内容が政府に都合の悪い自衛隊のイラク派遣反対だったからだろう。このような派遣反対者を些細な容疑で逮捕する行為は、戦争中の特高警察を思い出させた」とは市民の声である。
2005年3月4日、東京都町田市の都立高校卒業式の日、正門前のバス停付近で「日の丸・君が代」強制反対のビラをまいていた労働組合の活動家の二人が建造物侵入の容疑で逮捕された。東京地裁は学校の門外であるとして建造物侵入とはいえないと却下した。
このように最近では犯罪が多発しているという理由で防犯カメラという名の監視カメラが街中に設置されており、住民は知らない間に撮影され、場合によっては警察にデータが提供されている。また各自治体で生活安全条例の制定が広がり、住民に地方自治体の施策に協力することを義務付け、住民相互がお互いに監視するシステムを作り出している。
共謀罪が成立すれば、こうした事実に基づく行為がなくても「共謀したに違いない。総合的に判断して、共謀しても不自然ではない」と裁判所が判断するだけで共謀罪になり、逮捕される。そうなると国家にとって都合の悪い人間は「いまの社会で危険だ」となり簡単に逮捕され処罰されることになる。
あくまでも処罰の対象は「行為」がなければならず、行為もないのに国家が人を罰することは憲法で許されてはいない。
犯罪とはあくまでも社会に対して「害悪をもたらす」ことが前提であり、そうでない限り私たち市民はどのような行為も自由であり、国家が市民を裁く権利はない。こうした危険な「共謀罪」の新設は強行に反対しよう。
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