クリーブランド
【クリーヴランドの地理】
クリーブランドはアメリカ北東部のオハイオ州にある都市で、ニューヨークとシカゴの丁度中間に位置しています。オハイオ州を含んでこれより西のアメリカ北中央部のことを一般に中西部 Midwest
と呼びますが、クリーヴランドは地理的にも経済的にも、またアメリカ建国当初はコネティカット州の一部(西部管轄地
Western Reserve )であったことから歴史的にも東海岸とは密接なつながりを持っています。州東側はペンシルヴァニア州、西はインディアナ州、南はケンタッキー州とウェスト・ヴァージニア州、そして北は五大湖のひとつエリー湖に接し、湖をはさんだ向かい側はカナダです。クリーヴランドはこのエリー湖の南岸に位置します。
【クリーヴランドの産業】
この巨大な湖はクリーヴランドの発展に大きく寄与してきました。五大湖のうち一番東にあるオンタリオ湖とエリー湖はナイアガラの滝で隔てられていましたが、19世紀初頭に2つの湖の間を結ぶ運河が開通し、大西洋からクリーヴランドまでの水路が確保されました。豊富な水と水上交通の便を生かして19世紀後半から60年代にかけてこの街は石炭、鉄鋼、自動車産業を中心とした重工業で非常に栄えました。その後、これら基幹産業の衰退とともにこの街も衰退の一途をたどり、米国内でも斜陽の街としての方が有名になってしまいました。しかしながら、80年代から産業構造転換策を図り、今では化学工業(ポリマー研究では世界最大規模)、バイオ関連産業、航空産業(NASAの研究所がある)、医療産業(全米2位の医療研究都市)などの現代アメリカを牽引する旗艦産業の中心地として再活性化が進んできております。
クリーヴランドを中心とするう半径500マイル(800km)の円の中にはアメリカとカナダの人口の半分、アメリカの全購買力の半分、全生産施設の半分が含まれ、多くのビジネスの戦略拠点として注目され、現在ではフォーチュン500(ビジネス誌Fortune
誌が毎年選定する全米の優良企業トップ500社)のうち約30社が本社を置いていますし、全米を代表する優良企業の多くが支社や研究開発部門を設置しています。
過去20年程、多くの企業をクリーヴランドの郊外に点在するインダストリアル・パークに誘致する政策を取ってきた為に、ダウンタウンとその周辺地区の荒廃が進み、一時は犯罪の増加等が問題になったこともありました。しかし、現在、ダウンタウンの活性化を目指すために西暦2001年を目途に再開発計画が進行中です。地元の銀行の本社高層ビル、モダンなショッピング・モール、ホテル、野球・フットボール競技場、バスケットボールのスタジアム等が建設されています。
【クリーヴランドの気候】
クリーヴランドは北海道とほぼ同緯度に位置し、アメリカではニューヨーク、シカゴとほぼ同緯度になります。夏の平均最高気温は28度(7月)で時には30度を越えることもありますが、シカゴやニューヨークよりは平均気温で3〜4度は低く、湿度が低いので気温が高くても比較的過ごしやすいと言えます。日中はともかく朝夕は10度台前半まで気温がさがることもしばしばです。
アメリカでは4月の第1週の日曜日から10月最終週の土曜日まではサマータイム(Daylight Saving Time)になるので、夏の間は昼間の時間が長くなります。6〜8月には夜の8時頃にようやく黄昏時を迎えることになり、例えばゴルフを午後4時にスタートしても1ラウンド十分に出来ます。梅雨はありませんし、ハリケーンのコースからもはずれていますから、夏の野外活動にはもってこいの気候だと言えます。これに対し、冬の寒さは非常に厳しく、平均最低気温はマイナス7度、最低気温がマイナス20度以下になることも、最高気温が氷点下になることもしばしばあります。(同時期のシカゴの平均最低気温はマイナス1度ですが、シカゴは年中風が強いのでもっと寒く感じます。) 日照時間も短く、12〜1月は朝8時すぎにようやく明るくなり、夕方4時すぎには暗くなる日が続きます。マイナス20度以下の寒さというのは、自動車のウォッシャー液がウインドウ上ですぐに氷つくぐらいの寒さですが、室内はどこでも暖房と防温がしっかりしているので実際にはそれほど寒さに身をさらすことはありません。実際に生活してみるとそれほど寒く感じることはなく、全面凍ったエリー湖を見て初めて寒さに気がつくぐらいです。雪もよく降りますが、あまり大量に積もることはありません。また、雪が降れば除雪車・融雪車が出て、道路の雪をすぐに取り除いてしまうので、タイヤのチェーンも必要ありません。
春と秋は比較的短いのですが、それだけに若葉が一斉に目吹き草木の花が一斉に咲き出す春と、突然訪れ、またたく間に散ってしまう秋の紅葉の見事さは、一見の価値があります。長く寒く暗い冬が終わりを告げて4月に入ると、街中の緑が一斉に目につきだします。樹木の間で鳥が鳴き出し、冬の間見かけなかったリスが駆け回るようになり、水仙、チューリップ、桜、さつき、紫陽花等が一斉に咲き出します。凝縮された生命の息吹を感じるひとときです。
秋は9月になると急に気温が下がりだし、中旬頃からは素晴らしい紅葉を楽しめるようになります。10月に入って小春日和(indian summer)の日がちょっと続いたかと思うと、ある日突然樹木の葉が一斉に散ってしまい、同時に夏の間クリーヴランド中の公園、ゴルフ場で見かけたカナダ鴨が北の空へ飛び立って行きます。クリーヴランドでは日本の都会では忘れられた「自然」を身近に味わうことが出来ます。
【クリーヴランドの生活環境】
日本の都会に慣れた人にはアメリカの街は道が広く、住宅の間隔がゆったりとしていて、緑が多くて驚きます。クリーヴランドも例外ではなく、ダウンタウン周辺でも住宅は密集していませんし、ほとんどの家には広い前庭がありますので、なんとなくゆったりとした雰囲気があります。ダウンタウンはカヤホガ川(Cuyahoga
River)がエリー湖に流れ込む河口に位置します。高層ビルもありますがその数は少なく、車で5分もあれば通り抜けられる程度の大きさです。このダウンタウンを要として郊外が大きく扇状に広がっていて、ダウンタウンから車で45分程度までの地域がグレーター・クリーヴランドと呼ばれる通勤・経済圏を構成しています。
このグレーター・クリーヴランド地域の外側をエメラルド・ネックレスと呼ばれる美しい緑の公園地帯Metropark Area がぐるりととり囲み、その中には動物園・植物園を始め、ピクニックやキャンプ、乗馬、テニス、釣り、カヌー等の楽しめる様々な公園があり、週末には家族連れで賑わいます。また、クリーヴランド周辺にはパブリックのゴルフ場も約60あり、待ち時間無しで驚くほどの低料金で楽しめます。
また、世界的に有名なクリーヴランド・オーケストラを始め、各種の美術館・博物館、ミュージカルやオペラが行われる劇場がいくつもあり、全米リーグのプロスポーツも野球、フットボール、バスケットボールと揃っています。同規模のアメリカの都市では決して味わえない水準と種類の文化・娯楽施設が整っていると言えます。
【クリーヴランドの治安】
世界一安全な国・日本から来る人がアメリカに住む際に一番気がかりなことに治安があります。クリーヴランドの治安はアメリカの同規模の都市の中では比較的良好だと言えます。特にケース・ウェスタン・リザーブ大学のキャンパスのある
University Circle とその南西に広がる高級住宅地では犯罪件数も少なく非常に安全だと言えます。アメリカの他の都市から来た学生も当地の治安の良さには驚いているようです。
しかし地元誌やローカルのTVニュースでは強盗等の犯罪のニュースを良く耳にしますので、やはり犯罪に神経質にならざるを得ません。犯罪を避けるには犯罪の多い地区に入り込まないことが一番で、学校に比較的近いところで治安が悪いと言われているところは、ダウンタウンとUniversity Circle の間の地区、University Circle の東側からEast Cleveland にかけての一帯です。これらの地区には廃墟となったビルが点在していたり、商店の窓に鉄格子が付いていたりして、昼間でも異様な雰囲気があります。また地区の人口の8割以上が黒人で、決して人種差別をするわけではありませんが、最初はなんとも不安な気持ちにさせられます。ただし最近のアメリカの好景気のおかげで、この地区の治安も改善しているようです。なお、University Circle 内はこの地域専門の警察が24時間パトロールしている他、キャンパス内で夜遅くなった場合には構内電話で連絡すればUniversity Circle 内の最寄りの駅・バス停、あるいは寮まで警官または警備員がエスコートしてくれるサービスがあります。
Source: WSOM Cleveland 便利帳