2005/07/14(トップページへ戻る)   視点論点
社民党長野県連合幹事長 中川博司
障害者自立支援法案に異議あり!

13日衆議院厚生労働委員会において、障害者自立支援法案が自民公明党の賛成多数で可決し本会議に付され、参議院へ送られる。しかし、委員会で付帯決議が11項目に及んだこと、政省令にゆだねられる部分200項目以上あることは、そもそも法案そのものに根本的な問題があることを物語っている。

■余りに拙速な自立支援法案
 郵政民営化法案の審議に隠れて、今国会で介護保険法が改正され、要介護者へのサービスが予防目的に限定され、必要なサービスが受けることができなくなる恐れや、居住費・食費が自己負担となる改悪がされた。そして、今度は「障害者自立支援法」である。これまで障害者福祉は「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」「精神保健福祉法」「児童福祉法」により、福祉サービスが提供され、2003年度から身体・知的障害者の障害福祉サービスの利用方法が、従来の措置制度から、利用者が受けたいサービスを選び、指定事業者と契約を結んで利用し、その費用として市町村が支援費を支給する支援費制度に変わった。
 2004年障害者基本法に「障害を理由とする差別の禁止」が加わるなど、ようやく障害のある人もない人も社会の一員として、家庭や地域で普通に暮らしたいと言うあたりまえの権利がようやく保障されつつある段階である。
 ところが、支援費制度で余りにもお金がかかりすぎるという理由で、介護保険と同じようにサービスの提供を受けたら1割を負担するという、支援費制度に移行して、たった2年で制度を変えると言うのである。
 これでは、余りにも拙速だと言わざるをえない。

■障害者の実態を無視した法律案
 支援費制度により、在宅サービス利用が急増し、お金が不足したことは事実だが、それはこれまで、障害者の皆さんが差別を受ける中で存在が表面化してこなかったこと、サービスを受けたくても制度がなかったこと、同じ悩みを持つ親たちがお金を出し合って共同作業所をつくるとか、ボランティアの協力があって、どうにかこうにか生活をしていたのであり、実態を正確につかまずに計画を立てた政府にこそ問題がある。
 今回の障害者自立支援法は、これまでの障害の種別によるサービスの提供から、ニーズに合わせた共通のサービスを一体的に行うものだが、介護保険制度と同じ認定制度を導入し、認定段階に基づいたサービス量を決めることとなっている。しかし、現在の介護保険の認定でも認知症の方は、正確に反映されにくいという問題点が指摘されている中で、精神障害の方の認定が本当にできるのか?障害の程度が重い人ほどサービスの利用量は大きくなるのは当たり前で、その分負担が重くなり、結果として必要なサービスを受けなくなり、自立とは逆に命綱を断つことになりかねない。
 また、サービス・医療費の1割負担を導入、施設での食費・住宅費を全額自己負担、負担上限額を決める根拠は利用者個人の収入ではなく、世帯の収入に応じて決めると言う。支援費制度では、負担能力に応じてまず利用者個人が負担し、不足分について扶養義務者「配偶者と子ども」に限定して負担を求めてきたことからも逆行する。
 例えば、障害年金1級の人は月額8万8千円。ある施設では、現在個人負担額が3万7100円だが、新法では利用料が上限の1万5千円に光熱費・食費が4万円となり、約2万円負担が増加する。世帯で収入がある人がいれば、負担増は4万5千200円となる。
 これまで、障害をもつ方の家族は、精神的・物理的・経済的に負担をしてきている。障害者が、憲法で保障している、「だれもが、どこでも、いつでも当たり前に暮らすことができる」ようにするためには、国が責任をもつことはあたりまえのこと。しかし、この法律では、軽減されるどころか負担増になる。法案は自己負担の強化と国庫負担の軽減を目的につくられたとしか言いようがなく、とても障害者基本法の理念に基づいているとは言いがたいものだ。負担増を求めるなら、その前に障害者の皆さんの所得保障と抜本的な就労対策を行うべきである。

■まだまだある問題点
@法案の問題点はまだまだある。障害者の働く場は、就労移行支援事業・就労継続支援事業・地域活動支援センターなどに分類され、現在ある授産施設・福祉工場などは再編され、共同作業所や授産施設を利用するのに新たな利用料が発生し「お金を払って働きに行く」というおかしな状況になる。
A障害児通園施設も利用者に負担を求めることや、育成医療の負担を増やすことは、教育途上にあることからやめるべきである。
B移動介護、ガイドヘルプや手話通訳が介護給付から、地域支援事業となり市町村の裁量に任されることになり、障害者の社会参加が保障されない不安がある。Cグループホームを再編し、重度向け「ケアホーム」と中軽度向け「グループホーム」にするという。障害の程度によって選別・分離して住む場所が決められるということは、居住権の侵害となる。またケアホームの人数規模の拡大は、ミニ施設化となり、本来グループホームが目指してきた地域の生活の場、施設から地域へ移行するための場ではなくなる。
D障害定義が、現行の身体・知的・精神・児童の各福祉法の定義をそのまま利用しており、国際的には、難病や発達障害者など「谷間の障害者」は依然と置き去りのままである。

■廃案、もしくは継続して慎重審議を
 このように障害者の実態を無視した問題だらけの法案であり、ここにきて精神障害者通院医療の存続を求める署名が、わずか3ヶ月で21万人以上に上り、7月5日に東京で開かれた集会には9千人が集まった。長野県議会も議会最終日本会議で国への「慎重審議を求める」意見書を可決、県内市議会でもいくつかの議会で意見書が可決されている。しかし、まだまだ国民に知らされていない状況があり、この点からも慎重な審議が必要であるし、いつ、どこで自分が障害者となるかわからないことから是非とも関心を持って欲しい。(トップページへ戻る)