オールドホンダ学園  その2





〔 T360編 〕

我が家から離れる事 900km。 遠い地にて走る事を忘れたT360が置き物化していました。
そんなある日、旧車仲間からT360があるんだけど・・・。
現在は書類も無いけど、持ち主もハッキリしているので再発行できると思うのだけど。
保管されている場所を聞いて、躊躇している私に、運んであげるからと。
そこまで言ってくれるなら、是非譲っていただきたいと。
現状はブレーキも効いて、エンジンも実働との事。
塗装は自分で自家塗装したとの話でした。
T360の中でもAK250とBK250と大きく分けて2タイプの中でAK250です。
キャブはケイヒンの4キャブではなく、ソレックスの2連キャブ。
ボンネットはプラスチックだよとの事です。
とりあえず写真でも見てからと言うのが普通ですが、こればっかりはご縁と思っていますので即決しました。

話がトントンと決まって、あとは納車待ちと言うことになりました。
ところが・・・。
実際に相手の方が運ぶ段取りを考えた時に、片道900km、往復にすると1800kmの距離。
いざとなると、やはり躊躇してしまったようです。
それでは、こちらから半分程の距離まで出向いて、中間地点で引渡しはどうかと。
まあ、それでも仕方がないなとお返事をしたのですが・・・。
やはり中間地点でも遠くて無理かなと。
最終的に、この話は無かった事にしましょうかとの事。
私もここまで乗りかかった船に、今さら降りる訳にもいきません。
私は最後までやり遂げられず、途中で断念というのが、一番嫌いな事です。
この日までやると決めたらやらないと気が済みませんし、始めた事は最後までやり遂げないと!
もう、どうにもそのT360を見なくては気が収まりません。
問題は納車できないという事だけですから、運ぶ手段を考えればいいだけです。
相手の方には、こちらで運びますからという事で次に話を進めました。
紛失している書類を再発行していただいて、いつ引き揚げてもいい状態に準備してもらいました。
そして、同時にこちらでは配送手配を。
陸送会社に確認してみると、実動車であれば意外と安く運べそうな感じです。
とりあえずバッテリーをつないでエンジンが始動して、ブレーキも効けば運びますよとの事。
それだけキチンと作動状況を確認して欲しいとの事なので、相手に改めて確認すると・・・。
何年もエンジンは掛けていないし、ブレーキも効かないよ。  エッ!
最初の話とだいぶズレてきたな〜。 記憶が曖昧なのか、こればっかりは今さら責めても仕方がないですし。
改めて陸送会社にその旨を伝えると、それは1台専用に運ばなくてはならないので
かなり高額になりますよ〜。 金額を聞いてガックリ。
でも、私には諦めると言う言葉が幼い頃から無いので、そうなったら自分で行くしかないかなと。
学生時代なら、迷わず電車に乗って、その場で直して、のんびり自走で帰ってくるなんて無謀な事も
したでしょうが、仕事もありますし休みは2日間しか取れませんので積載車にての引き揚げとなります。
話を持ってきてくれた旧車仲間も協力してくれるとの事で、遠い地で待つT360の引き揚げは行われました。
距離と時間を地図上で計算し、積載車もレンタカーで借りて、いよいよ出発!
とにかく距離が距離ですから先を急いで、只々走り続けます。
と言っても私は最初から最後まで助手席ですが(ゴメンナサイ)。
深夜に出発して、現地に着いたのは翌日の昼前でした。
T360と対面して、想像とちょっと違いはありましたが、手ぶらで帰るわけにもいきませんので
しっかり積載車に積んで、トンボ帰りで休む事無く引き揚げです。
そして、帰りも一睡も休む事無く走り続けます。
往復1800kmを走り続け、我が家にT360を降ろし、借りていた積載車を戻して精算する時には
出発してから丸々一日でした。 往復25時間のT360引き揚げの旅でした。
途中、中国自動車道ではスレ違うクルマもなく、もしかしてこの高速道は工事中で途中で道が無くなっているのでは?
なんて通った事の無い道に不安を感じながらの旅でしたが、T360に会う事だけを考えて・・・。
こんなT360とのスタートでした。

続く




遠い地より引き揚げてから何年経ったでしょう。
我が家に来て、仕上げの順番待ちをしていましたが、ついにその時が。
急遽移動しなければいけない事情ができましたので、強引に雪の中で冬眠中のT360を起こし
引きずり出してきました。  T360が一番不安に思ったんじゃないかな・・・。
そして場所を移動して、当初の話と違っていたエンジンの始動と燃料タンクの掃除から始めました。
長年の不動から目覚めさせるのは、やはり容易ではありません。
とりあえずエンジンは掛かったものの、本来の調子が戻りません。
パーツがすぐに調達できるクルマは何も問題はありませんが、この当時のクルマになると全滅に近いです。
パーツが無いからと諦めるわけにもいきませんので、なんとか調達してきます。
本来の調子の戻らない原因は二つ。
キャブとエンジン本体に付く燃料ポンプ。
キャブをバラしたところ、三國ソレックスの大きなラバー製のダイヤフラムがちぎれています・・・。
これではアイドリングしませんね。
これまた偶然にも、私とピッタリのキャブを新品で持っている仲間がいたので譲ってもらう事に。
その後も、やればやるほどトラブルが起きて、しかし一つずつ確実にクリアしていき
なんとかナンバーを新しく取得するところまでいきました。
こうなると、やはりボディが気になります。
プラスチックボンネットもBKタイプのフロントマスクも気に入らなかったので、
これまた旧車仲間からAKタイプの鉄製ボンネット&マスクを譲ってもらい穴だらけのパーツを修復して
全塗装したT360に無事に装着となりました。
ホンダなかよし倶楽部の第二回総会に、どうしても間に合わせたくて
突貫工事で手を加え足り無い部分はありましたが、なんとか公道復帰にこぎつけました。
これで本来の状態に戻ったかな。
このT360を譲ってくれた前オーナーさんに完成のお話すると、とても喜んでくれました。
これも、やはりご縁なのでしょう。
T360にも卒業証書を・・・。

終わり




ガレージでは定位置に納まりました